ｳﾁは正月になると､本家に親族一同が集まるのが習わしである｡



基本的に飯食って酒飲んでﾜｲﾜｲするだけなんだが


酒も入ってきた頃に必ず俺の前に現れる叔父ちゃんがいる｡



戦後生まれの､この叔父ちゃんは俺の前にﾄﾞｶっと座ると


｢ﾜｼの時代は食べるものが少なかった｡今のやつらは恵まれとる！｣


とﾈﾁﾈﾁとその当時の苦労話を始め出すのである｡


これは


『昔は何もなかったんだぞ説教』

と俺は呼んでて


俺が小学生くらいから毎年､聞かされている長くてｳｻﾞい説教なのである｡


何度も聞いた話なんで


｢はぁ､はぁ･･｣と空返事｡


叔父ちゃんが興奮してくるといよいよｸﾗｲﾏｯｸｽ｡


最後にでか声で


『ともかく今の時代に感謝せいっ！』


で説教が終わるのだが再び酔いが回りだすと

この説教が2～3回繰り返されるので

一回目終了と同時に俺はいつも２階の子供部屋に避難するようにしている｡



１階で大人が酒飲んでる間は

２階の子ども部屋には､親戚の子どもたち（いとこ同士）が仲良くたむろして遊んでいるのだ｡



上は中学２から下は小学校３年生で男ばっかの６人｡



｢お前らﾁﾝ毛生えたか～？｣


って叫びながら子ども部屋に入って行くのが俺の毎年恒例の挨拶になっている｡


俺は年功序列制度ってのを嫌う完全能力主義である｡



いとこでも年齢や学年は関係なく

｢ﾁﾝ毛の量｣と

｢ﾊﾞﾚﾝﾀｲﾝﾃﾞｰのﾁｮｺの数｣で

その年のお年玉の額を決める｡



ちなみに､中１の子は､ﾁﾝ毛では小３には圧勝してたが


ﾁｮｺの数は大差で負けてたので､


昨年は中１の子が一番少ないお年玉額とあいなった｡


今年も｢ﾁﾝ毛｣と｢ﾁｮｺ｣の査定で考えてた｡

ﾄﾞｱの前に立ってたら突然子ども部屋の中から


｢あけおめこ｣


って聞き覚えのある声･･



( ´･ω･｀)？


なんだ､そのﾌｧﾝｷｰな正月挨拶はｗ


まぁ､いいやとﾄﾞｱに手をかけ


｢お前らﾁﾝ毛生えた･･･？？｣


俺が勢いよくﾄﾞｱを開け部屋に入ったとたん


いとこ６人が蜘蛛の子ちらすように慌ててﾊﾞﾗけ出した｡




みんな何やら挙動不審で何か怪しい｡


子どもといえど､男がここまで不自然にｷｮどるのは

だいたいｴﾛ関係だと昔から相場は決まっている｡


ふと学習机の上に置かれているﾉｰﾄﾊﾟｿｺﾝに目やると


画面いっぱいに広がる無修正画像が映し出されいた｡



｢お前ら正月早々･･･何を･･･｣


閲覧履歴を見ると


女の｢おっぱい｣と｢おまんこ｣の強烈な無修正画像がどんどんでてきた｡



｢おい！Ｙ太よ（一番下の小３）､お前もこれ見とるんか････？｣


｢･･･うん｣

と恐る恐る応えるＹ太｡


｢そんなん普通やで､みんなﾈｯﾄでｵﾒｺとか見てるもん！なっ！｣

とＹ太を助けようとする優しい実兄､Ｕ志（小６）


全員､うなずく｡


｢ﾄﾞｱを空ける前に『あけおめこ』って聞こえたのはお前か？…Ｕ志？｣


全員顔を見合せてﾓｼﾞﾓｼﾞ…



｢はい｡お前ら全員俺の前に集合！｣


血は争えない…

さすが俺のいとこ達と褒めてやりたいが


小学生がすでに｢おっぱい｣も｢おまんこ｣も知ってるなんて､これは言語道断｡


これは大人として､しっかり説教をしなければなるまい｡



俺が思春期の頃なんてｴﾛ本やｴﾛﾋﾞﾃﾞなんて

そう簡単に手に入れる代物ではなかった｡


じゃあ､何をおかずに欲情してたかというと



ｵｶﾝが注文している








下着通販『ｾｼｰﾙ』のｶﾀﾛｸﾞ｡


婦人用下着ﾓﾃﾞﾙ達にﾊｱﾊｱ欲情していたのだ｡



この下着の下が見たくて


ｽｸﾗｯﾁみたいに10円玉で削ってはｵｶﾝにﾄﾞﾔされた｡


毎月送られてくる下着のｶﾀﾛｸﾞを


それぞれ異なる期待感でｵｶﾝと俺は心待ちにしていたのだ｡


ｴﾛﾋﾞﾃﾞｵだってそう｡


友達の家に

｢父親の“無修正ｴﾛﾋﾞﾃﾞ”がある｣

なんて情報が入ったらもう大変で､



まるで街頭ﾃﾚﾋﾞで力道山の試合を見る群衆のように


昭和初期の光景が蘇るのである｡



｢無修正が入ったそうだ｣

ﾒｰﾙも携帯も無い時代にちゃんと仲間にその情報は行きわたり


｢お前､誰やねん？｣


って思うような


友達の友達の友達って奴までﾃﾚﾋﾞの前で正座していた｡


あの当時の無修正なんて

それはｸｵﾘﾃｨｰの低い品であったが

とりあえず初めて見る女性のおまんこに衝撃を受けたものだった｡


今の時代みたいにﾈｯﾄで｢おっぱい｣や｢ｵﾏﾝｺ｣を

簡単に見れる恵まれた時代ではなかったのだ｡


いとこ達は､反省しているのか､していないのか｢うん､うん｣と空返事｡



｢お前らに一言だけいっとく！｣


｢俺の時代にはｴﾛいもんは､それは少なくて苦労したんや｡

とにかくお前らは････」




｢今の時代に感謝せいっ！！｣


俺は毎年､彼らが大人になるまで



『昔は何もなかったんだぞ説教
　<ｴﾛﾊﾞｰｼﾞｮﾝ>』


を話し続けようと思っている｡