伝説のレスラー
245回目の今回は

「暴風神父」 フライ・トルメンタの登場です。


知る人ぞ知るスーパー・ルチャドール。


その名が示す通り、本職は歴としたカトリックの司祭(神父)である。

20数年前のプロレス雑誌に「物凄く弱いけど、物凄く人気のある覆面レスラーがメキシコにいる。」と云った内容の記事が載っていました。

その人気の秘密は

1.正真正銘の聖職者であること。
2.負け続けながらも毎回リングに立っていること。
3.僅かなファイトマネーで潰れかけの孤児院を切り盛りしていること。

そう 彼はリアル伊達直人なのである！

いや アニメ「タイガーマスク」の伊達直人よりもスゴイのであったのである！


デビューは1978年。
年齢は33歳になる年の32歳。

きっかけは、30代になった頃 教会には昔の自分と同じ境遇の子供達で溢れかえっていて、それに困っていた時にＴＶでルチャ・リブレを観たことからルチャの世界に入ろうと思ったのだという。

しかし年齢を見ても判ると思いますが、空中戦を多用するルチャリブレの世界では完全に「噛ませ犬」的な存在であったのは言うまでもない。

それでも彼は孤児達の毎日の食事と老朽化した孤児院を守るために日夜リングに上がり続けていたのである。

最初は面倒をみている孤児達には内緒で闘っていたが、日に日に増え続ける怪我や生傷で、結局 正体がバレてしまい トルメンタの応援に大勢の孤児達が会場に押し掛けるようになると、彼が本物の司祭であることが周知されるようになっていったのである。

メキシコはカトリックの国である。

司祭に対する尊敬は実に篤い。

そんな神父様が孤児達を護り育て、新しい孤児院を建てるために日夜リングに上がって闘っていると聞いたら。
そりゃ～もう人気に火が点かない訳がない！

あっという間に人気急上昇！

売れっ子善玉レスラーも、対トルメンタ戦の時には 「神父様をイジメるなぁ～！」 、「地獄に堕ちろぉ～！」 、「悪魔ぁぁぁ！」と大ブーイングを浴びたという。

それほどトルメンタの人気は凄かったんです。

ファイトマネーも最初は200ペソ(約30円)だったのが、人気の上昇と共にＵＰ！ＵＰ！ＵＰ！

コツコツ貯めたファイトマネーで遂に念願の新しい孤児院を建てたのである。

この実話は「グランマスクの男」というタイトルで映画化されています。
主演はジャン・レノ。
彼のスータンとローマンカラー姿は実に知的で格好よく、実話にも忠実で映画自体は地味だけど良い作品に仕上がっていました。

がっしかぁ～し！

本物のトルメンタはジャン・レノとは似ても似つかない小太りのチンチクリンのとっつぁんなのである！！

体型で言うと「ナチョリブレ 覆面の神様」の主演 ジャック・ブラックにソックリなのである。
ナチョリブレもトルメンタを題材とした映画なのだが、こちらはコメディタッチに創られている。

是非 この２作品を観てみてください。

ナチョリブレの方が、トルメンタが神父になる以前の荒れていた時代のことにも触れているので、お薦めかと。


現在 トルメンタは引退し、司祭として孤児院の院長として子供達の養育に専念しています。

この孤児院を卒院した孤児の何人かはルチャリブレの世界で活躍中である。

その中の１人 マリオという青年はトルメンタの魂と意志を継ぐ者として「フライ・トルメンタ・Jr.」のリングネームでリングに上がっている。

但し本職は神父じゃなく、弁護士だそうです。



1945年5月29日
メキシコ出身

本名 セルヒオ・グティエレス・ベニテス

Ｔ 170cm Ｗ 100kg


2011年7月3日引退。