天国まで響け
以前、『頑張る理由』というタイトルで日記に書いた、父親同然のHさん。
今から一年半前、天国に旅立ちました。
16歳の時からずっと一緒だったHさん。
毎年、お互いの誕生日にはプレゼントを交換し合っていました。
最初の頃はお互い煙草を交換し合っていたのですが、何年か前、Hさんが心筋梗塞になった時、
「おれも煙草をやめるからHさんもやめてくれ」と初めてHさんに嘘をつきました。
それからはHさんの前では吸わないようにしていたのですが、もちろんそんな嘘、バレないわけがなく、誰か他の人に聞いたり、匂いでわかっていたのにもかかわらず、最後まで信じてるフリをしてくれたHさん。
次の年からは煙草ではなく作業着屋の商品券をプレゼントしてくれました。
亡くなる前、最後のおれの誕生日には22年間で初めて手紙をくれました。
その時にはもう、自分の最期がわかっていたのかもしれませんね。
「おれにはもうお返しはいいからな」
そう言って照れくさそうにプレゼントを渡してくれたHさん。
その2ヶ月後、Hさんの誕生日にプレゼントを渡しに行くと、
「なんだよーいいって言ったのにー」
と言っていたHさん。
でも実は、おれが行く前、「たぶん今日はまーが来るからな」と家の人に言っていた事を後日息子さんから聞きました。
最初に癌の宣告を受けた時、病院を出て真っ先におれにメールをくれました。
そんな大事な事をメールで伝えてくるあたりがHさんらしかったです。
どうしていいかわからず、すぐに電話をかけ、何も言えずにいたおれに、
「ま、大丈夫だろ」
と、ショックを隠し、おれを安心させようとしてくれたHさん。
病気が発覚した後、おれは自分の進退についてずっと考えていました。
20年近くやってきた会社をたたみ、Hさんの会社に入れば、Hさんを安心させてあげる事ができ、治療に専念してもらえるのではないか?
でもそれを言ったところで「そんな事する必要ない」と言われるのがわかっていたので、今まで通り何も変えずにいこうという選択を選びました。
Hさんが亡くなった時、受け入れる事ができませんでした。
70歳近くなり、奥さんにも先立たれ、いつ引退してもいいはずなのに、癌に侵されている事がわかってからも現場に立ち続けたHさん。
家ではいつも「まーが頑張ってるからおれもまだやめるわけにはいかないな」と言っていたそうです。
もしかしたらおれの存在が病気の進行を早めてしまったのではないか?
おれがいなければ、とっくに引退して手遅れにならずに済んだのではないか?
そう考え、自分を責めた事もありました。
そんな時、「そこまで想って貰えて、Hさんは幸せだね」と言ってくれた言葉に救われました。
正直今でも受け入れられていないかもしれません。
恥ずかしながら、仕事中や運転中、寝る前等に、考えては涙してしまう時があります。
でも毎月、月命日にお墓に会いに行っているという事は、どこかに受け入れている自分もいるのかもしれません。
最初は、受け入れなきゃとか、気持ちを整理しようとか思っていたのですが、ある時から、別に無理して整理することもないのではないかと思うようになりました。
できれば自分の周りの人を1人でも亡くしたくありません。
でもそれは仕方のない事で、
でもだからと言って無理して生と死について悟ろうだとか達観しようだとかする必要もなく、
それもこれも全て含めて人と人との繋がりなんじゃないか?
そう思うようになりました。
今日はちょうどHさんの誕生日。
お墓に行きお線香をあげ、ケーキを買い、Hさんの家に置いてきました。
本当ならば昨日から仙台に出張に行ってたはずだったのですが、たまたま明日からに変更になったのも、きっとHさんが今年もおれが来るのを待っていてくれたからかもしれません。
Hさん、あなたからは返しきれないくらい沢山のものを貰いました。
だからおれももうお返しはいりません。
そのかわりいつかまた一緒に仕事しましょうね。
それまではそっちでゆっくり休んでください。
って言ってもあなたの事だから、おれに負けじとそっちでも頑張ってる事でしょうね。
『祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり』
世の中は日々変わりゆくものであり、永久に変わらないものなどない。
人は命を宿った時、同時にその命に終わりが来ることも決まってしまう。
でもそのリミットがあるからこそ何かに感動したり、目標を持ち頑張る事ができる。
そして何よりおれがHさんと過ごした日々や思い出、受け継がれた想いはいつまでも決して変わることはない。
諸行無常が悲しいかな自然の摂理であるならば、自分にできる事はただ一つ。
昨日より今日、今日より明日、
天国のHさんに届くよう、少しでも大きくて綺麗な鐘の音を響かせられる人間になりたいと思う。
コメント
2019/10/13 16:08
6. >>5 †yuri†さん
コメントありがとうございます♪
人の死に関する内容の日記だったので、公開するかどうか悩んだのですが、皆さんにそう言って頂けて、書いてよかったと思います。
ありがとうございました(^^)
返コメ
2019/10/11 10:23
5. 初めまして、素敵なお話ですね。
想像しながら、読んでしまいました…
返コメ
2019/10/10 0:39
4. >>2 まなかさん
こんばんは♪
コメントありがとうございます。
おれももし肉体が滅びても、誰かの心の中で生き続け、光を灯せるような人間になりたいと思います。
いつかまた会えた時、胸を張れるように(*^^*)
返コメ
2019/10/10 0:35
3. >>1 奈々さん
こんばんは♪
こちらこそコメントありがとうございます。
出会いと別れはどうしても切り離せないものですよね。
辛い別れをするくらいなら最初から出会わなければ…なんていう考えもあるけど、それ以上に出会いには素晴らしいものがあると思います。
こうしてコメントを貰えただけで暖かい気持ちになれる。
人と人との繋がり、大切にしていきたいですよね(*^^*)
返コメ
2019/10/10 0:00
2. 初コメです。 素敵な日記を読ませて頂きました。私も夫を21年前に、父を昨年見送りました。その時に、人は二度死ぬんだよと聞きました。一度目はこの世の肉体が滅びるとき。二度目はその人のことを知っている人がこの世から全ていなくなるときだそうです。ですからその方は貴方の心のなかで生き続けています。私の夫や父と同じ様にいつかまた、会えることを祈って…。
返コメ
2019/10/09 14:29
1. はじめまして!
素敵な日記を読ませて頂きました。
有り難うございますm(__)m
別れは辛いものですね
私は主人を亡くしてから自分なりに頑張って来れました。
それも人との繋がりの大切さを今は有り難く思ってます
自分らしく素敵な人生を歩んで下さい!
本当にいい日記でした
有り難う!
返コメ