なぜ
生きてゆくのは切ないのだろう。
努力ではどうにもならない壁というのは、やはり存在している。
その壁は俺の四方を取り囲み、囁く。
「お前が主人公の人生なんてある訳がねぇんだよ」
「せいぜいオナニーでもしてるこったな、不細工豚野郎」
そんなことは自分が一番良く知っている。
この社会では心や思いには価値がつかないこと。
金と容姿が絶対的な価値を持つこと。
その、どちらも手に入らない俺は食うものもなく衰弱した野良犬のように、ありもしない暖かなる空想に固執するしかない。
カゴの外にいる鳥は、カゴの中にいる鳥に憧れる。
それでも住む世界が違うことを知って、失意のままに飛び立つ。
そんな数多の空白が、俺の現実となって目の前にある。
それがありふれた現実。