じぃちゃんのための1日
30代半ば  東京都
2012/02/01 5:10
じぃちゃんのための1日
かれこれ14年前──

私を育ててくれた じぃちゃんが亡くなりました。


私はその時

東京で仕事をしていて

気を遣ってくれた母達は

私には一切 じぃちゃんの病気の事を言ってきませんでした。



私の仕事は

盆暮れ正月関係無くて

社中泊もザラ。


今思えば


「今年の正月はお前も忙しいだろうから帰ってこなくていい。」


と、

母に言われたのは

その時すでに

じぃちゃんの具合が悪くなっていたからなんだよね。


なのに私は

母の言葉の通り真に受けて

「悪いね。みんなによろしく伝えといて。」

…なんて

何も知らずに

新番組の企画やらオーディションやらでバタバタして

初雪を眺めながら東京の正月を社内で過ごしていたんだっけ…







いつも私の心配をしてくれた じぃちゃん。

いつも私を可愛がってくれた じぃちゃん。



1月の半ばに

珍しく夢の中に現れてくれたのは

後で知らされた『じぃちゃんが入院した日』──



だけど じぃちゃん

私には絶対弱ってるとこ見せたくないからって

夢の中で あんなにニコニコしていたら

さすがに私だって「何かあったのかな?」って気がつくよ。



だから 毎日家に電話したけど

母は

「大丈夫だよ」

「あんたの気のせいだよ」

「じぃちゃんなら今日も日向で本読んでるよ」




…って


……遠くにいる私に心配かけないように

母も姉も

みんなで嘘ついてくれてたんだよね。




でも

私、バカだから

そんな皆の気持ちわからないで

「嘘つかないで!」って

皆を責めた。



なんで じぃちゃんの具合が悪いって確信持ててたのかはわからないけど


なんとなく


夢の中のじぃちゃんの笑顔が

少し…寂しそうに見えたんだ。



そして

「帰ってくるな」

「お前は自分の仕事頑張れ」

って言われた言葉を無視して

私は旭川空港行きのチケットを予約して

勝手に帰ろうと準備をしていた。





──私が勝手に帰ろうと予定していた日の


1日前…





じぃちゃんは

病院のベッドで苦しんで苦しんで…



私の名前を呼んで


事切れたらしい。





じぃちゃんが亡くなる前

中治りかも知れないけど

数ヵ月振りに水と重湯を口にして 飲み込めたらしい。


小さな声で

でも少し笑って

「もう俺に本当の事を言っていいぞ」って


ずっと内緒にしていた癌の事を

母に言い当てて

全て聞いて

静かに笑っていたらしい。



そして


末期の癌の激痛に

初めてモルヒネが投与され

すぐに容態が急変して亡くなったんだ……と。



今はもういない母が、そう言っていた。




モルヒネの投与の際

検査も何もなく看護師がたくさん投与した事。


モルヒネ投与直後に急変して呼吸が止まった事。


更に


じぃちゃんの呼吸が止まってから医師達が到着するのに5分以上かかった事。。。


後で聞いたら

医療ミスで じぃちゃんは亡くなったらしいけど


ミスだろうが何だろうが


理由なんかどうでもいい。




私は

私の大好きな人の死に目にも会えず

私を大切に思ってくれた人が生きている内に

孝行も何も出来なかったんだと

重い後悔だけが心に残った。





そんな私に

じぃちゃんと仲の良かった住職がこう言った。




「命日はね、あの世での新しい『誕生日』なんだよ。
お祖父ちゃんは今日亡くなったけど
それは同時に
浄土にお祖父ちゃんが生まれた日でもあるんだ。

『死別』は確かに辛いけれど、お祖父ちゃんは現世での辛い旅が終わって
やっとあの世で安らげるんだよ。

だから今日は『哀しい1日』ではない。
本当の意味で『お祖父ちゃんのための1日』なんだよ。」


…と。





それから毎年


じぃちゃん孝行の出来なかった私は

毎年 じぃちゃんのための1日を

じぃちゃんのためだけに過ごす。



じぃちゃんの好きだった料理を作り

じぃちゃんの好きだった焼酎をかたむけて

じぃちゃんの好きだった歴史の本を読みながら

じぃちゃんの好きだった時代劇をながして

じぃちゃんの写真を見ながら

じぃちゃんの第2の誕生日を祝いつつ

心の中でそっと

じぃちゃんに1年分の報告をする。



そして

たくさん たくさん

じぃちゃんに感謝して

じぃちゃんの思い出を辿りながら

私はまた 様々なことを じぃちゃんに教えられる。




今日でその『じぃちゃんのための日』が14回目になる。





あのね、じぃちゃん…



この1年、色んなことがあったよ。



そんな話をぽつぽつしながら



さぁ、



じぃちゃんのための1日に乾杯をしましょうか。

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コメント

2012/02/13 13:05

63. >ルンルン[ハートたち(複数ハート)]ベジータさん

コメントありがとうございます[わーい(嬉しい顔)]

か…感動って[冷や汗]

60代前半  北海道(道央)

2012/02/13 3:16

62. 
感動しました

2012/02/03 3:15

61. >ドリンクさん

コメントありがとうございます。

とりあえず…

(´・ω・)つ□ <涙をお拭き

たぶん私が じぃちゃんを忘れたり嫌いになることはないです[わーい(嬉しい顔)]

ドリンクさんも、お祖父様お祖母様の事を忘れないであげてくださいね[ほっとした顔]

ご冥福をお祈り申し上げます。

30代後半  北海道(道東)

2012/02/03 2:38

60. はじめまして
泣いちゃいました[あせあせ(飛び散る汗)]
自分もじいちゃん、ばぁちゃんの死に目には一度も間に合わず後悔したことがありますが、みんな幸せそうな顔をしていたので逆に嬉しい気持ちもありました。
おじいさんのことをこれからも大事に思っていてあげてください

2012/02/03 1:45

59. [半月]ムーンライト[夜]禁煙失敗[げっそり][禁煙]さん

またまたコメントありがとうございます[わーい(嬉しい顔)]

正義って時代と共に変わるから何とも言えませんが…
『自分の中の正義』を貫いたじぃちゃんは大好きです[ほっとした顔]
尊敬なんて恥ずかしいけど…ありがとうございます[うれしい顔][ハートたち(複数ハート)]

50代前半  福岡県

2012/02/02 22:13

58. >ぷょんさん

返コメありがとう[ほっとした顔]

上官の命令に逆らって捕虜を殺さなかったおじいちゃんは人間として優しく強い人だったと思います。

そんなおじいちゃんを尊敬します。

命日のおじいちゃんの日大切にしてください[ほっとした顔]

2012/02/02 21:36

57. >目玉おやじさん

コメントありがとうございます。

まずは、叔母様のご冥福をお祈り申し上げます。

住職の話ですが、仏教の説法の中の一つなんだそうで、色々と教えて貰いました。

ようは、遺族に都合のよい解釈をして哀しみを少しでも減らそうと言うもの…だと、身も蓋もない事を言われましたが[冷や汗]

それでも、そう信じて、故人を偲ぶのは素敵なことだと思って、じぃちゃんのための1日を続けています。
例えこれが生者の気休めでも、故人に恥じないように、後悔のないように生きていきたいです

50代半ば  静岡県

2012/02/02 18:34

56. こんばんは、初めまして〓

ある日記友さんに紹介されてお邪魔します。

私の母方の叔母が先日急逝しました。
先月、10日過ぎに入院しているとの連絡があり、28日に他界しました。

去年の12月に体調不良で検査したら癌が見つかったそうで手遅れだったそうです。

貴女の日記の中で命日は向こうの世界での誕生日であると、その部分を読んで目から鱗の気分でした。
私の数少ない理解者の一人でしたが、悲しんでばかりじゃいけないと思いました。でも、故人のことは偲んでいこうと思います。

2012/02/02 15:34

55. >ア~ヤンさん

うん…そうだったら嬉しいな[わーい(嬉しい顔)]

コメントありがとうございます。

2012/02/02 15:33

54. [半月]ムーンライト[夜]禁煙失敗[げっそり][禁煙]さん

コメントありがとうございます。

じぃちゃんは…戦争で捕虜を殺せなくて上官に半殺しにされた腰抜けです[冷や汗]

時代が時代なら『恥』ですが、私はそんなじぃちゃんが大好きです[ほっとした顔]

じぃちゃんに似れてたら嬉しいな[うれしい顔]

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