友人が会社を辞めて独立することになった。







言っとくが、彼はまともな仕事である。









まともじゃない仕事をしてる知人は、４年に一度くらいにふらっと新規ビジネスをひっさげて現れる。






これまで


「サザエと同じ味がするアフリカ産のタニシの養殖」

↓

サザエどころかウンコの香りのする正体不明の巨大貝だったので事業失敗。





「絶対に飲酒検問でひっかからない不思議な水の販売」

↓

飲酒運転で捕まって事業失敗（俺が罰金貸してる）






もうそろそろ現れる頃かなぁと思ってるのだが姿を見せない。





電話もつながらない。





最後に聞いた新しいビジネスが「生ゴミを石油に変える事業」だったので

それが本当だったらもしかしたら今頃、自分が石油に変わっているのかもしれない。



ゴミ男の話は置いといて






今回独立したのはまともな友達の話だ。




先週、祝儀を持って友人の事務所に行ってきた。







彼はまだ事業を始めたばかりなのであまりお金はかけることもできず

築４０年くらいか？古びた雑居ビルの一室を借りることにしたのである。








彼の事務所は２Ｆで、同じ階に探偵事務所とサラ金という怪しいラインナップ




隣の部屋は「マンツーマンレッスン」と書いてある英会話教室であった。







俺と友人は昼飯を食いに雑居ビルの階段を下りてると



前から「トムハンクス」のような白人男性が上がってきた。





（英会話教室の先生かな？）





トムハンクス：「コンニチワ（満面のスマイル）」



俺＆友人：「こんにちわ」







トムハンクスは鍵を指にはめてクルクル回し口笛を吹きながら英会話教室に入って行った。







俺：「英会話教室の先生？」





友人：「せやなｗ」





友人は妙にニヤニヤしていた。



俺：「？」








その友人の意味深な苦笑いは後ほどわかることになる。






ちょうど昼飯を食べて事務所に戻る時、英会話教室に入って行く女性がいた。







横顔だったが３０代後半くらいの女性。





平日の昼間にマンツーマンの英会話を習いに来てるくらいだろうから専業主婦だろうか。





友人の事務所に入る。




友人がニヤニヤしてる。




俺：「どうしたん？」



友人：「まぁそのうちわかるて」





３０分後―。







古い雑居ビルで壁も薄いから隣の音はけっこう聞こえてしまう。






となりの英会話教室からえぐいくらいの大音量で「喘ぎ声」が聞こえ出した。





友人が親指で英会話教室をさすと「どや！」って顔で笑い出した。





隣でバッタンバッタンとセックスが始まったのである。





女性のものすごい喘ぎ声とトムハンクスの叫び声



特にトムハンクスは「かまーん！かまーん！」と絶叫している。





この喘ぎ声は恐らくサラ金にも探偵事務所にも聞こえているはずである。





友人は「懐かしいやろ？」と俺に語りかけてきた。





友人とは小学校からの仲なのだが、彼は洋物の裏ビデオを持っていてよく彼の部屋で鑑賞した。







特に男優の白人男性の声が激しく、プレイ中に「シっー！シっー！」と息を吸い込む男を出していて
俺たちは大笑いしながらよくその男優の息の音を真似していたものだ。





トムハンクスのあえぎ声に耳を澄ましていると




「カマーン！シっー！カマーン！！シっー！！」







友人：「なぁ、シっー言うてるやろ？（笑）」


俺：「シっー言うてるなぁ・・・・」





俺はトムハンクスの喘ぎ声にノスタルジックな気分になり涙が溢れそうになった。





小学校６年生の頃、俺と友人は母子家庭で育った。





いや友人に関しては厳密に母子家庭というのかどうかもわからない。





俺は母親しかいなかったが、彼は血の繋がっていない男と母親と一緒に住んでいた。



いつも目の周りや口に青いあざがあった。





友人は何も言わないが一緒に住んでいる男に虐待をされていたのである。




よく友人と一緒に見た洋モノの裏ポルノは、その男の所有物だった。






一度だけ鑑賞している最中に間が悪くその男が帰ってきた。





ベロベロに酔っ払ったその男は友人に徹底的に制裁を加えた。




鼻血まみれになっている友人、俺と数人の仲間は恐怖で足がすくんでいる。





最後はハサミを持ってきて男は友人の髪を鷲掴みにするとザクザク切りだした。




俺たちは殴られなかったが「鑑賞代」として千円づつ取られた。





男は俺たちからカツアゲしたお金で再び飲みに出かけた。





友人はハサミで切られた散切り頭で鼻血まみれで、震えながら声にならない声でむせび泣いていた。








「カマーン！シっー！カマーン！！シっー！！」





あの小さかった少年はもういない。



今は社長さんである。




俺もこいつももう大人だ。




なんだかんだ色々しんどくて辛かった少年時代。


大人になったらあーしよう、こうしようと根拠の無い明るい未来に毎日ワクワクしてすごした青春時代の大切な仲間の１人である。








「カマーン！シっー！カマーン！！シっー！！」



トムハンクスありがとう。

大事な事を想い出させてくれて。





やがて二人の喘ぎ声と激しい動きは止まった。



英語どころか日本語で楽しそうにトークをしているハンクス＆女性。





友人曰く、一日で多い時に５人くらい女性が現れてはトムハンクスと馬鍬っているそうだ。





俺：「英会話教室ちゃうんかい？」






友人：「でも英会話教室らしい会話は聞いたことないけどな」





そういえば窓にマンツーマンレッスンとは書いてたけど英会話とは書いてなかったような…





俺：「なんのレッスンしとんねや？」




友人：「そらマンツーマンやから“マン”のレッスンちゃうか？」




俺：「なるほど」




もうオヤジギャグもさらりと言えるほどの年齢になりました。





俺：「起業うまく行ったらいいな！」




友人：「まぁ、失敗したら失敗したでマンツーマンレッスン始めるわｗ」







友人はトムハンクスにも負けないくらいのチンチンしてるので


もし彼がマンツーマンレッスンをオープンした際はみんな行ってあげてください。