タモルの親孝行[ぴかぴか(新しい)][わーい(嬉しい顔)][ハートたち(複数ハート)]
40代前半  大阪府
2017/10/09 4:07
タモルの親孝行[ぴかぴか(新しい)][わーい(嬉しい顔)][ハートたち(複数ハート)]




10年ぶりくらいに地元の後輩タモルと飲んだ。




久々に会うタモルを見て俺は驚いてしまった。







「ずいぶん見違えたなお前・・・」






「そら、もう35歳やもん」と照れくさそうに頭を撫でた。






タモルは10年前までは、



金髪のモヒカンであった。





眉毛も剃り落とし眉毛や唇にピアスを付け、「キング○ム」というパンクバンドのベーシストをしていた。






組んでいたというか、メンバーはタモル一人。




もっというとベースを持っているのを見たこともない。







でも「タモル」が言うことは深くは追求しないというのが、仲間内のタモルと関わるひとつのルールであった。







中学からシンナーをが始め、そこから25歳くらいまでよくわからない違法ドラッグをたしなみすぎて、すでに頭がおかしくなっていて、まともな会話ができないからだ。








モヒカンにしてきた夜も当時俺が一人暮らしをしてたアパートに飛び込んできた。




合成レザーの安物ライダースの袖を自分でハサミで切ってノースリーブにしていた。






「どう?りょうま君しぶいやろ」







完全にケンシロウに一番最初に殺されるキャラである。






その夜から俺のアパートに一カ月くらい勝手に居候を始めた。(当時は他にも勝手に住んでる奴(飲み仲間のジジイ1名と友達の友達の外国人1名)はいたが・・・)





ある日、出張先から帰るとタモルがいないから同居人のジジイに聞いたら「知らない。朝からいなかった」と言うのでてっきり出て行ったと思ったら、すぐに警察から電話。





「タモルを預かってる。迎えに来い」








当時の合法ドラッグでラリりすぎて深夜の深江橋で内環のセンターラインの上をフラフラになりながら歩いているところを捕まったらしい。





ブチ切れてやった。


「なんでや?」







タモルは子犬のようなおびえた目で


「ちゃうねん、あの時、道路の白線から出たらワニに食べられるねん・・・」






「薬するんやったら俺んとこから出て行け」






本当にタモルは出て行った・・・


・・・と思ったら数時間後にヨシから電話があった。








「タモル家に来てるねんけど、どうしよ?」






「そっちで保護したってや」





「無理無理、オカンがさっきから怯えてるって」




ヨシは実家住みであった。





そらいきなり北斗の拳から飛び出してきたザコキャラが「水をください~」って家の中入ってきたら怯えるわ。






そんなこんなもあり俺の前からタモルは姿を消した。







その期間、傷害だか薬だかで服役してたという噂は聞いたが、タモルのことはあんまり考えないようにしていた。







姿を消して数年後、いきなりタモルが俺のアパートにいきなり転がり込んできた。







「りょうま君、話を聞いて欲しいねん」





「どうした?」





「俺、親孝行したいねん」




「したらええがな」













「なぁオリンピックで金メダルを取るのと、紅白歌合戦に出るのどっちが親孝行やと思う?」




そらそれできたらどっちも親孝行やけど

なんでその2択なんだ・・・?






またラリってるのかな?って思ってたら




「親孝行したいねん・・・」



タモルの目からポロポロ大粒の涙があふれているのである。









「どうしたタモル?」


タモルは俺と同じ母子家庭で育った。





タモルのおばちゃん(母)は俺もよく知っている人である。



おばちゃんはお好み焼き屋をしていて女手一つでタモルを育てた。



タモルの言動や行動がおかしくなって、おばちゃんから相談されたことも度々あった。




タモルのこと、生活のこと、今思えば苦しかったんだろうか。いつも眉間に皺を寄せ困った顔をしている人であった。








そのおばちゃんが仕事中に倒れた。


脳梗塞である。







幸い一命を取り留めたが、もう少し手術が遅かったら命もやばかったという。




「親孝行したいねん」






初めて親の死をリアルに直面し、パニックになっているタモルの頭の中は母への恩返しでいっぱいになっていたのであった。




「なぁ、りょうま君、どうしたら親孝行できるやろか?何をしたらオカンは喜ぶんやろか?」





「・・・俺もわからんよ」




俺自身、親不孝者なのに親孝行なんてアドバイスできるはずもない。






あれから10年。









10年ぶりに会うタモルは横分けでスーツを着込んでいてすっかりまともな人間になっていた。





今は結婚し、愛知県で不動産の仕事をしている。





嬉しそうに俺にスマホの写メを見せる。






「そうか、ついにタモルに子どもか・・・」




「可愛いやろ?もうたまらんで」





生後半年。

天然のモヒカン頭のタモルそっくりな男の子が写メに写っていた。





抱いているのは、おばちゃんである。








動かなくなった右腕を庇うように左手で抱きかかえている。





困り顔だったおばちゃんは、それはそれは満面の笑顔である。





老けてはいたが、こんなしわくちゃに笑う人やったんやな。









タモルの成長した姿、タモルの子ども、おばちゃんの幸せそうな笑顔、写メを見たらなんかタモルとの色んな過去を想い出してしまって不覚にも泣きそうになってしまった。








「なぁ、りょうま君、俺親孝行できたかな?」








「・・・・・・・





うーん

まだまだ足らんな。」





「やっぱり?」








「お前がしてきたおばちゃんへの悪行を考えたら、あと35人は孫の顔を見せな計算合わんぞ」





「ちょwさすがの俺も35人は無理やわ!!」とタモルは笑いながら腰を振った。






するとタモルは何か考え思いついたような顔になると





「りょうま君、ところで・・・











東京オリンピックっていつやったかな?」










どうやらこいつ、





孫35人は無理だけど







金メダルはとれると思ってる模様(-_-;)






外見は変わってもタモルはタモルであった。


例によって深くは追求しなかった。







っというわけど明日は久々に休みなので、オカンを連れて焼き肉食いに行ってきます!



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