備えあれば憂いなし
『備えあれば憂いなし』
小泉純一郎が総理の時に有事法制を成立させるために何度も繰り返し発言していた言葉なので、知ってる人も多い言葉だと思う。
この言葉の意味は準備が整っていれば、どんな事が起きても案ずることはない、日ごろからの準備が大事である―。
という意味である。
俺もどちらかというと有事に出くわした時に憂いたくはないのでわりと備える方だと思っている。
いつ災害が起こってもいいように玄関横の部屋は、防災セットなんかもわんさか置いてあるし水や保存食なんかも備えている。
昔から仲間と旅行に行く時も「あれもいるんちゃうか?これもいるんちゃうか?」とついつい不安になり着替えやアイテムをたくさん持っていってしまう。
おかげで友人は小さなリュックでピクニックのような姿なのに、俺だけ自衛隊の歩行訓練のような感じになっている。
結局、着替えも道具もほとんど使うことなく、何なら必要なものだけならスーパー玉出のビニール袋にすべて入ったんちゃうか?という具合である。
ただ備えることは決して悪いことではないし、いざ事が起これば「備えてて良かった」となるはずなのである。
飲み友達のオオサキは今年で32歳の男である。
肌つやこそはまだ32歳なのだが、全体的な風貌は佐野史郎そっくりな『童貞』である。
本人も童貞というのをすごくナーバスに思っているのだが風俗での童貞損失は抵抗があるそうで
「絶対にチャンスは来るから」と童貞からの脱却を狙っていた。
オオサキが飲み屋に来る時はいつも黒いビジネスバックを持っていた。
彼にはビジネスと名がつくものはすべて必要なものではない。
なぜなら無職だから。
ごく稀に夜にお母ちゃんが経営しているお店を手伝ってるだけの男であり、そもそもビジネスバックは必要ないのだ。
ただ、そうなってくると
オオサキはビジネスバックの中かに何を入れて持ち歩いるのかが非常に気になってしまったのである。
「抜き打ちカバンの中身チェック!」
嫌がるオオサキを他の仲間に抑えてもらい
オオサキのビジネスバックの中を開けて俺は覗き見た。
そしてビジネスバックの中を見て俺は絶句してしまった。
カバンの中に入っていたのは・・・
・・・・・・
「バイブと
替えの電池3個。」
それだけ。
目を疑ったが
それだけだったのである。
オオサキがバツ悪そうに一言
「備えあれば憂いなし」っすから。
彼はそうなのかもしれないけど、俺は彼の先々を憂いている。