彼女がﾄﾞ天然ﾎﾞｹだと困る話

一昔前に､付き合っていた彼女は大変面白い子であった｡

いろんなとこで自称｢天然ﾎﾞｹ｣という子に会ってきたが

元彼女ほどの｢ﾄﾞ天然｣は見たことがない｡

いや｢天然ﾄﾞｱﾎ｣であった｡

ﾃﾞｰﾄの時､極度の近眼のｸｾにｺﾝﾀｸﾄをつけるのを忘れて

俺そっくりなｵｯｻﾝの横を

ﾙﾝﾙﾝしながら御堂筋を歩いていたり｡

普通にﾈｷﾞﾗｰﾒﾝの｢ﾈｷﾞ抜き｣って注文するし｡

犬を買ったって言うから､見に行ったらｳｻｷﾞだったり｡

ｶｰﾈﾙｻﾝﾀﾞｰｽを見たら必ず頭をﾅﾃﾞﾅﾃﾞしないと気が済まなかったり｡

ﾎﾟｹｯﾄの中になぜかﾄﾞﾝｸﾞﾘがいっぱいだったり｡

飲んでて急にいなくなったからどうしたのかと思ったら､家に帰って寝てたり｡

思い出してもｷﾘが無いくらいのｱﾎっぷりで

本当に困ったことも多かったけど

それが面白くて､面白くて､いつも腹抱えて笑っていた｡

これまでは､だいたい｢笑わす役｣の俺だったけど

この子には笑わされっぱなしだった｡

彼女がﾎﾞｹる度にﾂｯｺﾑのが本当に心地よかったのだ｡

ご飯を食べてる最中なのに

｢お腹すいたｰ！｣って言いながら食べるのにも､いちいちﾂｯｺﾝで｡

おもいっきりｶﾞｰｶﾞｰ寝てるのに

大あくびをしながら｢眠たい～｣って寝言言うのにも､いちいち起こしてﾂｯｺﾝで｡

笑いながらﾂｯｺﾝむのが楽しかった｡

ただ､ｴｯﾁの時は

｢我慢できない､もう早く入れて～

｣

って言葉を

腰振りながら聞いた時は､

すでにﾂｯｺﾝ出るのに

どうﾂｯｺﾝでやろうか考えている間に

｢

（ﾄﾞﾋﾟｭ）｣してしまうこともしばしば｡

本当に彼女といるときが楽しかったんだが

そんな俺も遂にﾌﾗれてしまった｡

｢他に好きな人ができました｡その人のとこに行きます｡ｺﾞﾒﾝなさい｣

ﾌﾘ方は､案外まともなのなって感心したけど

俺を振った翌日に彼女は

南ｱﾌﾘｶに旅立った｡

いったい誰を好きになったのか

未だに謎なのである｡