俺が小学校６年生の頃


地域の小学生を全て束ね､男気に溢れ誰もが憧れる


『番長』がいた｡


小学生当時､我らが番長とは







ﾀﾓﾂくん（27歳）無職である｡



俺が､入学する前から番長だったらしいので

何年番長を再選されてるかわからないがとにかく俺らの代も『番長』であった｡


番長は

｢一番強い奴は誰だ？｣

って俺ら小学生を威圧し､ﾎﾞｺﾎﾞｺにｼﾒて力で小学生を統制するﾀｲﾌﾟの番長だった｡


ただ俺達の番長になれば､面倒見の良い優しい男になる｡


番長は学校の近くの一軒家に両親と一緒に住んでいて


毎日､放課後は､２Ｆの番長の部屋が俺達の溜まり場になった｡


たまに､お小遣いやﾋﾞｯｸﾘﾏﾝﾁｮｺのｼｰﾙを取られてﾑｶつく時もあったが


話もおもしろく､ｶﾞﾝﾀﾞﾑのﾌﾟﾗﾓを作るのが上手かった｡


小学生同志のﾄﾗﾌﾞﾙなんかも番長が解決してくれたこともあった｡


銭湯で隣町の小学生と喧嘩で揉めた時も番長がずいぶん活躍してくれた｡


番長お得意の


｢お前らの中で一番強い奴は誰だ？｣

って喧嘩相手の小学生に睨みをきかせ言い放ったが


出てきたのが｢わんぱく相撲｣地区大会の横綱（小５）｡



番長と小５の横綱との喧嘩は


そこそこいい勝負が続き


辛くも最後は番長がなんとか勝利を収め遂に隣町の小学校も傘下に収めた｡


このように喧嘩も強くて人望のある優しい番長だったが


どうしても番長に治して欲しいところがあった｡


それは


番長が外出の時にお母さんに帽子を被せてもらうこと｡


ﾖｼにﾌｪﾗﾁｵについて､熱心に質問すること｡


前から同じ世代の人が近づいて来たら逃げること｡


ﾊﾞﾚﾝﾀｲﾝﾃﾞｰの日には極端に無口になること｡


これさえ､なければ最高の『番長』だったのに…と残念に思っていた｡


しかし､ｶﾘｽﾏ性は抜群で､俺たち小学生は集まると


『大きくなったら番長みたいな大人になりたい』

って口ぐちに語り合い

番長が満足そうに笑みを浮かべていたのを覚えている｡



そこから時代は変わり10年後


俺たち同級生の中では




『最もなってはいけない大人』として

『番長』は

必ずﾉﾐﾈｰﾄされることになり


『番長』のｴﾋﾟｿｰﾄﾞの数々は酒のいい肴として

腹がよじれるほど大笑いさせてもらうのであるが…



小学校卒業式当日｡


番長は俺たちに大事なＳＤｶﾞﾝﾀﾞﾑのﾌﾟﾗﾓをﾌﾟﾚｾﾞﾝﾄとして配ると｡


｢中学生になったら会いに来たらｱｶﾝで…


…俺はお前らが大好きやった！｣


ってどんな父兄よりも顔をｸｼｬｸｼｬにして

大粒の涙を何度も腕で拭っていた番長｡



｢変な奴やけど､いい番長やったよな｣

で最後はｼﾝﾐﾘと番長を語るのである｡


番長も今は50歳を過ぎた｡


どうしてるかも知らない｡


まさか現役番長であるとは思えないが

どうか元気でいて欲しいと願っているのである｡