仕事でとあるｼｮｯﾋﾟﾝｸﾞﾓｰﾙのｲﾍﾞﾝﾄに行ってきた｡


土曜日だったから人がわんさかいて大賑わい｡


特に子どもが多く､ｷﾞｬｰｷﾞｬｰ会場を走り回っていた｡


（危ないな･･･親､ちゃんと子ども見ろや！）って思ってたら


ｿﾌﾄｸﾘｰﾑを持って走る子に思いっきり激突され､俺のｽﾞﾎﾞﾝにｱｲｽがﾍﾞｯﾀﾘ付いてしまった｡


とりあえず水で洗おうとﾄｲﾚに向かう道すがら


風船がｾｯﾄの大きな木の枝にひっかかり､その傍らで泣いている幼児を発見したので風船を取ってあげた｡



ｱｲｽといい風船といい､今日はやけに｢ﾍﾞﾀ｣な出来ごとに遭遇できて嬉しくなってしまった｡



実は俺は｢ﾍﾞﾀ｣愛好家なのである｡


｢ﾍﾞﾀ｣とは､｢よくあるﾊﾟﾀｰﾝ｣という意味である｡


昔から一般的なﾍﾞﾀをずっと探していた｡


語尾に｢ｱﾙ｣をつける中国人を神戸の中華街で探し回ったこともある｡


感電して骨が透けてみえないか､電柱工事の人をずっと観察もしていた｡


出前で転んで頭に蕎麦とｾｲﾛをかぶった蕎麦屋さんは一度も目撃したことない｡


ｽﾉﾎﾞｰに行っては､どんくさいｵｯｻﾝがｹﾞﾚﾝﾃﾞで転倒することはあっても

そのまま転がって雪だるまになってるのも見たことがない｡



ﾊﾟﾝを咥えながら｢遅刻だｰ！｣って慌てて走ってくる女子高生と角でぶつかって恋に発展してみたいと

いつも願っていたが､そんなの現れたことがない｡


｢よくあるﾊﾟﾀｰﾝ｣と言いながら､なかなかﾍﾞﾀな出来ごとと遭遇することはない｡


そんな俺が中学生の頃にﾍﾞﾀを経験したことが２度ある｡


１度は､下校中にﾊﾞﾅﾅの皮で滑って小指の骨を骨折したこと｡


２度目は学園恋愛ﾓﾉである｡



ﾍﾞﾀに俺が中学２年の頃に好きだった女の子がいて


ﾍﾞﾀにその女の子に廊下で呼び止められて


ﾍﾞﾀに｢放課後に体育館の裏に来て欲しい｣って言われて



ﾍﾞﾀに周りの友達に｢ひゅ～､ひゅ～｣ってはやされて


ﾍﾞﾀに有頂天になった俺は放課後まで真っ赤な顔で｢ﾌｰ､ﾌｰ｣言ってて



ﾍﾞﾀに夕焼けの体育館裏でﾓｼﾞﾓｼﾞしながら彼女からﾗﾌﾞﾚﾀｰを受け取って



ﾍﾞﾀに彼女が恥ずかしそうに俺に一言｡





｢この手紙､Ｍ先輩に渡して欲しいんだけど…｣



ﾍﾞﾀにその日の夕食はまったく喉を通らずｵｶﾝに心配されて｡


ﾍﾞﾀに一晩寝ると､ﾎﾟｼﾞﾃｨﾌﾞ思考で立ち直りの早いﾀｲﾌﾟの俺は


ﾍﾞﾀに彼女への恋心をすっぱり忘れて別の子を好きになったのはいいんだが


ﾍﾞﾀに先輩に渡さなきゃいけないﾗﾌﾞﾚﾀｰまでもすっかり忘れていたようで



ﾍﾞﾀにこないだ実家の押し入れからそのﾗﾌﾞﾚﾀｰが発見された｡



ﾍﾞﾀに渡し忘れてただけなのか？

ﾍﾞﾀに嫉妬して渡さなかったのか？

そこんとこは良く覚えていないんだが
（彼女の人生を狂わせたか…？）

と罪悪感を感じてた｡


とりあえずﾗﾌﾞﾚﾀｰを開封して内容を読みんでみると


赤面するような､ﾍﾞﾀﾍﾞﾀなＭ先輩への愛の“告白文”と

PS.で


俺に｢ﾌﾞﾙﾏをくれ！｣と頼まれてるが気持ち悪いから止めさせて欲しいとの“告発文”だった｡



｢Ｍ先輩大好き｣と噴き出しの付いた下手くそなｲﾗｽﾄがまたﾑｶﾂｸ｡



ﾍﾞﾀに彼女は何も知らなかった｡


Ｍ先輩はｻｯｶｰ部のｷｬﾌﾟﾃﾝ｡


背が高いｲｹﾒﾝで女生徒の絶対的な憧れの的｡


他校の女からもﾗﾌﾞﾚﾀｰを受け取るなんて日常茶飯事｡

ﾍﾞﾀなﾓﾃｷｬﾗそのままである｡


だけどＭ先輩の本性もﾍﾞﾀ｡


ﾗﾌﾞﾚﾀｰをもらって気に入った女は､ﾍﾞﾀに家に連れ込んでは喰うのだ｡


まぁそれはいい｡


処女の子に笑いながら｢制汗ｽﾌﾟﾚｰ｣を突っ込んだり

違う学校の友達にﾔらして大笑いしたり

Ｍ先輩は鬼畜だった｡


そもそも彼女が告発してる件も

｢可愛い女子のﾌﾞﾙﾏを集めて来い！｣
というＭ先輩からの命令だったもの･･･



（本当に彼女のﾗﾌﾞﾚﾀｰをＭ先輩に渡さなくて良かった････）


ﾍﾞﾀに鬼畜から彼女を守るため『渡さなかった』と認識することで

ﾍﾞﾀに罪悪感から逃れることにした｡



とりあえず暑くて身体が“ﾍﾞﾀﾍﾞﾀ”するんでｼｬﾜｰでも浴びることにする｡


みなさま良い休日を(‘･ω･́)ゝ