女と男とそれぞれ会話をしてみて､男女の違いに気づいたことがある｡

人によって多少の個人差はあるんだろうが


女は圧倒的に『噂話』が大好きである｡


自分が直接見聞きしていない他人の秘め事を､さも当事者かのように語る｡


｢あの人がどｰした､この人がどｰした｣とべらべらと嬉しそうに話しているのを

｢うんうん｣と聞きながら､よくもまぁ､そこまで他人の事が気になるもんやと関心してしまう｡


しかも内容はだいたいが悪口である｡


急に小声になって､わざとらしく周りをｷｮﾛｷｮﾛと確認すると


｢ここだけの話やねんけどな･･･絶対誰にも言うたらｱｶﾝで～｣

このﾜｰﾄﾞで始まる噂話は女から腐るほど聞いた｡


だから律儀に言い付けを守って誰にも言わずにいたら


必ずと言っていいほど違う女から､同じ話に“尾ひれがついたﾊﾞｰｼﾞｮﾝｱｯﾌﾟ版”で必ず俺の耳に入る｡


この話があと2周くらい周ったらどんな話に変化するんやろう…って興味を持ってしまう｡


女にとって｢誰にも言うな｣は周りに言え！という“ﾌﾘ”ということなんじゃないかと思う｡


一方､男と会話していると噂話の類はほとんど出てこない｡


噂話に興味が無いのは､たぶん他人にあまり関心が無いということかもしれない｡


ただ､ひとつだけ､男が異常に関心を示す『噂話』がある｡


それは



｢○○は―｡



ﾁﾝｺが大きいらしい｣である｡


高校生のころに安達くんというｸﾗｽﾒｰﾄがいたんだけど


貧弱な横分けで銀縁眼鏡をかけて､一見､勉強はできそうだが

勉強は全然ﾀﾞﾒ､ｽﾎﾟｰﾂはもっとﾀﾞﾒ､暗くて仲の良い友達もいない｡


本来なら話題にすら上がらないような地味な男なのだが､ある日を境に安達が注目を浴びるようになる｡


｢安達のﾁﾝｺってめちゃくちゃ大きいらしいぞ！｣

という噂が立ったのである｡


それは､それは毎日のようにﾋｿﾋｿとﾁﾝｺの大きい安達くんの『噂話』が学内を駆け廻った｡


安達のﾁﾝｺはどれだけ大きいのか―｡


そのｴﾋﾟｿｰﾄﾞは､ほぼ伝説化してしまったほどである｡


覚えている伝説を列挙してみると




■お風呂に入る時に片足を湯につける前に｢熱いっ！｣と言ったらしいとか｡


■銭湯で歩くとき足音とは違うﾍﾟﾀﾝ､ﾍﾟﾀﾝとﾒﾄﾛﾉｰﾑのﾘｽﾞﾑで音が聞こえたとか｡



■小学校の時の遠足で雑木林に入って立ち小便しようとﾁﾝｺを出した瞬間､森の鳥たちが一斉に騒ぎ出したとか｡



■英語が苦手な安達だけど日本製のｺﾝﾄﾞｰﾑではｻｲｽﾞが合わなくて

米国からｷﾝｸﾞｻｲｽﾞを直輸入しているため｢Please give a big condom to me｣の発音だけが異常にﾈｲﾃｨﾌﾞだとか｡


■老人会で酔って銭湯でｳﾙｻｸ騒いでるお爺ちゃん軍団が安達のﾁﾝｺを見た瞬間､水を打ったように静かになったかと思うと

一人のお爺ちゃんが涙ぐみながら安達の肩を叩いて｢君みたいな日本人ばかりだったら戦争で日本は負けなかった｣と言われたとか｡



■安達の母親が妊娠した時のｴｺｰ検査で医者に｢双子ですね｣と言われたが､実は胎児が2人ではなく安達とﾁﾝｺだったとか｡



■朝勃ちしてしうまうと安達がｼｰｿｰになって家中の家具や家族を飛ばしてしまうから､うつ伏せで寝るのを固く禁じられてるとか｡



まぁ､半分以上は腹を抱えながら大笑いして話す『噂話』であったが､

安達のﾁﾝｺ大きいという噂は75日以上は続いた｡


ただ実を言うと誰も安達のﾁﾝｺを見ていないのである｡

なので実際は大きいのかも小さいのか誰も見てないのでわからなかった｡


それが『噂話』の怖いところである｡


だけども､その『噂』のおかげで､本来ならｽﾎﾟｯﾄﾗｲﾄを浴びることの無い安達くんが

卒業するまで｢ﾁﾝｺが大きい｣とｸﾗｽﾒｰﾄから一目置かれる存在になったのは間違いないし

噂されるようになってから妙に明るくなり､仲のいい友達も増えた｡


『噂話』のおかげで良い方向に人生が変わる場合もある｡


そんな『噂話』ばっかなら､話している方も聞いてる方も､なんだか楽しい気分になると思う｡