俺が小学生のころ､ｳﾁの町内でとある事件が勃発していた｡



朝､教室に入るとｸﾗｽの女子がｼｸｼｸ泣いていて

級友達がその子の周りに集まり慰めの言葉をかけている｡



何事かと聞いてみたら､何でも町内で

【露出狂】が出没したとのことらしい｡



長いｺｰﾄを着た男が､前に立ちはだかりｺｰﾄの前を広げてﾁﾝｺを露出する―


まぁ､ﾍﾞﾀな変質者である｡



泣いている女子はその日の朝にﾓﾛに大人の“それ”を見てしまったｼｮｯｸで泣いていたのである｡



さらに聞き込み調査をしてみると､○○の妹が見ただの､別のｸﾗｽの○○が見ただの


俺がぼｰっと暮らしている間に｢露出狂事件｣としてちょっとした騒ぎになっていた｡



どうやら､親や先生もあてにならないようで


これは大変だと事件の概要をまとめてさっそく番長に相談しに行った｡



当時､ｳﾁの小学校の番長は以前､日記でも紹介したが学校の近くに住む


ﾀﾓﾂくん（無職･27歳）という少し変わった好青年が番長を担ってた｡




｢おう､りょうま！だいたい話はﾖｼから聞いてるで｣



ﾀﾓﾂくんの部屋には､ﾖｼをはじめすでに数人の仲間がいた｡


俺が一番ﾉﾘで事件を伝えたかったのに､何だかがっかりしたのは覚えている｡




｢露出狂を探し出して征伐やな―｣


ﾀﾓﾂくんは目をﾗﾝﾗﾝと輝かせていた｡


彼は､基本的にいつも暇なのでこんな事件が大好物なのである｡



すると仲間の一人が―

｢しゃｰけど露出狂のやつ､かなりの大男らしいで｣



大人の部類では極めて腕力が無いﾀﾓﾂくんの顔色がみるみる変わり

先ほどの勢いがｻｰっと消沈したのを俺は見逃さなかった｡



そこで学級委員会みたいなﾉﾘで露出狂事件への対応策を議論することとなった｡



あれや､これやと意見が出たが


【目には目を､歯には歯をで征伐】

という覚えたての「ハンムラビ法典作戦」でまとまった｡



要するに､いきなりﾁﾝｺを見せられたらどんなにｼｮｯｸを受けるか相手にもわからせるべきだという―

ﾀﾓﾂくん以外は小学生の発想らしい優しい作戦であった｡



ﾀﾓﾂくんはﾅｲｽｱｲﾃﾞｱとばかりに手を叩くと


｢よｰし､お前ら全員ﾁﾝｺを見せろ｣

とｽﾞﾎﾞﾝを脱がさせられた｡



｢目には目を―｣なら､露出狂男よりもﾊﾟﾝﾁの利いたﾁﾝｺを見せつけたほうがええやろ


ってことらしい｡



｢大人の番長が出しｰやｰ｣

ってみんなﾀﾓﾂくんのｽﾞﾎﾞﾝに手をかけたが


ﾀﾓﾂくんは｢やめろや～｣って恥ずかしそうに身をよじった｡



ちなみにﾀﾓﾂくんのﾁﾝｺが異常に小さいことを俺は知っている｡

いつも毛を巻き込んで｢ｲﾃﾃ･･･｣って言ってたから｡



さて､ﾁﾝｺ選抜ではあるが､みんながわざわざ出さなくも､もう出す奴は決まっている｡


仲間の一人の｢ﾉﾌﾞ｣は小学生らしからぬ破壊力を持ったﾁﾝｺ保持者であった｡


小学校3年生くらいから陰毛が生えてきており､何故か下半身だけは目を見張るほど成長著しいものがあった｡



あまりの大きさと剛毛に銭湯に行くたびに

｢お前はお父さんか！｣

ってﾉﾌﾞに突っ込んでたくらいである｡



林間学習のお風呂で元関西選抜の

ﾗｶﾞｰﾏﾝ体育会系教師が



ﾉﾌﾞのﾁﾝｺを見て一言―｡




｢･･･え？ちょっ､ほんまか､お前ｗｗｗ？｣


幾人ものﾗｶﾞｰﾏﾝの巨根を見てきた先生が



｢ほんまか？｣


って確認するほどだからﾉﾌﾞのﾁﾝｺがいかに小学生離れしているかがわかる｡



さっそくﾀﾓﾂくんのお父さんのｺｰﾄをﾉﾌﾞに着せて


一同は意気揚揚と｢露出狂征伐｣に出かけたのである｡



しかしｰ｡


目撃情報の場所をｳﾛｳﾛしてても､すぐには露出狂はみつからない｡


最初の頃は､それらしきｵｯｻﾝが通るたびに


緊張した表情でｺｰﾄを掴んで身構えてたﾉﾌﾞであったが


次第に当初の目的を忘れ目撃場所でただ遊んでいる日の方が多くなった｡



何日かすると俺も完全に飽きてしまって｢露出狂征伐｣には参加しなくなった｡



学内でも露出狂事件がすっかり風化され出したころ―｡


我が家に見覚えのある女性が訪ねてきた｡


ﾀﾓﾂくんが外出する際にいつも玄関で彼に帽子をかぶせる人｡



ﾀﾓﾂくんのお母さんである｡



俺達が｢露出狂征伐｣に参加しなくなってからも


実はﾀﾓﾂくんは､ｺｰﾄを着せたﾉﾌﾞを強引に引き連れて｢征伐活動｣をしていたらしく



その日に通りかかったのは､運悪く


露出狂ならぬﾊﾟﾄﾛｰﾙ中の警官だったようで



｢何やってるんだい？君たち｣

ってな感じになったらしく


ﾉﾌﾞのｺｰﾄの中を見た警官が




｢ほんまか？｣

って腰を抜かした


…かどうかはわからんが



警官が詳しくは交番で話を聞こうかという流れになったみたい｡



ﾉﾌﾞと仲良しの俺の家にも


｢お宅の息子さんにはご迷惑をおかけしませんでしたか？｣


とわざわざﾀﾓﾂくんのお母さんが謝罪に来ていたのであった｡




ﾐｲﾗ取りがﾐｲﾗになる―｡



露出狂を征伐しに行って､露出狂として補導されたのである｡




あの露出狂事件は結局､何だったのか今になって総括してみたのだが


露出狂の目撃情報のすぐ近くに50歳くらいの派手なｵﾊﾞﾊﾝが煙草屋兼小さなｽﾅｯｸを経営していて


町内のならず者たちが夜な夜なそのｽﾅｯｸに集まっては朝まで酒を飲んでいた｡


はっきりとした真相は定かではないが､朝帰りの酔っぱらいの｢立ち小便｣姿を目撃した女子が


男のチンコを見たと騒いだのが尾ひれをつけて「露出狂」となったんじゃないかと思っている｡


本当に出没してたなら普通は警察の捜査とか集団登下校とかになるもな。



夜な夜な酔っ払ってる俺も｢露出狂｣にされないように気をつけないと････