俺は､普通の人よりは酒は強い方で､かなりの量を飲んでも､あまり変化は無い方である｡



もっとも普段から｢ちょっと酔ってますか？｣って真顔で聞かれるので､変化が無いだけなのかもしれない｡




ただ俺が一度ﾍﾞﾛ酔いしてしまうと､普通の人よりもｺﾃｺﾃの酔い方をしてしまうらしい｡



ｺﾃｺﾃの良い方とは―


右手にお土産のﾋﾓを指でつまみながら､千鳥足でﾌﾗﾌﾗ歩き､


犬に吠えられて｢ｱﾎんだらｰ！｣って言い返した瞬間､片足をﾄﾞﾌﾞに嵌めてしまう酔い方のことである｡




この酔っぱらいﾓｰﾄﾞになると､とりわけ忘れ物が異常に多くなるのである｡



必ず何かを忘れてくる｡



ｶﾜｲｲとこでは､ﾏﾌﾗｰ､手袋､傘､ﾗｲﾀｰ｡


これらは必ず紛失する｡


なぜか片方だけ靴下を履いていない場合もある｡




忘れて困ってしまうのが財布｡


財布はこれまで何度も失くした｡




さらに今まで一番困った！って忘れ物としては


Tag Heuerの腕時計を



購入した数時間後に､酔っ払ってどこかに紛失したこと｡





腕時計が100円ﾗｲﾀｰなみに紛失するｸｾがあったからあえて緊張感を持つことで紛失癖を治そうと､奮発して高級腕時計を購入したのだが







ものの見事に購入後６時間で紛失｡



心斎橋でｲﾗﾝ人から2500円で買った､RONIX(ﾛﾆｯｸｽ)ってぱっちもんより早く紛失してしまったのである｡




それ以来､ここ数年は怖くて腕時計はつけていない｡




逆に､忘れものが多いｸｾに､身に覚えが無いものを持って帰って来ることもしばしばで




若い頃は､連日のようにﾍﾞﾛ酔いだったから､


本当にﾄﾞﾗﾏみたいに目が覚めて｢誰ですか？｣って知らない女の人が隣で寝てたり


その女の人の顔を見て


記憶がまったく無いから｢もったいない～！｣って頭を抱えたことや


逆に記憶が無くて｢ありがたい｣って手を合わせることもあった｡



あと､上着のﾎﾟｹｯﾄの中に､なぜか大量の【ﾏﾂﾎﾞｯｸﾘ】が入って時は､一体、俺はマツボックリで何をしたかったのか理解に苦しんだ。




酒を飲んで忘れ物する人は俺以外にも多いみたいで､飲んで朝帰りするとき､道に色んなものが落ちている｡



ｶﾊﾞﾝ､ﾈｸﾀｲ､眼鏡､上着･･･



これまで様々な忘れ物を目撃してきたんだが､俺が紛失した高級腕時計や財布なんかよりも



はるかに｢困ったはず｣であろう落し物がそこにあった｡




その忘れ物とは―｡








【ﾂﾞﾗ】である｡



K･A･T･U･R･A

である｡




道のどまん中にﾂﾞﾗが落ちていたのである｡



絶対に忘れてはいけないものじゃないか？ｺﾚ｡



【人はなぜすぐﾊﾞﾚるﾂﾞﾗをかぶるのか協議会（HBZ)関西支部支部長】の俺はﾂﾞﾗな人には､かなり目ざとい｡




｢私を信じてください！｣


って熱意のある営業ﾏﾝが､いまいち信用できなかったのも､その人が被っていたﾂﾞﾗのせいだったかもしれない｡



｢不器用ですが正直だけが取り柄なんで･･･｣



（この嘘吐き！）


ってぶん殴ってやろうかと思ったもの｡




周りは100％ﾂﾞﾗだとわかっているのに､被っている本人は完全に偽装に成功していると思い込んでいる｡



この安物んのﾂﾞﾗが､人間関係や社内が異様な空気に包まれる原因となるのである｡



ﾂﾞﾗは悪い､いや必要悪なんだと思う･･･



その､隠し事と罪悪感の塊のようなｶﾙﾏ多き物体（ﾂﾞﾗ）が俺の足下に転がっていたのである｡



どんなｼﾁｭｴｰｼｮﾝで､このﾂﾞﾗを道の真ん中に放り出したんだろうと想いを馳せてみる･･･




会社が倒産危機の中､部長が部下を集め一致団結を図るべく飲み会｡


若い社員がｷﾗｷﾗと純粋な瞳で


｢僕達はすべて部長を信じて付いていきます｣

の一言に部長が心揺さぶられ


｢俺が間違っていたよ･･･｣と解脱｡




はたまた､浮気を怪しんでいる彼女に

｢私に何か隠していることがあるでしょ？｣

と詰め寄られた彼氏が勝手にﾃﾝﾊﾟって―


｢こ､これのことか？｣と解脱｡



いや､単なる酔っ払いの忘れ物かもしれない｡



俺はとりあえずそのﾂﾞﾗを手に取って









被ってみた｡





だって酔っ払ってたから( ´･ω･｀)



周りの仲間がｹﾞﾗｹﾞﾗ笑う｡



調子に乗って指揮者をやってみる｡




｢拾い主って一割もらえるなら､ﾓﾐｱｹﾞだけでももらっとく？( ´･ω･｀)｣


みんなで､ひとしきり笑った後に､交番に届けるかって話をしたんだが



持ち主が朝起きて頭が寒いことに気づき


｢ひゃｰ！出勤どうするんだ！！｣


ってﾊﾟﾆｯｸになってる可能性があるから


ﾖｺﾞﾚを払ってあげて､ちゃんと目につきやすい場所にかぶしておいた｡



夜にその場所に行ったらｽﾞﾗはすでに無かったので


持ち主が通勤の時に、何気ない顔で装着し、鼻唄交じりで信号を渡ったと信じたい。



みんなも忘れ物には注意しようね(‘･ω･́)ゝ