人から｢好きなﾀｲﾌﾟ｣を聞かれて､答えるのって非常に難しくないですか？


俺はいつも悩んでしまう｡


今まで好きになった人を全部､思い返してみてもこれが全員､ﾊﾞﾗﾊﾞﾗで同じﾀｲﾌﾟの人がいないだけに､自分でも､よくわからないのである｡



誰でもいいってわけでもないんだが､あまり外見のこだわりは無いみたい｡




飲み友達のＭ子の好きなﾀｲﾌﾟは､かなり独特であったけど､はっきりしていた｡





Ｍ子は､太った男が大好き｡




いわゆる『ﾃﾞﾌﾞ専』である｡




ﾜｸﾜｸのﾌﾟﾛﾌで言うと



“ちょいﾎﾟﾁｬ”や“ﾎﾟﾁｬ”ではﾀﾞﾒ｡





ﾎﾟﾁｬﾎﾟﾁｬﾎﾟﾁｬﾎﾟﾁｬﾎﾟﾁｬが大好きなのだ｡




ただし､お相撲さんのように鍛えられたﾃﾞﾌﾞはﾀﾞﾒで､できるかぎりだらしない感じの色白のﾃﾞﾌﾞが大好物だそうで



汗をかきながら､夢中でご飯を食べて幸せそうに満面の笑みを浮かべて目が糸のように細くなってるﾃﾞﾌﾞがｾｸｼｰに見えるそうだ｡



そんなﾃﾞﾌﾞな男を見てるだけで濡れるんだって｡



Ｍ子自体は細くて清楚な美人でﾓﾃﾓﾃなんだけど､ﾃﾞﾌﾞ意外にまったく興味を示さなかった｡



携帯の待ち受け画面が


燃えよﾃﾞﾌﾞｺﾞﾝのｻﾓﾊﾝｷﾝﾎﾟｰだったし



初恋の相手は､ﾃﾞｨｽｶｳﾝﾄｽﾄｱ｢ｼﾞｬﾊﾟﾝ｣の 店頭に設置された


二重ｱｺﾞのﾃﾞﾌﾞ人形そっくりな担任の先生だったという｡




まぁ正真正銘のﾃﾞﾌﾞ専なのである｡




確かに歴代の彼氏は､ﾊﾞﾀｰﾋﾟｰﾅｯﾂかﾌﾞﾙﾍﾞﾘｰｼﾞｬﾑを口の周りに付けてそうなﾃﾞﾌﾞばかりだった｡



そんなＭ子には､かれこれ３年くらい付き合っている彼氏歴代ＮＯ．１の巨漢の彼氏がいた｡（安田大ｻｰｶｽのﾋﾛにそっくり）



写ﾒを見せてもらったが､画面の中に顔が入りきっていなかった｡




ふと仕事中に､Ｍ子がその彼氏とどうやってｾｯｸｽしてるのか無性に気になってしまって

すぐに電話して､その日の夜にＭ子と飲みにいくことにした｡




正常位だと間違いなくＭ子は押しつぶされて､一反木綿みたいにﾍﾟﾀﾝｺになる｡


絶対に体位は騎乗位だと思ってたんだが､意外にも正常位でやってるんだって（彼の腕力は相当､必要らしい）




ただ､やっぱり肉に埋もれてるおかげでﾁﾝｺが短いので当然､奥まで届かないという｡



｢そんなｾｯｸｽで満足できるん？｣



と聞いてみたら､笑いながらﾃﾞﾌﾞとのｾｯｸｽの魅力を語るＭ子



太っててｽﾀﾐﾅが無いからﾌﾞﾊｰ､ﾌﾞﾊｰと顔にかかる大量の吐息や



正常位だと下になってる自分の顔に滝のように上から落ちてくる塩っ辛い大量の彼氏の汗



何より相手の脂肪の中に包まれてるぅｰって感じるだけで



奥まで届かなくても､十分に逝けるんだって｡




なぁ､みんな


ｾｯｸｽって一体､何なんだろうね｡




さて､その飲み会に何人か他に仲間がいたんだが



いい感じに酒を飲み進めてる間に､酒癖と性格の悪い女であるＡ香が



｢ｱﾝﾀ､ﾃﾞﾌﾞのどこがいいの？｣と


Ｍ子に絡みだしたのである｡



Ａ香はとかく“ｲｹﾒﾝ至上主義”の女であったのでﾃﾞﾌﾞにはすごく否定的だった｡




ただ､面白いのは､臭そうだの､暑苦しいだの､ﾃﾞﾌﾞに対する一般的なﾈｶﾞﾃｨﾌﾞなｲﾒｰｼﾞを主張するのではなく


なぜﾃﾞﾌﾞが嫌いなのかというと―




｢ﾃﾞﾌﾞはみんな同じ顔に見えるからﾔﾀﾞ｣


だそうである｡




さすがに､ﾑっとするＭ子｡




人の美意識に対していちゃもん付けるＡ香が100％悪いんだが､ちょっと面白そうなんで､２人のやりとりを黙って聞いてみることにした｡





Ａ香がＭ子にまくしたてる｡



｢近●大学相撲部の集団が毎朝走ってるんだけど､何十人も全員､同じ顔で走ってるんだよ｡｣




｢いやいや､同じ顔に見えてるのは､ｱﾝﾀだけやろ？ﾃﾞﾌﾞの個性をなめたらｱｶﾝよ｣とＭ子




｢相撲ってまったく同じ顔の人が裸でﾊｧﾊｧ抱き合っててｷﾓｲ｡

行司も同じ顔なのによくどっちが勝ったのかもわかるよね｡ふんどしの色か何かで判断してるん？｣



酒の入った２人が最初はじゃれ合うように罵り合ってるのだが


だんだんｴｽｶﾚｰﾄしてﾑｷになってきているのがわかったので､お互いｽﾄｯﾌﾟさせた｡




その後､Ａ香は“ｲｹﾒﾝ至上主義”なんで､彼氏を作るにも好みのﾀｲﾌﾟのﾊｰﾄﾞﾙが高く､いない時期が長かったんだが


最近は､年齢も考慮して好みのタイプも妥協するようになったみたいで､今は“ｿｺｿｺ”のｲｹﾒﾝと結婚前提に付き合ってる｡




一方のﾃﾞﾌﾞ専のＭ子は､ことごとく好みのﾀｲﾌﾟのﾄﾞｽﾄﾗｲｸなﾃﾞﾌﾞを､彼氏としてｹﾞｯﾄしている｡




どっちが幸せなのかと言ったら､そら賛否両論あると思うんだが



俺は間違いなくＭ子だと思うんだ｡




Ｍ子とＡ香の言い合いの場に一緒にいた後輩は



男はｲｹﾒﾝを主張するＡ香には「酷い女」として悪く印象を持っていたが、一方のﾃﾞﾌﾞ専のＭ子に対しては


｢見た目を重視しないＭ子さんは本当にｲｲ人だ｣

って痛く感動してた｡




先日､久しぶりにＭ子と会って話をしたら



3年以上､付き合ってたﾋﾛ似の彼氏と別れたという｡




理由を聞いてみたら―



｢元ｶﾚが健康診断で医者から命の危機を指摘されてからﾀﾞｲｴｯﾄを始めて痩せやがったの｡


もう､以前ほどデブじゃないから､興味を無くしちゃって････｣




三年付き合った彼氏が、以前ほどﾃﾞﾌﾞじゃなくなったから捨てたんだって｡




見た目を重視しないＭ子はｲｲ人なんて､とんでもない話で



ある意味､Ａ香以上に



好みのタイプには、妥協しない女だったのである｡