さぁ､ＧＷ中の話を書きまっせ～！




俺は小学生の時からずっと同じ地域に住んでるから



幼馴染との付き合いも長くて､今でも何かあったら集まって飲みに行ってる｡




ちょくちょく日記にも書く｢ﾖｼ｣は､幼馴染の代表格なんだが､他にも濃いのはたくさんいる｡




いつもは男ばっかで飲みに行くんだが



毎年恒例のＧＷのﾊﾞｰﾍﾞｷｭｰと忘年会は､嫁さんや子どもを集めて一緒に遊ぶ｡




その地元の友人の一人に



角川くん（仮名）って男がいる｡




この角川はｱﾎなのである｡





もうあまりにもｱﾎすぎて､彼と話すだけで脱力感
と倦怠感で身体がだるくなり

彼と会った日の夜は謎の金縛りで寝汗でびっしょりになるほどｱﾎな奴なのだ｡





この角川には子どもが4人いる｡




上の子は現在､小学6年生の女の子｡



角川は彼女を｢ﾅﾂ｣と呼んでいる｡



呼んでいるという微妙な書き方をしている理由は､彼女は｢ﾅﾂ｣という名前ではなく､｢奈○美｣という名前があるんだが



なぜか父親の角川は娘を｢ﾅﾂ｣と呼んでた｡





理由を聞くと





｢うｰん､なんかわからんけど｢ﾅﾂ｣やねん｣




本人もよくわかっていないみたいなので


めんどくさいから俺も彼女を｢ﾅﾂ｣と呼んでいる｡

（ちなみにﾅﾂ曰く､最近､角川は｢ｷﾖ｣と呼び名を変えてくるらしい）




もう､これだけでもｱﾎなんわかるやろ？




ｴﾋﾟｿｰﾄﾞあげたらｷﾘがないんだが一部だけ紹介すると




中学の時､俺とﾖｼ､角川と数人で夜に母校の体育館に忍び込んで遊んでいた｡


当時､卓球のﾋﾟﾝﾎﾟﾝ玉に火を付けて投げ合うという､とんでもない危険な遊びが流行っていたわけ｡



幸い､体育館は火事になるということはなかったが､連夜続く焦げたﾋﾟﾝﾎﾟﾝ玉に学校側が警戒していたんだろう｡




急に遊んでいる最中に外からﾊﾟﾄｶｰのｻｲﾚﾝが鳴り響いた｡




俺たちは蜘蛛の子を散らすように逃げた｡



逃げ切った後に溜まり場に集合したんだが､角川の姿だけが見えない｡




捕まったんじゃないかと心配してたんだが､しばらく時間が経った後､角川が現れた｡



遅くなった理由を聞くと―




警察が来たということで角川は自分が触ったであろう箇所を拭き取っていたらしい｡





恐らく証拠となる指紋を消したかったんだろう｡



彼らしくない知能的な行動であるが





彼がｱﾎなのは



指紋を消すことは思いついたのに






その夜に体育館の壁にｽﾌﾟﾚｰで大きく書いた









『角川参上！！！』


の文字を消すことまで思いつかなかった｡




次の日､担任の先生に付き添われて所轄の警察署に連行された｡





大人になってからもｱﾎｴﾋﾟｿｰﾄﾞは事欠かない｡



角川は酔っ払って意識を失い､目が覚めるとﾗﾌﾞﾎﾃﾙのﾍﾞｯﾄﾞの上だったんだって｡



角川は｢ﾗｯｷｰ！｣っと思ったらしく､布団をまくり横で寝てるであろう女を見たら…



女をよく見たら････





････？？？




横で寝てたのは女ではなく






知らない素っ裸のｵｯｻﾝだったんだって｡





普通ならここで血相変えてﾎﾃﾙから逃げ帰るはずなのに角川は―｡



｢まぁ､せっかくやから､男の穴の入れ心地も…｣



ちょうど勃起もしてたことだしｵｯｻﾝとﾌﾟﾚｲをしようとしたらしい｡



ただ思惑と違い､そのｵｯｻﾝがﾀﾁ（ｹﾞｲの男役）だったらしく




｢俺､ｱﾅﾙが大怪我してもうてん（笑）｣




って話を､｢ﾅﾂ｣の前で嬉しそうに話していた｡



その手の話を聞くﾌﾟﾛの俺もﾅﾂの前ではｵﾄﾞｵﾄﾞしてしまった｡




なぁ､角川ってｱﾎやろ？

金縛りにもなるやろ？





一方でこんなｱﾎな父親を持つﾅﾂは小学生とは思えないほど､しっかりした女の子である｡




ﾅﾂの下にまだ3人の弟と妹がいる｡



一番下の子は5歳の男の子｡




ﾅﾂは弟や妹の食事から洗濯まですべて面倒をみていた｡




ﾅﾂ達には“今は”母親はいない｡




ﾅﾂの母親､つまり角川の嫁は､ちょうど2年ほど前に､子どもを捨ててどこかに逃げてしまった｡




角川曰く｢ﾊﾞｲﾄ先で男を作って逃げて行った｣と言ってたが本当のことは俺もよく知らなかった｡




定職も就かずに昼間から酒ばっか飲んで奇行に走る角川に愛想をつかして逃げたくなったかだけもしれない｡




それが理由なら仕方が無いじゃないか｡


だって角川が反省しなければならないことだらけやったもん｡



子どもを捨てるのは相当な覚悟がいったはず｡


逃げた嫁は俺もよく知ってる人なだけに､まだ幼い子どもを置いて逃げること“だけ”は残念で仕方がなかった…





そこから2年間は､まだ小学生のﾅﾂが母親代わりに頑張っていた｡




本当にしっかり者のﾅﾂは俺にさえ､ませた口調で説教するようになっていた｡




俺はﾌっと思ったんだが


教育を徹底しているしっかり者の両親よりも



ある程度､ﾀﾞﾒな親の方が､いい子どもに育つんやないかってｗ



これは｢角川とﾅﾂの法則｣と言って､地元ではけっこう有名な理論である｡






そんなこんなで､角川家の展開が変わってきたのが去年の忘年会だった｡






角川の嫁が帰ってきたのである｡





正式な離婚届と子どもの親権を求めて｡




嫁は角川が言ってた通り､新しい男（ﾊﾞｲﾄ先の店長）のとこに逃げてたらしい｡




その店長が､連れ子として子どもを引き取る決心をするまで2年を要したんだって｡



その話しを聞いて忘年会では､仲間たちが､怒り心頭で、いかにして嫁に親権を取らせないかで「あｰだ､こｰだ」言いあってる｡



角川は人差し指を口にあてﾅﾂ達に聞こえてないかチラチラ気にしながら｢うん､うん｣と話を聞いていたが・・・・ほとんど理解していなかった。





悲しいかな仲間はたくさんいるのに､その中に弁護士と医者が一人もいない･･･そんな悲しい地元の友人ｸｵﾘﾃｨなので



みんな感情に任せて｢絶対に取られるな！｣と激励するしかないのだ｡




うん｡心情的には俺も同じだ｡




ただ実は俺は葛藤していて


話を聞きながらも腕を組んで天井を見つめることしかできなかった｡




離婚時､親権のほとんどは母親が取るという事実｡



ﾅﾂや他の弟妹にとっては､ｱﾎな角川といるより


お母さんと経済力のある新しい父親と一緒にいた方が幸せになるんじゃないかと･･･




角川に悪いけどそう想ってる俺がいた｡



（恐らく次のＧＷのﾊﾞｰﾍﾞｷｭｰは角川一人だけなのかもな…）



忘年会では会場の端の子ども達のｼﾏで無邪気にｶﾙﾋﾞを頬張るﾅﾂたちを目に焼き付けた｡





ところが―



このＧＷのﾊﾞｰﾍﾞｷｭｰにﾅﾂ達はいたのである｡




角川にどｰなってんのか詳しい話を聞いたが




｢ん？ああ…よｰわからん！｣




うっ！


お前に聞いた俺がｱｶﾝかったのか？




さすがに､ﾅﾂにはﾄﾞｽﾄﾚｰﾄで聞けなかったが


ﾅﾂが教えてくれたのは



最近､角川は｢ﾅﾂ｣ではなく｢ｷﾖ｣と呼び名を変えてくるらしいのと



話し合いの場らしきとこで､角川がﾅﾂを抱いてﾜﾝﾜﾝ泣いて周囲を困惑させていたこと｡





どう決着になったのかわからんが､今､ﾅﾂ達が角川の傍にいるということは､そういうことなのだろうか｡





そして俺は知っているのだ､角川よ｡




ｱﾎな角川が､この2年間は職を変えずに真面目に働いていること｡



ｱﾎな角川がﾅﾂや子どもが聞こえるとこで嫁の悪口は言わないこと｡




何より子ども達のことをいつも自慢気に嬉しそうに話すこと｡


これは2年前からだけではなくずっとお前は同じだな｡




もう､いい｡


そのまま子どもを幸せに育ててしまえ！！！





ﾀﾞﾒな親でも､いい子どもは育つ｡


でも､そこは子どもに対する愛情ってのは絶対に必要なのかもな｡




ﾊﾞｰﾍﾞｷｭｰで酔っ払いすぎてﾍﾛﾍﾛになってる角川に､ﾅﾂがめっちゃ怒ってた帰り道｡




怒られてｼｭﾝと肩を落とす角川の手をつないだのはﾅﾂだった｡



すると角川のもう片方の手を下の子が握る､ﾅﾂの手を妹が握りその弟の手を姉ちゃんが握る｡




自然に集まった家族の絆が俺の前でできて､そのｱｰﾁとなったｼﾙｴｯﾄを見て



思わず心からﾆﾝﾏﾘしてしまった｡




子どものいない俺からしたら羨ましくて､その場で地団太を踏みたくなった｡




ﾀﾞﾒな親ほどｲｲ子が育つ｢角川とﾅﾂの法則｣なら



俺に子どもができたら


ﾅﾂほどじゃないにせよ






かなり､いい子になりそうな気がしない？