さっき本屋にいたら､一心不乱に立ち読みしてる若いｻﾗﾘｰﾏﾝがいたから



何を読んでるやろう…？

って気になって平積みになってる本を見たら



｢ｱﾎな上司のもとで働く21の法則｣やって｡


眉間に皺をよせて鬼気迫る表情でその若者は読んでた｡


その２１の法則を守ったら何とかなるもんなのかね？



ﾋﾞｼﾞﾈｽ本のｺｰﾅｰだったから､他のもざっくり見渡してみると｢ﾀﾞﾒ上司｣とどう向き合うのかという関連書籍の多いこと多いこと｡



みんな上司に苦労してるんやなぁ｡



先日､以前に勤めていた会社の元同僚と飲んでた｡



その同僚曰く


｢最近の俺らの業界って大人しい人間増えたよな｣

って言う｡





考えてみると､周りを見ても確かにそうかもしれない｡



ｸﾘｴｲﾀｰというか､頭の中で何かを生み出す人間って基本的に変わってる人が多い｡


悪く言うと｢ｷ○ﾁｶﾞｲ｣みたいな人ばっかだったのだ｡




そんな変わった人間が楽しくて俺は､いい意味でも悪い意味でも色んな人間と交流してきた｡



んで､さっきの本屋で上司の話を思い出した｡



一緒に飲んだ元同僚と俺がまだﾍﾟｰﾍﾟｰだった頃､同じ上司の下で働いた｡




その上司はめちゃくちゃ｢ｱﾎ｣だった｡




もう飛びぬけてｱﾎやった｡




ｴﾋﾟｿｰﾄﾞだけ書けって言ったら本を一冊書けるほどあるんだが､大酒飲みで常に酔っぱらってて行動や言動もおかしかった｡



東南ｱｼﾞｱかどこかで買った｢横笛｣をいたく気に入ったらしくて､



仕事中だろうが移動中だろうが






どこに行くのも常に横笛を吹きながら歩いていた｡





基本的に出勤時間に来ないもんだから､外から横笛の音色が近づいてきたら



｢上司が出勤してきたんだなぁ｣って合図だった｡




当時の会社がﾄﾞﾌﾞ川の横にあったから､その上司は出勤するのに橋の上を歩いてくるんだが




横笛を吹きながら橋を渡ってくるもんだから､近所の人や小学生から



｢牛若丸｣


とか言われてた｡




それが半年くらい続いて､今度は沖縄で買った､小太鼓みたいなのにﾊﾏった時は大変だった｡




あと近くの公園に赴いては



｢りょうま､新種や！！新種！！｣


ってわけのわからない昆虫を捕まえては俺に見せてきた｡（それが嫌で辞めた女子社員は多数）



巨大な気持ち悪い蛾を捕まえてきた時は､ｵﾌｨｽの中でその蛾が逃げて大騒ぎになった｡



俺が入社間もないころ､その年は夏のﾎﾞｰﾅｽが少なくなったった年だった｡


上司が急に会社に来なくなった｡




誰も何も言わなかったので俺も気に留めなかった｡



気まぐれな人だったので長期夏休みでも取ったのかな？って思ってたら




窓の外から何か｢がなり声｣が聞こえる｡




窓の外（ﾄﾞﾌﾞ川）を見ると､どこから借りてきたのか船に仁王立ちで立っていて


拡声器で上の社長室に向かってﾎﾞｰﾅｽが減った恨み言を糾弾していた｡



先輩に聞いたらその行動は４回目で夏の風物詩的な感じだったらしい



糾弾していた上司はだんだん楽しくなってきたらしく､船の上から２Ｆのﾌﾛｱの俺たちと眼が合うと｢おｰい！おｰい！｣って笑顔で手を振っていた｡




そんな破天荒な上司を社長はｸﾋﾞを切らなかった｡



当時の大きなｸﾗｲｱﾝﾄの偉いｻﾝたちはその上司が大好きで､実際に大きな仕事をずっとこなしていたのだ（何度もﾄﾗﾌﾞﾙもあったが…）



ｱﾎだけど実際に仕事はできる人だった｡




またある日､その上司は会社に来なくなった｡


いつものことだと気にしなかったんだが､今度は異常に長かった｡




大酒のみの上司だったので､肝臓を壊して緊急入院をしていたのだ｡




そしてあれよあれよという間に



その上司は亡くなった｡


当時､まだ40代後半だったと思う｡




俺も元同僚もわんわん泣いたな｡


飲みながら｡


身内以外の人が死んであんな悲しい思いをしたのは産まれて初めてだった｡






たくさんの人が弔問に来てて､みんな悲しんでは爆笑ｴﾋﾟｿｰﾄﾞ語ってて､本当に人望があった人なんやとしみじみ実感した｡



ｱﾎやったけど｡



葬式は破天荒じゃなく普通だったのががっかりだった｡




ｱﾎな上司だったけど､､俺たちの仕事は自由にさせてくれて何か問題があれば､ｹﾂを吹いてくれたし


いい仕事をすれば目を細めて喜んで酒を奢ってくれた｡





仕事のことは何も話さなかったけど､生きていく哲学みたいなことはしょっちゅう熱く語ってた｡



よく言ってたのは




『人間は｢情（じょう）｣や｡


仕事ができようが頭が良かろうが｢情｣を失ったら人間はｱｶﾝ｡』



今の年齢になって思う｡


本当にその通りだと思う｡




またｻﾗﾘｰﾏﾝに戻った俺は､今では上司になって部下がいる｡



その当時のｱﾎ上司から学んだ｢情｣を失ったらｱｶﾝって言葉“だけ”見習ってるｗ





どうか俺のかわいい部下たちが本屋でﾀﾞﾒ上司系の書籍に手を伸ばしてませんように★






あ！学んだのは｢情｣だけやなかった｡









｢ええか？おっぱいへの愛撫は乳房やなく乳腺やで～！｣


って言葉もその上司から見習ってる｡