ルビーとオカンの話[ぴかぴか(新しい)]
40代前半  大阪府
2014/05/13 0:57
ルビーとオカンの話[ぴかぴか(新しい)]




俺はおかしな少年だったという。





どこがどうおかしかったのか自分では自覚もなくまったく記憶にないのだが




証言は母親だけではなく親戚も口をそろえて



「へんてこな子だった」と言うので、だいぶ変な少年であったことは間違いないだろう。





話を聞くと幼少期の俺は感情を外に出さず、友達も作らず



無表情に一日中ぼーっとしてて



やっと話したかと思うと人間ではなく植物や動物と話してたりしてたらしい。





いいように言えば


ものすごくファンタジーな少年だったのである。







そういえばあっちこっちの病院で脳派の検査をさせられたり、変なテストをさせられたり



あげくのはてに祈祷師に拝まれまくったり





幼いころの記憶を辿ると俺を取り巻く環境は何やらいろいろあったみたいだ。








「りょうまは複雑な家庭環境で育ったからしゃーないよな」


周りの大人たちはそう言っていたが、当時の俺は特に何とも感じていなかった(と思う)






小学生に上がるか上がらないかの頃、俺は母親に引き取られ育てられることになった。






ちなみに父親はいない。





シングルマザーとして、たった一人でこんなおかしな子を育てたのだ。



そりゃあ大変だったはず。

その苦労たるや察するに余りあるものがある。







引き取ったはいいが、へんてこな俺を何とかしようと母親なりに一生懸命、考えていたんだろう。







ある日のこと母親が俺に聞いてきた。





「りょうま、ペットを飼おうと思うけど








“犬”と“馬”どっちがいい?」









オカンがなぜ馬をペットのカテゴリーに入れたのか理解できなかったが





とにかく馬に乗って買い物に行くオカンの姿だけは見たくないから




迷わず「犬」と答えた。







だけども俺の目の前に現れたのは「犬」では無く、




つがいの「セキセイインコ」だった。





当時、住んでいたボロアパートで犬は飼えなかったそうである。






当初はそのつがいのセキセイインコを前にしても俺は関心を示さなかったそうだ。





俺に変化がおこったのは、




そのインコが子ども産んだ時だったという。







産まれてきた雛は、全身が真っ黄色で目が赤いので「ルビー」とオカンが名付けた。







さすがに雛から育てたので人に良く慣れていて家の中で放し飼い状態で飼っていた。







家の中ではルビーは常に俺の頭か肩に止まっていた。






俺が外から家に入ると、どこからともなくバタバタ飛んできて俺の肩に止まる。




俺は常に無表情だったそうだが、



いつしかルビーといる時だけ、たまにニヤっと口元だけ笑っていたんだって。





俺とルビーは、大の仲良しになっていたのである。








そんなある日の夏。






俺とオカンが外から帰ってきてもルビーが飛んでこない。




名前を呼んだらすぐに飛んでくるのにどうしたんだろうと俺とオカンは部屋探した。






そして台所の方でオカンが悲鳴をあげた。









ルビーは台所の床で冷たくなっていた。










泣いた。





この時のことはめちゃくちゃ覚えていて、




もう悲しくて、悲しくて…




これでもかって声を張り上げてずーっと泣いた。





オカンも泣いていた。





これは大人になって聞いたのだが



もちろんオカンはルビーが死んで悲しかったのもあるが





何より俺を引き取って初めて見る俺の人間らしい「感情」に、ただただ涙が止まらなかったんだって。






俺はルビーの死がただただ悲しく



母親は悲しくも、嬉しく






一晩中、アパートの一室で抱き合いながら母子でワンワン声を出して泣いた。








うーん、本当は今日は



「ひとりでフェラをするためにヨガを習う男」


ってテーマで日記を書こうと思ってたのだが


今日は少し遅れて母の日のお祝いをしてて、焼き肉を食いながら久々にオカンと「ルビー」の話になったので書いてみることにした。







あれから30年。




今でも「へんてこな人」と周りから言われてて、結局は「へんてこ」には変わりない。





だけど今は友達もたくさんいて、へんてこなとこを生業にして何とかご飯を食べることができている。




母親には、ただただ感謝の気持ちしか出てこないな。






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