電車に乗ってて



登山用の服にピッケルみたいなのを持って意気揚々と「今から山に行ってガシガシ登るんですわ」的なご老人に、席を譲るべきかどうか悩んでたら




乗り過ごしそうになった、りょうまです。






電車の席を譲るのって難しい。






基本的に母親の教育哲学として



「女子には優しく、老人は大切に」
と徹底的に叩き込まれてきたので、



電車の中でお婆ちゃんを見ると「どうぞ！」って席を譲るのは俺にとっては、ごくごく当たり前の行為なのである。






「難しい」というのは
その行為を相手がどう受け止めるかなのである。






電車の中で立っているお婆ちゃんがいたので、

良かれと思って「どうぞ！」と席を譲ったのに






「けっこうです！」って
ピシャリと言われた。





車内がシーンとなった・・・



譲った俺も断った婆ちゃんも
双方に気まずい。







いるのだよ。



高校生のチンコのように、



ずっと立っておきたいお婆ちゃんが。







足腰の健康維持のために
座らずに立っていたい老人にとって


「席を譲る行為」は、ありがた迷惑なのであろうか。






極めつけは、「どうぞ」って席を譲ると



「あのね、そんなに年はとってないんやけどね！！」ってキレられたこと。






顔を見る限り「老人」だった。


実年齢は若いのだろうか…失礼なことをした。




思わず「すいません」って視線を胸元に移すと







乳年齢的には７５歳だった。




やっぱり、ババァやないか！！！


（俺の目では、実年齢は誤魔化せても乳年齢はウソを付けません）






ギリシャ悲劇の最高傑作と言われる


ソポクレスの「オイディプス王」という話がある。






登場人物が「良かれ」と思ってした一つ一つの行為が、結果的に結びついて、悲劇となる話なのだが、



えてして生きているとこういう場面に出くわすことが多い。







俺が前に住んでいた場所は、街灯も無く薄暗い道だった。



ある深夜のこと―






一杯飲んだ帰り道に自転車に乗って家に帰っていると俺の前に仕事帰りっぽいリクルートスーツに身を包んだ女性が自転車を漕いでいた。






その女性はしきりに後ろにいる俺を気にして何度も振り返る。





ものすごく警戒しているのである。






無理もない。





深夜の薄暗い道で、後ろから男（俺）が自転車で近づいてくる。





か弱い女性にとってこれ以上の恐怖は無いだろう。







可哀想だから女性を追い抜いてあげようと俺は自転車のスピードを上げた。






すると女性もスピードを少し上げた。





（追い抜いて上げようと思ってるのに…）俺はさらにスピードを上げる。





負けじと女性もスピードを上げる。





俺もスピードを上げる・・・・







気が付けば、深夜の薄暗い下町で









猛スピードで立ち漕ぎをする、女性と俺。









客観的には「女性を追いかける変質者の図」である。






俺も酔ってて意地になってたから追い越すためにｺﾞｲｺﾞｲとペダルを漕ぐのだが女性を追い越せない。






学生の頃に体育の授業を見て女子の運動能力の無さを笑ってた男性諸君。








実は本気になった女の運動能力はすごいです。





俺はクロスバイク型の自転車なのに、ママチャリの女性を追い越せないのである。







逃げる女性と、追いかける男。







このままじゃ危険だと察した俺は、



女性を追い越すのを諦めてわざわざ家まで遠回りになるが、角を曲がって住宅街に入ってあげた。





（これで女性も安心するやろ）





自転車を漕いで酔いがさらに回って吐きそうになりながらも良いことをしてあげたと、次の角を曲がると、






なんと！！




俺の先にいたはずの逃げた女性と



正面でバッタリ出会ってしまった。








つまり女性の方も俺から逃げ切るために角を曲がって住宅街の方に入り、クネクネしてるうちに


その曲がった角の先に俺がいたものだから、かなり驚いた表情を見せたあと―







「キャー！！」と大声で叫んだ。






男性諸君。

女性は本当に困ったら




映画やドラマのように「キャー！！」って叫びます。







深夜の住宅街で絹を切り裂く女の悲鳴である。





俺は逃げました。



何もしてないけど




とりあえず全速力で逃げましたとも。






だけど完全に激しい運動のおかげで酒が回ってることもあり、


猛スピードで自転車を漕いだままマンションのゴミ捨て場みたいなところに突っ込んでしまい






買ったばかりのＧパンはビリビリにやぶれ、膝を擦りむいて流血、肘は８針縫う怪我を負う結果となった。



この日の俺の行動の結果



①女性を恐怖のどん底に落とした。


②俺が流血するほどの怪我を負った。


③深夜に女性の悲鳴が聞こえ近隣住民に不安を与えた。




良かれと思ってした俺の行動は誰一人として幸せにならず悲劇を生んだのである。






ただ、ただ、である。





良かれと思ってした行動が結果として裏目に出ることはあるにしても




少なくても自分が相手にとって「良かれと思って」行動した事実には、何も恥じることなく胸を張りたいなとは思うのである。






俺は相手が良かれと思ってしてくれたことに関しては、結果はどうあれ、全面的に嬉しく受け止めている。






仕事でも、後輩や部下が良かれと思ってやった行動へのミスは、なるべく咎めないようにしているのだ。





ミスが怖くて「何も行動しない人間」になってしまう。



実はこれが一番つらいのである。








昔の話だが






「ちょっと変わったセックスがしてみたい」


って言う性趣向が豊かな女のために、たまたま仕事で中国に行った際に仕入れた






「ムキムキマシーン１０号」的なネーミングの大人のおもちゃ。





通訳曰く、中国4000年の歴史が誇る最高のおもちゃだそうで、どんな女も落ちる媚薬も一緒にサービスでくれた。









そして良かれと思って




ムキムキマシーン１０号を彼女に試した結果―。









「イテ（痛）～っ！！」




って大声で叫んでキレながら帰った夜以来、


彼女が俺の前で笑顔を見せることは2度となかった。







良かれと思っても、




中国の大人のおもちゃは、まったく良くないらしいから気をつけるように。