朝から号泣している女性を見たのだが

朝、信号待ちしてたら

自転車に乗った若い女性が大声で号泣しながら俺の前を通り過ぎた。

俺はびっくりして眼で追っていたら

横にいた、見知らぬおばちゃんも唖然とした表情で自転車の泣いてる女性を指さしして

「…朝から何が悲しいことあったんやろね」

と語りかけてきたから

「…まぁ若いから悲しいことも色々あるんやろね」

と返した。

「年取った方が悲しいことは多いのに…」

白髪だらけのおばちゃんは、ため息をつくとそのままオバチャリにまたがって信号を渡った。

朝から号泣して通り過ぎていく女性。

彼女の身に何が起こったのかは知らないけど

「羨ましいな」と正直思った。

身体に溜まった物を外に出すのは本当に気持ちがいい。

オシッコしかり、ウンコしかり、汗しかり、精液しかり。

そして涙もそうだと俺は思う。

前に何かの本で読んだことがあるんだが、

毎晩、赤ちゃんの夜泣きが酷くて困っている夫婦がいて、その原因は何なのかを考えていた。

実は大声で泣くという行為は赤ちゃんにとってはストレス発散になるという。

だけど親は赤ちゃんが泣きだすと、抱っこしたりあやしたりして泣き止むまで必死に対応する。

実はこの行為は親が赤ちゃんのストレス発散の場を奪ってしまっていることになるので

赤ちゃんはストレスが溜まり続け毎晩泣き続けるという悪循環が続く。

ある夜、親にとっては辛いけど赤ちゃんが泣いても黙って放置することにした。

泣き続ける赤ちゃんはやがて泣き疲れて眠る。

おもいっきり泣いてストレス発散した赤ちゃんは、次の夜からスヤスヤ眠るようになったらしい。

なるほどな、と思った。

感情の起伏が激しくよく泣く人は周りに何人か知ってるけど

泣いた後は本当にすっきりした表情で気持ちを切り替えている人が多い。

「泣いてすっきりした」という言葉があるように

きっと人間は大人になっても泣くことが必要なのである。

だけど

汗は運動やサウナで流すことはできる。

精液もセックスやオナニーで出すことはできる。

ただ涙を流すとなるとコレが非常に難しい。

年を取ると涙腺が緩むというけど、あれはウソだ。

俺は泣けない。

正直、これまでの人生辛いこともあったはずだけど基本的に根っこがポジティブなので、まず泣くことはない。

でも泣きたいので「今日はいっちょう泣くか！」と悲しい映画やドラマを見ても

どこか制作者の「泣かそう」という意図が感じられてしまい泣けないのである。

日常で運よくウルって場面に遭遇しても、もう一人の俺が俺の意識から離れて

「あれ？お前泣くの？」

みたいな感じになるので素直に泣ける感情に没頭できないのである。

じゃあもっぱら俺はどこで泣いているのか―

夢の中で泣いているのである。

夢の中で何らかの悲しいことが起こり、声を出して俺は泣く。

朝起きると枕は涙で濡れてるんだけど、どこかスッキリしてる。

たまに夢と気づくこともあるけど、気持ちいいのでそのまま泣き続けることもある。

だけどもここ最近は夢の中でも全く泣かなくなった。

男は「最近、溜まってて、金玉ﾊﾟﾝﾊﾟﾝ」って言う人もいるけど

涙の場合はこんな表現でいいのかわからないが、溜まりすぎて「涙腺」がパンパンになっていたのである。

そんなこんなで最近、泣いてないなぁって思ってたら、つい先日、こんな夢を見た。

アフリカのサバンナのような広い高原で、見知らぬオッサンが裸で四つん這いになっている。

そのオッサンの後ろにエプロン姿の野村沙知代そっくりなババァが立っていて

手に持っている「お玉」で、四つん這いのオッサンのケツをおもいっきり叩いている。

叩かれる度にオッサンは、「ひー」って悲鳴を上げる。

俺はその光景を見て

涙が止まらなくなった。

若い頃に溜まりすぎて、

内田裕也そっくりな女とセックスしようしたことがあるんだが―

ようするに精子も涙も溜まってたら何でもいいのである。

お玉でケツを叩かれヒーヒー言ってるオッサンが可哀想で悲しくて…

俺は声を出してワンワン泣いて、目が覚めたと同時に大爆笑した。

本当に朝からすっきりさせてもらったのである。

みんなも何か悲しいことがあって泣きたいときは我慢せずに大いに泣いたらいいと思う。

全部出しきったら、きっと次の日は頑張れるから。