女にモテるためにどうすればいいのかをずっと考えていた。





オッサンになってその衝動は軽くなったとはいえ俺が男である以上、ずっと女にモテることを考えている。







『女がいなかったら、男は神のように生きていくだろう。』というデッカー「正直な売春婦」の名言もあるように




女がいるから男は、こうも情けなく煩悩に苦しめられなければいけないのである。





女なんか消えてなくなれ！！！！





嘘です。



女の人、大好きです。







さて「とにかく女にモテまくたい！」ってのは男の偽らざる本音である。




とりわけ20代の頃は異性のことで頭がいっぱいだった。




男はみんなモテたいがために各自が色々な創意工夫をしていたのだ。





その「モテたい」仲間の中でも特に目立っていたのが「Ｙくん」だった。






Ｙくんは20代半ばにして、ぽっこりお腹のムーミン体型。


さらに全身毛深いのに頭髪だけが薄く山賊のような風貌。



もうルックスだけで言えば


残念という言葉以外は見つからないような男であった。








しかしＹくんは持ち前のガッツと負けん気で仲間内の中でも一番モテるための行動を実践していた。







彼は当時、若い男性を対象にした「ホットドッグ・プレス」っていう雑誌に掲載されている


モテる男になるための恋愛マニュアルみたいな記事を定期購読をして毎月穴が開くほど読んでいた。







だけども、残念なことにその行動すべてが―








キモかったのである。



そのキモいエピソードは無数にあるので少し紹介すると




ある夜に合コンで解散をする時に女の子達がタクシーに乗った。





俺を含めた男達は見送りしてたのだが、Ｙくんが助手席に乗っている女の子に向かって窓を開けろってジェスチャーをしている。




女子が「？」って顔で窓を開けると





Ｙ君はヌっと窓から上半身を車内に入ると


女の子のおでこをポーンと指で押して



「今日は本当に楽しかったぞ」


と女の子の頭をクシャクシャと撫でた。





その瞬間、現場が凍った。




女の子は唖然としてた。





無言で走り去るタクシーをＹ君は満足そうなドヤ顔の微笑を浮かべたまま見送った。





本当にキモかった。




さすがに俺はＹ君に注意した。



「何言ってるの？女は男に頭を撫でられたら嬉しいんだって」って物知り顔で言い返された。




たぶん「ホットドッグ・プレス」に載っていたことだと思った。






その後も、Ｙ君の頭クシャクシャは続いたらしいがある日、合コン中にものすごい大声で女子にキレられてから封印したらしい。






あと彼は女がいる時の煙草の吸い方も異常なほどキモかった。



これも恐らく「ホットドッグ・プレス」に載っていたことだと思う。



モテる煙草の吸い方特集みたいなのがあったらしいのだが、




Ｙ君の吸い方は


斜め上目線のキメ顔で煙草を吸い込むと、

急にキリっと目を見開いて煙をモワーっと吐く。




そのキリっと目を見開くときに「白目」になるのだ。




キモい顔で煙草を吸っては白目を向いて煙を吐く。




もうモテる煙草の吸い方というより






麻薬を吸ってる不動産屋の社長にしか見えなかった。







同じような感じで、女がいる時の車の運転もキモかった。



車庫入れ時のキメ顔が煙草の時と同じキリっの目だから、ところどころ白目になっていて本当に後ろが見えているのか、ひやひやしたのである。






女とバーベキューした時もキモかった。




一人だけ少し離れたところの切り株に座って何やら奇妙な動きをしている。



俺は観察しててすぐにわかった。





恐らく「ミュージシャンはモテる」というのを「ホットドッグ・プレス」で読んだのだろう。





まったく楽器を弾けないくせに。


一人でエアギターをしていたのだ。






みんながワイワイ肉を食ってるのに



ひとり涼しい顔でエアギターをしながら鼻歌を歌っている。




本当にキモかった。




当然、誰ひとり「音楽やってるの？」と近づく女子はいなかった。





ある日のこと。





Ｙ君が真っ黒に日焼けしていて


胸元を開けたシャツに派手な金色の矢印のネックレスをしていた。




胸元まで伸びたネックレスの矢印の「↓」の先に目をやると






胸毛が見えてた。






これについてはさすがに「ホットドッグ・プレス」に載っていないと思う。




「俺の胸毛を見ろ」アピールだと思うが

今でも彼が何を思ってかっこいいとしたのかまったく理解ができない。






ここまでＹ君のキモさを書かせてもらったが、じゃあ俺はどうなんだ。






Ｙ君からしたら





モテると思って深夜に出会い系サイトでせっせと日記を綴る俺の方が


もっとキモいと思ってるはずである。





女さえいなければ


俺もＹくんも神のように生きてたはずなのです。





とりあえずこの日記を読んだ女性は金色の矢印ネックレスでおっぱいの谷間をよろしくお願いします。

（キモい発言も全部、女が悪いのです）