髪を切りに行くことにした。




ＧＷ中もずっと仕事だったので、出張先で時間が空いたのでとある美容店に入った。





ほとんどの人は、毎回馴染みの店で髪を切ると思うのだが



俺はここ数年はその日その日に時間の空いた時に、たまたまそこにあった店に思いつきで入る。






外出する時ほとんど帽子をかぶるので、
基本的にヘアスタイルに強いこだわりなはい。






カリスマ美容師のいる店とかよく聞くけど

俺にとっていいい美容院の基準とは










シャンプーの時に、女性美容師が肘や太ももにオッパイを押し当ててくれる店。



これ以外はどこも同じようなもんだと思っている。







俺が出張先で入った寂れた美容院は、


坊主頭の上にメガネを乗っけた中年美容師が1人だけだった。




「おまかせで！」




めんどくさがりの俺はとりあえず「おまかせ！」と言うようにしてる。






「わかりました！」


その中年美容師は俺の髪を触りながら








「ボウズとかどうですかね？」



「ボ、ボウズ！？」








思わずうろたえてしまった。






性病にさえかかったことがない善良な俺が

何を反省してボウズ頭にしなくちゃならないのか。







大人のボウズ頭は何かしらの罰だと思ってる俺は、

おまかせと言いながらも「ボウズ頭」を拒否した。




中年美容師のがっかりした表情が鏡越しから見てとれた。




あまりにもガッカリしてる様子なので


可愛そうになった俺はボウズについて聞いてみた。






ボウズをゴリ押ししてくる中年美容師の「ボウズプレゼン」を聞いてから決めようと思ったのである。








何でもボウズはボウズでも「おしゃれボウズ」と言って、大人のボウズ頭も一つのジャンルとして確立されているらしい。






「だいたい長さは８ミリが多いんですけど、


５ミリだとちょうど「海老蔵」になりますね」




「はぁ海老蔵・・・」







ちょうど海老蔵と言われても、



それほど海老蔵をじっくり観察したこともないので

ちょうど具合が良くわからない。








「前髪は〇〇くらいの長さだと・・・




う～んだいたい海老蔵ですね」




だいたい海老蔵がわからない。




何かとちょいちょい海老蔵をはさんでくる。





んで、そのまま話を聞いていると



「海老蔵のケースは・・・」


「海老蔵だったら・・・」






なぜか、ボウズ具合の基準をずっと「海老蔵の基準」で話してくるのである。







今ままで海老蔵を意識したこともないので


海老蔵基準がまったくピンとこないのである。







「すいません…よくわからないんで



今日は全体を揃える感じでカットしてください」





中年美容師は、終始仏頂面で俺の髪をカットした。



よほど俺をボウズにしたかったんだろう。







お金を払う時にレジの壁を見ると、額にサイン色紙がかかってあって





その色紙に添えてある写真は満面の笑みを浮かべた中年美容師と若い海老蔵のツーショット写真だった。







過去に海老蔵の頭をボウズにしたことがある美容師。






やたらと海老蔵、海老蔵と言う理由がわかった気がした。




きっと過去の栄光に縛られた美容師なのである。






知人のＡ子は３７歳で独身。





いつもコンスタントに彼氏はいるのだが、なぜか長続きはしない。




その理由は明確であった。







付き合った彼全てに「元カレ」の基準を押し付けるのだった。



「元カレはこうだった…」



「元カレはこんなことをしてくれた」





Ａ子の１０年前の彼氏は、まだ駆け出し中の某イケメン俳優であった。






売れるようになってそのイケメン俳優に捨てられる形になったＡ子だったが


その後にできた彼氏はすべて「イケメン俳優」基準で相手に要求してきた。






一般人が人気俳優基準で立ち居振る舞いを要求されるとたまったもんじゃない。



どんどん男がＡ子から離れてしまったのである。





１０年経った今でも「あの時元カレはああだった、こうだった」ととにかく五月蠅い。






海老蔵の栄光に縛られボウズをゴリ押ししてくる寂れた美容院の店主。




俳優の元カノという栄光に縛られ今の彼氏と長続きできないＡ子。





何だか似てるなぁと思った。



過去に縛られて基準を要求するのは悲しい話である。





結局、俺はできあがったヘアスタイルに満足できなかった。





いや、ここ数年くらい美容院で満足したことがない。






だって過去に俺が通ってた店にいた美容師の「ミクちゃん」は、ぐいぐいオッパイを俺に押し当ててくれたんだもの。






だいたい女性美容師は絶対に客にオッパイを押し付けなきゃダメだと俺は思う。






だってミクちゃんはオッパイを・・・



だってミクちゃんは俺にオッパイを・・・