超出っ歯の女をお持ち帰りした結果

俺はいたって真面目に話しているのに、仲間に笑い飛ばされる話がある。

学生時代に、サッカーに夢中になっていた俺はある日、腰を壊してしまった。

ずっと腰に違和感はあったんだけど無理をしながら練習をしていたのがたたったのか、シュートを打った瞬間に俺はその場に崩れ落ちてしまった。

激痛で動けない。

１人で歩けないので何人かに支えてもらい病院に行った。

腰の筋やらが大変なことになっていた。

３か月間くらい大きな整形外科に通ったが全然良くならない。

医者には「もう腰を使った激しい運動は一生できないかも」とまで言われた。

俺はかなりのショックを受けた。

そんなある日、知人から「東洋医学」を進められた。

「テレビにも出たすごく有名な接骨院があるからダメ元で行ってみたら？」

藁にもすがる思いで行ってみることにした。

（ここ大丈夫か？）

って思うほど古い民家のような接骨院。

俺は不安な気持ちのまま汚いベッドの上で天井を見ていた。

そこに青い法被を着て頭にタオルを巻いた
見るからに胡散臭い髭もじゃの男が現れた。

（この人が有名な先生か…）

俺はさっそく腰の状態を説明しようと思った瞬間、

先生は「シっ！」っと指を口にあてて

「大丈夫！聞かなくても貴方の悪いとこはわかるから」

先生はＯリングテストと言うのか？

俺の身体に一切触れずに、俺の頭から足先まで全身に人差し指を突き立てる仕草をする。

そして１０分後…

「悪いのは腰やね？」

先生はニヤリとした。

ご名答。

しかし口で説明したら１分で済んだのに・・・

と正直思った。

そして治療が始まった。

痛いのは腰である。

しかし入念に俺の足首に針を打つ、そしてひざ裏。

まったく痛い患部（腰）に触れずにずっと足首ばっか治療するのである。

（大丈夫なのかこの人は？）

先生は「立ってみなさい」と促した。

恐る恐るベッドから降りて立ってみた。

「腰が痛くない・・・」

俺は久しぶりにその場でぴょんぴょん跳ねてみた。

「痛くない・・・」

そこからしばらくこの接骨医に通った。

西洋医学では「腰を使った激しい運動は２度とできないかも」と言われたが

東洋医学の力で俺は

サッカー選手として復帰でき、

一晩で３発までなら腰を使った激しい運動ができるまで回復した。

しかしひとつ疑問があった。

なぜ痛かった患部（腰）に触れずに治療できたのか。

東洋医学でも痛い場所に電気や針を打つ治療が多いではないか。

先生は言う―

東洋医学でいうツボは３６５の数がある。

ツボを刺激して身体の機能を正常に保つための治療は、約2,000年前から中国ではすでに完成されていた技術なのである。

内臓の悪い人は足の裏のツボで直したり、首の悪い人は足首のツボ・・・

直接、患部に触れなくてもツボで身体の機能を正常に保たせるというのである。

東洋医学スゲー！！！

しかもこのツボの数、３６５ってのは俗説では、古来から1年の日数になぞられ365穴とされてるみたいで

本当はまだまだ未知のツボがたくさん存在するという。

そこから月日が流れたある日のこと。

俺は毎週のように合コンに参加していた。

この夜、俺の前に座っていた女は、今まで見たことが無いほど「超出っ歯」なのである。

明石家さんまや久本雅美どころのさわぎではない

例えるなら

『肉食植物』

彼女がニュっと笑うたびに

「ヒっ、喰われる！！ (；ﾟДﾟ)」

と思ったものである。

しかしお酒って不思議な力を秘めているもので

俺はその肉食植物を

お持ち帰りすることになってしまった。

俺って大雑把に言ってしまう酔えばだいたいの女は大丈夫な男なのである。（えっへん）

さすがに咥えてもらう時は、昆虫のように緊張で全身が硬直したが、そこそこに上手だったのには心底驚いた。

しかし本当に驚いたのはここからである。

コトを終えた直後、男にはお馴染みの後悔の波が押し寄せる賢者タイムの時間である。

ぐったりとベッドに横たわる肉食植物の顔を何気なく見ると

さっきまで『超出っ歯』だった彼女が

『普通の出っ歯』になっていた。

俺は驚いてベッドから飛び起き、近くで見てみた。

やっぱり歯が引っ込んでいる。

（こ、これは…）

俺はあの頃に受けた東洋医学の言葉を思い出した。

『直接、患部に触れなくてもツボで身体の機能を正常に保たせる』

きっと

子宮に出っ歯を治すツボがあるんだ。

この話をしても笑って誰も信じてくれない。

ただ俺は今でも出っ歯の女を見ると

「この女は最近、セックスしてないな」

と思っている。