古くから俺の日記を読んでくれてる人は知ってると思うが、俺にはヨシという幼馴染がいる。






小学校2年生からクラスは違うのにウマが合って友達になり、もうかれこれ30年の付き合いになろうとしてる。






さすがに今では頻繁に会うことは無いのだが




お互いが会いたくなると定期的に連絡し合って飲みに行ったりする関係である。








このヨシという人物。



小学校の頃まではとても美少年な男であったが









今では、デブでハゲで変態でニートでアル中で、糖尿で痛風で水虫で…





まぁ、どこに出しても恥ずかしい、
どうしようもないダメ人間である。








なぜこんなどうしようもない男とずっと付き合ってるのかというと、そこには理由があって









まず一つは、お互いがお互いを

自分より下だと見下していること。









落ち込んだ時に、自分より下の人間を見ることで

自分はまだまだ大丈夫！と
「優越感」を得て元気になれるからである。





だから辛いことがあった日なんかは
真っ先にヨシの顔が目に浮かぶもの。






悲しいかな、なんで俺がヨシみたいな男に
下に見られなアカンのかと思うのだが




「それはこっちのセリフや！」と言われるので、
それはそれで個人の主観として仕方がないかなと思っている。







もうひとつの理由は、俺がヨシを飽きないからである。







ヨシはいつも俺の考えを飛び越えた行動や言動をする。






それがたまらなく愉快なのだ。








男も40年近く生きてきたら、ある程度は人に悩みを相談するにしても、その悩み事に対する返答が予想されるものである。






女性にもよくあることだが、
悩み事の解決法はすでに自分の中で決めているのに




背中を押してもらいたいがために、あえて返答が予想できる相手にだけ相談したりして茶番を演じる。






同じように男も中年になると傷を付きたくない防御本能から、返答が心地よい相手に相談して自己正当化し満足してしまう。







まぁそれはそれで俺はいいのだと思う。







お互いを高め合って成長しあい、間違ったことを正し合う関係こそが本当の友達なんて誰が決めたんだ。






お互いが傷口をベロンベロン舐め合い、





俺よりも下の奴でも頑張って生きているんだと見下しながら明日の活力にする関係もアリではないか。








ところが幼馴染のヨシは少し変わっている。





相談ごとへの返答の予想がまったくできないのである。






すべて俺の予想を飛び越えてしまう男なのである。







それが飽きなくて楽しいから30年も関係が続いているのだ。










そんなヨシの話。



先月、久しぶりにヨシと飲みに行ったのだが







深刻そうな顔で「便秘」が続いていると相談してきた。





2週間も便が出ていないらしい。






「洋式便所に座ってさえいたら、俺は半永久的にメシ食えるで！！」



って焼き肉の食べ放題で豪語するほど快便のヨシがこれだけの期間、うんこが出ないのは初めての経験らしい。








昔の上司が便秘が続いた結果、大腸がんと診断されたこともあり


心配になった俺はすぐに病院に行くことを勧めた。






しかし「嫌だ！！」とかぶりを振って拒否するヨシ。





どういうわけか聞いてみたら











「出産した後の多幸感を味わいたい」

と言うのである。








俺の考えを飛び越えた。



いや俺の考えだけではない。




ヨシは独身である。






結婚して夫の幸せを味わいたいを飛び越え―






子どもが生まれてパパの気持ちを味わいたいも飛び越え―








まさか



女性の妊婦の気持ちを味わいと来るとは思わなかった。









「男は妊娠することないから子どもを産む体験はできへんやろ？


ただ、ここまでお腹の中にウンコを貯めてそれを一気に排出する時って・・・



たぶん妊婦が感じる多幸感や超越的満足感に近いものを得ることができるんじゃないかな？」







この機会だから、できるかぎり便秘を続かせて、一気に排出したい考えらしい。






一度言いだすと聞かない頑固な性分もヨシである。




「俺、産みたいねん」



勝手にしろ！と思った。





飲んでても定期的に襲ってくる腹痛に、ヨシは苦痛に顔をゆがめ
脂汗を流し、素人目から見てもわかるパンパンに張ったお腹を優しくさすりながら






「なぁ、りょうま、陣痛ってこんな感じなのかな？」







知るか！って思った。










そこから数日経過したある日の明け方に



ヨシからＬＩＮＥが送られてきた。








どうやら








無事に産まれたそうである。











「おめでとう。大きい？」って返したら






「たぶん4500ｇくらいあるんじゃないかな」


すごく立派なウンコだ。







ワインのコルクのように固いウンコが肛門に蓋をしていたのが便秘の原因らしく




コルクが抜けたとたんにすごい勢いでウンコが出たそうだ。







「多幸感あった？」って送ったら







「全然無かった。



感慨なんて余裕もなく恐ろしい腹痛の中、無我夢中できばっただけ」







「案外、出産ってそんなもんかもしれんよ」





「かもな」







「んなことより、りょうま・・・













流れないんだけど、ウンコ」






知るか！って思った。







結局、洋式トイレになみなみと溜まったウンコを

何日間かかけて小まめに流しきったそうだ。







こんな奴でも今日を生きてるんだ。



大丈夫、みんなも頑張ろうよ！！