「空き巣に入られた~」オカンと俺の物語[むかっ(怒り)][パンチ][ダッシュ(走り出すさま)]
40代前半  大阪府
2016/04/26 12:38
「空き巣に入られた~」オカンと俺の物語[むかっ(怒り)][パンチ][ダッシュ(走り出すさま)]




日曜日の早朝にオカンから着信があった。





何事かと思って飛び起きた。










「空き巣に入られた~!!」




電話越しでも相当オカンがパニックになっているのがわかる。





慌てて実家に行ってみた。








実家に着く。(すごく近いのだ)






実家は下町の民家なので昔ながらの横開きのドアなのだが、完全にバールか何かで鍵が強引に曲げられドアがこじ開けられていた。







ただ開いていたのはすごく細い隙間。




一反木綿のような空き巣犯である。




ともかくドアを外して現場に入って見た。








空き巣コントのセットようにベタに荒らされた部屋。







まずはパニックになってるオカンを落ち着かせ話を聞いてみた。




オカンは2階の寝室で寝ていて一階の和室がこのように荒らされていたことさえ気づかず朝に起きてびっくりして俺に電話をかけてきたそうだ。






警察に電話をした。






しばらくするとぞろぞろと数名の警官が我が家にやってきた。




そして実家の中で刑事ドラマで見るような光景が始まった。






家の荒らされたタンスや化粧台などを鑑識の人が写真を撮る。指紋を調べるポンポン棒を持った人もいた。






見慣れた家の中で警官がわらわらと現場鑑識するイベントなんて一生にあるかないかである(もちろん無いにこしたことはないが…)





ただ見慣れた家にいる警官たちを見ると白昼夢を見てる気分でオカンも俺もなんだか心が高揚しているのがわかった。







鑑識の写真係りの人がやって来て、明らかに犯行が示唆されている箇所の現場写真は被害者が一緒に写らないといけないと説明された。







乱雑に開けられたタンスの引き出しの横に被害者が立って指をさす。そんな写真を撮りたいというのだ。








昔からオカンは写真を撮るのが大の苦手で極端に写真が少ない。





理由は写真は照れて照れて仕方がないらしいのだ。








警察:「これは、撮らなアカンもんですから協力頼みますわ」




空けられた引き出しに指をさして立つオカン。






顔を見ると








もじもじしながら下唇を噛んだハニカミ笑顔だった。






それを見た俺はさすがにNGを出して撮影中にダメ出しに入った。



まるでグラビアアイドルの敏腕マネージャーさながらである。








俺:「写真撮るのに今の顔はアカンやろ?」




オカン:「どんな顔したらええのん?」






俺:「・・・やっぱり、被害者だけに




「やられた~」って肩を落とした悲しい顔ちゃう?」






オカン:「そんな顔、うちようできへんわ」





警官:「もう顔とかどうでもいいんで続きいいですか?」






その後も、もじもじして照れ笑いを浮かべながら写真を撮られるオカン。





ものすごくシュールな絵ではある。









そこに年配の警官が事情聴取にやってきた。





盗まれた金銭や物品などを聞いてきた。




被害額は現金は1万円程度。






あとは腕時計やアクセサリーなどであるが、基本的にかざりっ気のない人で高価な持ち物は何もなく、あっても古いものばかりである。






その物品のひとつひとつの価格はいくらぐらいか聞いてくる警官。







そんな古い物の値段なんかわかるはずもない。





警官は「だいたいでいいんです」という。








被害額って言い値みたいなとこがあるみたいで、いくら価格がわからないものでも




もし人に売るなら○○円で売る。ってな具合に盗まれた物品の被害額は決められるらしい。






被害総額ってのもずいぶんいいかげんなものだ。









しばらくするとオカンと警官が押し問答をしている。




何事かと思って話を聞くと






オカン:「あれは値段は付けれません・・・」







警官:「だいたいでいいんです・・・」






オカン:「ほんまに付けれないんです・・・」





警官:「困ったな・・・」





オカンは盗まれたあるアクセサリーには値段が付けれないとゴネてるのである。




「売るなら○○円」という言葉が頭にひっかかってて生真面目なオカンは額面通りに受け取り、売れないから値段が付けれないというのである。







「値段は付けれないです」




値段を付けれないアクセサリーとは











死んだ婆ちゃんからもらったネックレスのことである。










9人家族だったオカンは極貧家族であったが、お婆ちゃんは嫁入り前のオカンにせめて何か買ってあげたいと機械油が染みついたシワシワの手でネックレスを付けてくれたらしい。






安物とはいえ当時の経済状況では、お婆ちゃんがそれを買うのは相当、大変だったはず。





俺が20歳の時に涙ながらにオカンが話していたのは覚えている。







「値段が付けれない」



本当にその通りなのだ。









警官:「うーん、困りましたな」





聴取が先に進まない。





見かねた俺はオカンの心のプライスレスも含めて代弁した。







俺:「たぶん100万円くらいやと思います」



と言うやいなや、即座に






オカン:「そんな、せえへんわ!!!!」



生真面目で謙虚な性格なのである。






オカン:「じゃあ2万円くらいで・・・」






婆ちゃんの思い出も意外と安く売るな思った。









捜査も一通り終わった。








「捜査はしますが、空き巣の場合、現行犯以外で犯人が見つかる可能性は極めて低いです。何か捜査に進展があれば連絡します。」



空き巣での犯人逮捕は期待できないらしい。








ともあれ今回はオカンが無事でよかった。









仮にオカンが物音に気づき、空き巣とばったり出くわして危害を加えられてたかもしれないと思うとゾっとする。







盗まれたものは残念としても身体が無事だったのが本当に良かった。








オカンは一人暮らしをしている。





今回の件もそうだけど、急に病気で倒れたり


大阪にいつ大きな地震が来るかわからない。




何よりも年老いた老人がひとりでご飯を食べてるってのは心が張り裂けそうに痛い。





俺はオカンが心配で心配で仕方がないのである。







実はオカンと一緒に住もうと思っているのだ。




奥さんには了承済みだし、家を建てる時に同居も想定していて、オカンにはそれなりの部屋も用意している。







同居になれば嫁姑問題いろいろあるだろうけど、それは俺も一緒に背負って問題から目をそむけずしっかり向き合っていけば何とかなるんじゃないかと思ったりしてる。





あとはオカンが縦に首を振るだけである。(これがなかなか手ごわい…)







最後に壊された玄関のドアの前で鑑識から写真を撮られるオカン。



20枚以上撮ってるのでさすがにこ慣れたのか





小首をかしげた昭和初期風のすまし顔で写真に納まっていた。







(なんや撮られるのも案外嫌いじゃないみたい。)




若いころのオカンの写真は極端に少ないけど


これからは、




孫と一緒に写った写真をたくさん撮ってやろうと思っているのである。


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