週末に友人と天満で飲んだ、その帰り道の話である。







時間は深夜２時ごろ。





いつものようにいつものところでタクシーを止めた。








俺：「○○（自宅）まで、ルートは・・・」




俺は行き先を告げる時にルートも一緒に言うようにしている。





無用なストレスやトラブルを避けるためである。







俺が告げたこのルートはこれまで何年も幾度も同じ場所でタクシーに乗り




ドライバーさんの経験や情報を基にまとめた最も最速で到着する最強ルートである。





しかしこの夜のドライバーはその英知の結晶ともいえる無敵のルートを否定した。




俺はちょっとムっとした。




客の言うルートを否定するのか？






しかし俺は様々な意見に耳を傾ける方である。


そもそも俺が指示した無敵のルートも色んな運転手の情報を元に作られたものである。






現時点では無敵ではあるが、あくまでも“現時点”であり新たないい有益な情報が入ればルートは更新されて然るべきだと思った。







運転手「ワシの知ってるルートだとお客さんの自宅まで一度も信号にはひっかかりません」



ノンストップで我が家に着くの？




俺は我が耳を疑った。



ここから自宅まで距離で言うと１０Ｋｍほど。



深夜なので車がいないとはいえ、大阪市内である。




一度も信号待ちをせずに自宅まで到着することは可能なのか？








しかも、俺はこの世で嫌いなものベスト１０に「信号待ち」が入るのだ。





その情報が本当なら、これまでのルートを根本から覆すかなり有益な情報となる。






俺「にわかに信じがたいですけど、どういうからくりですか？」





運転手「からくりは知りませんが、自分の経験上信号待ちは一度もありません（キリっ」




きっぱり言い切りやがった。






おもしろい。







俺が告げたルートは撤回し、すべてこの運転手に任せることにした。







自宅まで一度も信号待ちが無い？内心ドキドキした。






土佐堀通りをタクシーは走りだした。





本当に驚いた。





走っている道路は大きい道路なのだが、ほんとうに信号が青のままで止まらず突っ走っている。




運転手「このまま先の天王寺まで青のままですよ」





意識しなかったけど深夜の土佐堀通りは素直にすげーと思った。









そして運転手はドヤ顔で逐一



「はい、ここまでまだ一度も止まってませんよ～」と報告する









そして土佐堀通りから中央大通りを左折する。





最も難関は中央大通りだと思う。




まさか中央大通りもノンストップで行けるというのか？






左折した最初の信号は青でクリア





その次の信号も青、その次も青でクリア



今のところノーストップ。



なんだかゲームのような感覚で楽しくなってきた。




しかしここで急展開。




２０ｍくらい先の信号が赤になってしまったのである。




ここまでか・・・





ノンストップは無理だったとしてもここまで楽ませてもらった





俺：「アハハハ、さすがにノンストップはむ・・・？？」





ここで運転手はとんでもない行動に出た。






信号が赤と確認するやいなや急激に速度を落とし始めたタクシー



まるで老人の歩く速度のようなのろのろスピードでジリジリと赤信号に向かっていく。





そして赤信号が青に変わったとたんスピードを上げて信号を通過。






運転手「ここまで、まだノンストップです（ドヤ顔」








いやいやいやいやいやｗｗｗ


完全に信号待ちせなあかんところをスピードを落としただけやん。






結局、自宅まで計７回赤信号にひっかかり、その度に同じことを繰り返した運転手。







運転手「ね、約束通り一度も赤信号にひっかからなかったでしょ？」




どういうわけか、プロのやり遂げた感のある顏であった。




しかも料金がいつものより７００円ほど高かった…





文句？




んなことでは言いません。






怠慢な態度の人には腹が立つこともあるけど、


この運転手は俺の為に頑張ってくれようとしてくれたことは事実である。






俺：「ありがとう！！今日の帰り道はすごく楽しかった」





ただ無敵のルートはやはり変えることはない。