金曜日は会社の人間と飲みに行ったんだけど、ちょうど後ろの席で学生たちが飲み会をやっていた。




何人か女の子も交じってたから無理もないかもしれないけど男子がうるさくて仕方がない。





だけども俺も学生の頃はうるさかったはずだから、ここは堪えることにしたわけです。





学生が20人くらいいたんだけど、その中で特に一人の青年が声も大きくてもううるさくて仕方がなかった。





それがまた面白かったらいいんだけど、絶望的に面白くなくて大声でがなってるだけどの青年。




周りの友人たちはゲラゲラ笑いながら




「あいつ今日はテンションＭＡＸやなぁ！！」と大喜び。





何？テンションＭＡＸだと？





こいつらは人間のテンションがＭＡＸになったらどうなるかを知らない。




彼は元気なだけでテンションは確かに上がってるかもしれないけど、まだまだ「ＭＡＸ」とはいわない。




何故なら彼はうるさいけど、ちゃんと発言と行動に意味があったから。






あれは中学３年生の修学旅行の話であった。





親友のヨシと級友のＡ君と３人で男子部屋から脱出して女子の部屋に乱入するという計画を企てていた。





それはヨシがかなり前から綿密に練っていた計画であった。





そしてＡ君。


彼はすごく真面目な男の子であった。




家が非常に厳しく、１５歳になるまでお泊りは一切許してくれなかった。





小学校の宿泊行事は高野山だったんだけど、家庭の大人の事情で参加できなかった。



その後の学校宿泊行事は盲腸になったり熱が出たりとことごとく参加できなかったらしく




今回の中３の修学旅行が生まれて初めてのお泊りの行事だったという。





ものすごく不憫に思ってしまった・・・






「お前にとって忘れられない夜にしてやるよ」



女子部屋への乱入にＡ君を誘ったのは俺である。






ヨシが綿密な計画を発露する。




担任の見回りの時間から、女子部屋に続く境目に鬼より怖い体育教師がいる話。





ヨシには兄貴が二人いて修学旅行の教師の行動パターンが毎年同じだということに気づき、先輩から聞き取りなどもして作られた完成度の高い作戦である。




手書きの地図を広げて俺たちに事細かに指示をする。




中３なのにまるで軍人のような顔になっていた。






エロいことに関するヨシのこういう能力は今でも健在で、一発やらしてくれる人がいると聞いたら、例えイスラム国にでも潜入して一発やって帰ってくる男だと思っている。






話はそれたがこの作戦中、Ａ君がわなわな震えていたのを俺は見逃さなかった。




（怖いのかな・・・？）




確かに体育教師につかまったらどんな目にあわされるか想像するだけでも恐ろしい。




「Ａ君、お前は止めとくか？」



「いいや、行くわ。大丈夫・・・」




Ａ君はずっとわなわな震えていた・・・






そして作戦は決行された。





担任の見回りにタヌキ寝入りを決め込み、担任が去った頃合いにヨシの「ＧＯ！」の合図で俺たちは布団を跳ね除け第一ポイントに走った。






この第一ポイントは見回りの教師の死角になる場所であり、まずそのポイントで次の行動につなげるための重要な拠点であった。





その第一ポイントに向かう最中もＡ君のワナワナという震えは一段と大きくなっていた・・・




（Ａ君、かなりびびってるなぁ。大丈夫かな・・・）


俺は一気に不安になってしまった。





第一ポイントに到着した。




ヨシが死角になる角から、少しだけ顔を出し体育教師の部屋の様子を伺っている。




体育教師は体育教師で別のクラスの見回りがあるので、その隙を狙っているのである。





ヨシは腕時計を確認して再び、少しだけ顔を出して様子をうかがう。





普段は間抜けな顔をしてるが、この時ばかりは、まるで顔つきがランボーに出てくるスタローンのそれである。





俺はヨシの横の内側で息をひそめ、俺たちの後ろにＡ君が中腰で身を隠した。




相変わらずワナワナ震えるＡ君。





ヨシは腕時計をさらに確認して



「もうすぐや・・・」とつぶやいた。






その瞬間、俺はとんでもないものを目撃してしまったのである。





Ａ君のこのワナワナは恐怖からの震えではなく、




込み上げてくるテンションを抑えるための武者震いであったのだった。




俺が見たのは、そのテンションが一気に解き放たれた瞬間であった。







片膝をついて辺りの様子を伺うヨシの頭に、後ろにいるＡ君がおもむろにチンコを乗っけた。






そしてありったけの大声で





















「踊ろうぜ！！！」と叫んだ。








時が止まった。





全く理解できなかった。











なぜチンコをヨシの頭に乗せたのか。



そして、そこでなぜ「踊ろうぜ！」なのか・・・







ＴＨＥ　テンションＭＡＸ。







テンションっていうのは、上がりすぎるとドーパミン（脳内麻薬）が一気に放出されて、わけがわからなくなってしまうそうである。











体育教師の部屋からふすまがガタガタと開く音が鳴った。





俺たちは蜘蛛の子を散らすように逃げた。





作戦失敗である。








結局、体育教師につかまったのはその場に立ち尽くしてチンコを出したままのＡ君のみで、えぐい折檻を受ける羽目になってしまったそうだ。









「お前にとって忘れられない夜にしてやるよ」



ある意味、Ａ君にとってそういう夜になってしまったのである。






余談だが二日目の夜。

ヨシの作戦により無事に女子風呂を覗けたことは今もいい思い出である。



右の鼓膜が破れたかもと主張するＡ君は誘わなかったけどｗｗ