太った女性ほど好き嫌いのわかれるものはない。




いわばパクチーみたいな存在なのである。





デブの女以外に性的魅力を感じない男性も案外腐るほどいて、「デブ専」市場のニーズは今だけっこう高かったりする。






ただ日本の風土はまだまだ「美＝スレンダー」という図式になっており、どうしてもデブな女を生理的に受け付けない男性も多い。




風俗でデブが出てくると「地雷店」として認識されてしまう。




かくいう俺も若い頃は、性の対象には顔はともかく「スタイル」だけは重要視していて、とにかく細い女が絶対であった。








ただ抱き心地や肌触りなど総合的に判断して、必ずしも細い女がベストではないと実感できるようになったのは三十も半ばになってからである。






まだ「細い女至上主義者」であった若い頃は、お金も無いので安い風俗に行く。





安い風俗にはリスクは付き物でとにかく地雷の在籍率が以上に高い。






そういう店では例えパネル指名をしたところで、まず別人がやってくるので、指名料金がもったいないだけなのである。






ではどうするのか？







受付のおじちゃんに手を合わせて自分の好みを伝えるのである。






俺：「贅沢は言わない。顔はどうでもいいから、せめて細い子で頼みます！！」






ジジイ：「ああ細い子ね？任せときな！！」となるのである。








で、女の子が来た結果






















ミッキー吉野だったんです。






うーんとね、

二重アゴを超えて、三重アゴくらい？











俺は受付のカウンターを乗り越えんばかりに怒りを表した。







俺：「俺は細い子でお願いしたやんな？」





ｼﾞｼﾞｲ：「う～ん、ワシにはあの子は細い子に見えるけどな」




俺：「テメーはサモア人か？」






抗議をしたところで無駄である。


ミッキー吉野相手にやることはやっただけにそれ以上は何も言えなくなったのである。







さてそんな地雷の話だが





俺の友人のＴ君は地雷率が異常に高い。




Ｔ君はデブの女性を生理的に受け付けれない体質である。




Ｔ君は４０代のしがない子持ち既婚者サラリーマンで少ないお小遣いで風俗に行くので必然的に安い風俗を選択せざるをえない。







そうなると地雷率も一気に上がる。





しかしリスクを背負ってでも前に進むしかないのも同じ男なのでよくわかる。






Ｔ君も受付時に「顔はどうでもいい！細い子でお願いします」と頼んでいた。






しかし例によって




来る女、来る女、全部デブらしく、

ほんとノイローゼのような状態になっていた。







デリヘルではフリーでも「好みのタイプはありますか？」と聞かれる。





Ｔ君は必ず「細い女」を要求していた。




受付の人は一応「細い女性ですね？了解しました！」となる。







しかしその日に降臨してきたデブは強烈だったらしくビジネスホテルのドアをカニ歩きで入ってきたらしい（前からだと入口が狭く通れないから）





ワンピースに出てくる「ビッグ・マム」だと思ったらしい。






何をどうやってもＴ君のチンコがピクリともしなかった。





するとＴ君の上に乗って奮闘していたビッグマムは



相撲取りのような低いしゃがれた声で











「あんたも、ダメなのか・・・」




Ｔ君もショックを受け

ビッグマも女の尊厳を傷つけられた。




切ないと言えば、切ない話である。









しかしここにきて展開が少し変わってきたのだという。





地雷ばっかのＴ君だったが



なんとここ最近はその地雷には当たってないという。







「いい必勝法を見つけてん」





「風俗で地雷と出会わない必勝法」をＴ君は遂に編み出したと言うのだ。





話しを聞くとこうである。







とにかく受付の人に誠心誠意自分の想いを発露するんだって。






自分がお小遣いを必死に溜めて心を躍らせてやってきた風俗でデブが来た時の心情。


デブが上になって滝のような汗を顔に滴らさせられた話。


デブ相手にチンコがぴくりともせずなじられた話。


強制的に顔に跨られて窒息しそうになった時の話。


肌がざらざらしすぎてて皮膚が痛かった話。


家に帰って布団に入る時に涙がでそうになった話・・・








いかにデブの女を相手にしてきて自分がどれだけ辛く悲しい思いをしたのかを、目に涙を浮かべて受付の人に１０分でも２０分でも延々と語るんだって。





受付の人はちゃんと話を聞いてくれるらしい。




向こうはビジネスだけど、そこは同じ男同士なのである。




時には「はい、よくわかります」と同情の相槌もくれるらしい。





中には「そこまでとは…じゃあウチでは無理です。すいません太い女しかいないんです」




彼の本気の気持ちを理解し、正直にカミングアウトして向こうから断ってくれる店もあるらしい。







そうすることで彼は地雷を遠ざけることに成功した。






風俗で地雷を踏まないコツは受付の人に心を開き
誠心誠意自分の心をちゃんと相手に理解してもらうということなのだ。








「最近は細い女ばっか来るねん、嬉しいわー」と、酒を飲みながらほくほくした顔で語っていた。






そして昨日の夜の話である。




俺は仕事終わりで酒を飲んでいると一本の電話が。




Ｔ君からである。









「あんなー、デブが嫌いで細いのが好きとは確かに言ったけどよ―











ガリガリの骸骨が来てん！！









骸骨やったら、デブの方がまだいいわっ！！！」






「知らんがな！！」





俺は電話を切って再び酒を飲んだ。