「倉俣史朗のデザインー記憶のなかの小宇宙」展。
世田谷美術館で2024/1/28まで開催されていた「倉俣史朗のデザインー記憶のなかの小宇宙」展に行っていたんですよ!!!
『造花の薔薇を透明アクリル樹脂に封じ込めた「椅子」、板ガラスを組み合わせただけの「椅子」、大きさを少しずつ変えて格子状に49個並ぶ「引出し」、7本の針を持つ「時計」。一目見た時に驚きがあり、そして笑みがこぼれ、しばらくして、その機能がきちんと保持されていることに気づきます。
倉俣史朗(1934-1991)は、このような一風変わった家具と数多くの特色あるインテリアデザインを手掛けました。1965年に独立し自身の事務所を構え、同時代の美術家たちとも交流をしつつ、機能性や見た目の形状に主眼を置いたデザインとは異なった考え方をした作品を発表し続けます。
(中略)
没後30年を経て開催する本展覧会では、家具やインテリアの仕事に加えて、創作の源泉を垣間見せるかのようなイメージスケッチや夢日記も紹介し、倉俣語録とも言われた作家自身の言葉を手がかりに、独立する以前からあまりにも早すぎる死までを振り返ります。倉俣史朗の作品とその人物像に新たな視線を向けることは、デザインの可能性を再認識する機会ともなるでしょう。」(公式サイトより)
写真撮影可能なのは最初の部屋にあった家具四点だけでしたが、展示には現物だけでなく店内装飾や作品のスケッチ、珍しいところでは氏が付けていた、夜に見た夢のメモなんかもありまして、非常に見応えがありましたね。
エキスパンドメタルを使った椅子「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」やアクリルに造花を閉じ込めた「ミス・ブランチ」、引出しシリーズなど、倉俣史朗氏の作品には研ぎ澄まされたシンプルさと、どこか浮世離れした美しさが同居している。
そのデザインはどこから来るのか不思議だったのだが、この展覧会で少し触れられた気がする。
彼は小説と音楽をこよなく愛した方で、代表作の2点もそこから名を付けたものだという。
エキスパンドメタルを使った椅子「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」は、ジャズの名曲「How High the Moon. 」から。私の恋にあなたが応えてくれたなら夜も輝くだろう、でも、今は月があんなにも遠い、といったロマンチックな歌詞なのである。
一方「ミス・ブランチ」はテネシー・ウィリアムズの戯曲『欲望という名の電車』から。幸福を得ようと嘘を重ね、やがてその嘘によって破滅していく女性の名を、アクリルに造花を封じ込めた、この夢のように美しいチェアに付けたのだ。
また、生前の言葉に
「アイデアは夢を含めた記憶の中から生まれる」
「引力(重力)から自由になりたい」
というような言葉があった。彼の作る家具は「実用」という軛から解き放たれた、実用には向かないものも多い。
現実を見据えながら、そこから解き放たれたイデアを彼は希求していたのか。
そんなことを思ったりしました。