男が惚れる男
カーラジオを操作しながら車を走らせていたのがいけなかった。
タイヤが県道脇の側溝にはまって動かないではないか。
家から1㎞もないのに。
家から軽トラを持ってきて引っ張ろうかと思っていた時に、1台のトラックが数メートル先に停車する。
トラックから降りてきたのは長身の男性だ。年齢は俺と同じくらいだと思う。
長髪を後ろで束ねている。
「引っ張りますよ。」
言うが早いか、ものの数秒で彼の乗っていたトラックと俺の車をワイヤーで繋ぎ、あっという間に車を側溝から引っ張り出してくれる。
「ありがとうございました。いや~、金が無くてJAFにも加入してなかったもんですから、どうしたもんかな~と困ってたとこだったんですよ。何かお礼をしたいので、連絡先を教えて頂けますか?」
「お礼されるような事はしていませんよ。お気をつけて。」
それだけを言い残し、颯爽とトラックで去っていく男性。
COOL!
なんとかっこいいのか!
危うく惚れるところだった。
むさい男を助けて頂いてありがとうございます。
トラックの後ろに書いてあった会社名は覚えている。検索したら、わりと近所じゃないか。
後日お礼に伺おう。