浴室の扉に

女性入浴中のプレートを確認してから服を脱ぐ。


見た目はおばさん、
中身は乙女なのは私だ。




恥じらいという女心もちゃんとあるのだ。

前回、

鍵をかけたら、

看護婦さんが、合い鍵で侵入してきたので
鍵はしない。





私がシャンプーを終えた頃



『ゆみちゃん、飴あげるからお風呂はいろ』

看護婦さんが
優しい口調で、
服を脱がしている気配。





私は


ゆみちゃんが、滑ったらいけないから、
床をシャワーで流し、軽く掃除した。





『お風呂はいると気持ちいいよ。ゆみちゃん』


『風呂には、はいらん、寝る』



看護婦さんはなだめているが
ゆみちゃんは頑固だ。

『よかもんを食べさせるから』




看護婦さんもなかなかてこずっている様子。





ガラス戸を開け





『一緒にはいりませんか？気持ちいいですよ。』


いささかお節介かなと思ったけど
ゆみちゃんという、おばあちゃんに親しみがもてたから

『おはんなだいけ？(あなたは誰？)』



看護婦さんが、
『ゆみちゃんと一緒にはいりたいって』


ナイスフォロー(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o)))




入れ違いに私は
風呂をでた。






『ほら、気持ちいいでしょ？』




『ひやかー(寒い)』




浴室も、脱衣所も温度設定されていて暖かい。
さすが病院と思うほど
気配りされている。





私が一番風呂だったので
湯船にもつかる。　



老人エキスたっぷりのお風呂には
やっぱり、抵抗あるけど


『子供、笑うな。きたみちだもの。年寄り笑うな。いくみちだもの』

そんなことわざを思い出したり



人間だもの。





いろいろある。






髪を乾かしていると



ゆみちゃんがあがった。






『おいくつですかー』




レレレのおじさん口調で、きいてみた。







ゆみちゃんは


『忘れた。大正三年。』






私の祖母も大正三年で、


他界して四年になる。





祖母と同じ歳の96歳のゆみちゃんに
ほっこりした、雨の金曜日でした。