ちょうど今くらいの季節。
春が
すぐそこに近づいてると感じる頃、

私25歳。

東京都内でOLをしていた頃




事件がおきました。



その日、給料日だった私は
新宿でお買い物をして帰ろうと
お金、おろしにATMに。


今みたいにコンビニの中にない時代で
地下街のなかに
お金をおろし、エレベーターで
上に行こうとすると



先客アリ。




ベージュのロングコートの男性。




地下のビル街は
３月だというのに少しひんやりした感じで
独特の空間だった。



上がりを表示するエレベーターランプがついてない。


押せよー
と、思いながら　人差し指でピッと▲のボタンを押し、到着を待つ。



男性は、
私の背後にたっていた。



ただ、

背後に立ちエレベーターを待っているには、距離がありすぎた。


早くエレベーターこないかなあ。


なんかイヤな空気。



そんなことを思っていると背後から
「はあっはあっ」


なんともいえない



あえぎ声がしてきた。




振り返ってはいけない。
絶対みたらだめだ。


でも、やっぱり見ちゃうんだよね。




人間だもの。
もしかしたら、急病だったりするとヤバイから。



おそるおそる振り返ると












へんなおじさん状態のズボンのファスナーをおろし、
下半身丸出しの姿で
コートの端をもち、コオモリが羽をひろげた感じでたっていた。


「たっていた」
は、いろんな意味で活用される。




キャー


ありったけの、叫び声
悲鳴


でも　誰もこない

きたのはエレベーター。




のるよねー




私がエレベーターにのり、
ボタンを押そうと
焦っていると

ヤツは
エレベーターにのり、私に抱きつこうとした。


み、密室になる。


その瞬間、エレベーターからでて


たまたま、職場で編み物が流行っていたので
毛糸と編み棒のはいった紙袋をさげていた。



紙袋を死に物狂いで振り回し




私の中に

必殺！

仕事人のテーマ曲が


中村主水みたいに編み棒を抜き振り回した。




ヤツは観念したのか
逃げていった。




涙がとまらなかった。
なんにもなくてよかったけど
トラウマになった。





いまでも


覚えてる。