とーちゃんの寿司
毎年
3月になると思い出す。
私の父は若い頃板前さんだった。
なかでも
シメサバが絶品。
後にも先にも私は父の握ったシメサバより
美味しいのを食べたことがない。
回る寿司しかたべられないからあたりまえかもしれないけど。
鯖は
小骨をピンセットで丁寧にとる。
3年前、大腸ガンから6年、転移して
末期に近い状態で
いつも、自信満々に
父の場所で座りながら魚もさばく父だったが
その日は
車で30分くらいの場所に住む
私にどうしても食べさせたいと
酢飯と材料全部かかえて
やってきた。
まるで
金持ちが寿司職人を呼ぶように。
なぜか
その時の父は
「今日はうまくいかんかった」
見た目はいつもとかわらない。
父にとっての完璧ではなかったのかもしれない。
ご飯が柔らかすぎてベチャベチャだった。
コレは母の水加減の失敗で
父は、ほとんど食べなかった。
はあはあ息をするのもやっとなくらいに
手を進める。
美味しいよ
といいながら、父の身体が心配で味なんかしなかった。
味は覚えてないのに
そのときのことは覚えてる。
まだ寒い春が待ち遠しい季節の
父が握った
ちょっと失敗作のにぎり寿司。
いちばん食べたいものは?
と
聞かれたら
とーちゃんの寿司!
と答えたい。
あれから
3年過ぎました。
あの時の父が納得いかなかった鯖寿司が
父の最期の寿司になりました。
完璧じゃなかったかもしれないけど
私には大好きな父の味。
美味しそうに食べてる家族の顔を嬉しそうに見ている
いつもは頑固オヤジが優しい顔になった
あの頃が懐かしい。
父のサバ寿司
弟よりも食べた回数は
私が勝ってる(笑)
また
食べたいな。
コメント
2017/03/10 18:23
3. ほんと、泣かせるよー
自分の娘を想い出しちまった。
どうせ嫁に行くんだからって思って、ほとんどと言っていい程語ることもなく、嫁に行っちまった。だけど、誕生日だ、父の日だ、敬老の日だの、するなって言っても送ってくる。
日記。書いてくれてありがとう。
返コメ
2017/03/10 6:14
2. 絶対に忘れない味ですね。
うるっときてます。
母の餃子鍋を思い出してしまった。(^o^)
返コメ
2017/03/10 5:02
1. 泣かすんじゃねぇ
返コメ