体験した不思議な話「いつまでも②」
見慣れない青年が立っていた。
でもどこか見覚えがある。
短髪で黒いシャツにGパンで肩から黒いカバンをかけていた。
「久しぶり」
たけは条件反射的に口を開いた。
久しぶり。と声を掛けられたのだから久しぶりなのだろう・・・と気軽に考えていた。
太郎はそんなたけの戸惑った心を見透かしたように
「あれ?わかんねぇ?俺だ、山田太郎だよ。」
そう言いながら嬉しそうに近寄ってきた。
「・・・おぉ!?太郎かぁー!?分かんなかったよー!お前よく俺が分かったな!」
一瞬間が空いたのは思い出すのに時間がかかったからではない。本当に驚いたからだ。
「当たり前だろ。お前全然変わってないしな。それに俺は見つけるの得意なんだよ。」
得意気にニッコリと笑っている太郎は、まさしく6年の頃と変わっておらずいたずら小僧のようであった。
約7年ぶりの再会という気まずさはあっという間になく、お互いの再会を喜び合った。
なにより嬉しかったのはこの7年まったく連絡が取れていなかったのに再会出来たことだ。
連絡が取れていなかった・・・というのは俺が中学に入っていきなり転校、その後高校では親が転勤。高校を転入するのもかわいそうだろうと一人暮しを行っており、携帯も満足にない時代に、俺に連絡をつけるのも困難だったからだ。
では何故、二人が再会出来たのか・・・
簡単な話だ。最後に別れるときに約束していたからだ。
まるで 「また明日遊ぼうね」と子どもたちが言うように、
「今度は高校卒業してさ、19歳になる年の、◯月◯日、◯時にここで会おうぜ」
どちらから言ったのかは覚えていない。盛り上がって話した覚えくらいしかないからどちらともなく言ったのかもしれない。
「俺はともかくお前は忘れてると思ったよ」
俺はそう言って太郎に向かって嫌味を言う。
小学校の時 遅刻・忘れ物の2つでトップを爆走していたからだ。
「俺は面白そうなことは忘れないんだよ。時間もピッタリだったろう?」
太郎はにっこり笑ってVサインを出した。
確かに、こと遊びのこととなると天才的なやつだった。
ただの洞穴を改造してりっぱな秘密基地にしたり、川が流れている所の一部を掘り広げ、魚を取りやすくしたり・・・。
そんな感慨にふけっていると太郎が急かすように言った。
「いいからさ、母校の中見せてもらおうぜ。変わってないかさ。」
ついてこいよ・・・というようにくるりと背中を向け歩き出した。
思いついたら即実行。行動力は変わっていなかった。
「いや、いいけどさ、一応誰かに断ろうぜ。完全に不審者だぞ俺たち。」
「細かいこと気にするなよ。どうせばれないよ。」
太郎はズンズン進む。
「いやいやいや。お前6年の時忍び込んだ時もそう言ってしこたま怒られたじゃないか。それにこの歳になると洒落になんないから」
流石にこの年で、しかもこんなことで警察の厄介にはなりたくない。
俺は必死で太郎を止めた。
「そうか?・・・しょうがねぇなあ。じゃあ誰かに許可貰えばいいんだろ?」
「流石に知ってる先生もいないと思うけど話せばなんとか許してくれるだろ。休みで子ども達はいないし泥棒とは思わないだろ。」
俺たち二人はとりあえず正面入口から入り、事務室ならぬ用務員室を探した。
記憶を辿りながら恐る恐る廊下を歩く。
記憶の中の小学校はもっともっと大きかった印象だが、大きくなってきてみると小さくて寂しい感じがした。もっとも、ここの主である子どもたちがいないのだからしょうがないのだろう。
職員室の隣にそこの部屋はあった。もっとも用務員室から事務室と名前が変わっていたが。
丁寧にノックしてみると返事があった。
恐る恐る扉を開ける。
太郎はどうも先生は苦手のようで完全に俺の後ろに立ち、向から見えないように立っていた。
―――ズルい奴め。
俺の後ろで小さくなっている太郎を見るとまぁ仕方ないかという気分になって、俺が勇気を出した。
つづく
コメント
2014/03/20 22:20
2.
続き…
読みたす!(´`:)w
返コメ
2014/03/19 20:23
1. これは本当にあった話なのかな(°Д°)続きが気になる!!
返コメ