体験した不思議な話し「いつまでも⑤」
30代前半  鹿児島県
2014/12/16 16:39
体験した不思議な話し「いつまでも⑤」
自分の記憶力に感謝した。太郎は飛び跳ねながら喜んでいる。
まさか、本当に残っているなんて。
7年もの間、誰からも読まれなかったのだろうか。それとも読んだ人は知らんぷりしていてくれたのだろうか。

ともかく「日本の歴史~3巻~」という本の最後のページにそれはあった。
この学校の図書の本の最後のページにはポケットがついていてカードが入っている。借りる人はそのカードに名前を書き、先生に渡して借りる。

貸出禁止の本にもポケットは何故かついていたがカードは入っていなかった。
そのポケットに俺と太郎は入れておいたのだ。

「まさか本当に残ってるなんて・・・。」

7年前の最後の別れを思い出す。

『今度は高校卒業してさ、19歳になる年の、◯月◯日、◯時にここで会おうぜ』
『うん。そんでさ、二人で隠したあれ、掘り起こそうね。』

6年生になると自動的に行われる(誰が言い出すんだろう?)タイムカプセル。
この学校では誰からともなくその話が湧いて出て、20歳の自分へのメッセージと
何か宝物を埋めることになっていた。

俺たち二人はそれとは別に、二人だけのタイムカプセルを埋めた。
大人になった相手に送るメッセージと相手に送るプレゼントを添えて。
もちろん相手のメッセージなんてしらないしプレゼントも布にくるんであったのでわからないようになっていた。

「良かった。ちゃんと消えずに残ってる。」

俺はガサガサと四つ折りにしていたノートを広げる。
これはどこに埋めたのかを示す地図。
二人とも絶対に埋めた場所なんて覚えていられないと、地図を書き、ここに隠した。

7年が経ち、当然どこに埋めたか覚えていなかった。
あやうく地図のありかも忘れる所だったが。

地図を開いてみるとでっかく学校が書かれており、赤い〇でココ!と〇がしてあった。
校舎と体育館の位置関係からして、校舎裏の駐車場近くのようだった。

「学校が全然変わってないから助かったな。何か新しくなっていたらアウトだったな。それにしても・・・地図書いたのたけだっけ?下手だな~。」

ニヤニヤしながら俺をみてくる太郎を睨み付け紙を見せる。

「何言ってんだ。二人で書いたんだろ。このきったねえ飼育小屋なんてお前だよ。」

地図にはひし形とも二等辺三角形とも見える枠の中に奇妙な生き物が書かれてあった。
おそらくニワトリだろう。

「・・・ま、まぁいいか。とにかく掘り起こそうぜ。」

俺たちは急いで本をかたずけ、カギを用務員室へ届けた。
オジサンはまだアルバムを見て懐かしそうに眺めていたが、6年の時に埋めたタイムカプセルを掘りたいというと丁寧にスコップを貸してくれた。

「元通りにしといてくれればいいから。・・・見つかるといいねぇ。」

オジサンはにっこりとほほ笑むと手伝おうかと言ってくれたが丁寧に断った。

俺たちはそわそわしながら地図に記されてある場所付近へ来てみた。

・・・が、所詮は小学生の地図。ざっくり過ぎて正確にわからない。

「んー・・・なんかこの辺りなんだけど・・・。」
「来てみたら思い出すかと思ったけど全然覚えてないな・・・。」

二人は苦笑しながらも数年前を思い浮かべながら何か思い出すきっかけを探っていた。

学校は丘の上に立っている立地上、東西の門から入るようになっており南北は崖のようになっている。南側は校庭になるため、北側がいわゆる「校舎裏」となっている。
校舎の裏は細く縦長のつくりになっており、東門近くから駐車場、花壇、飼育小屋、池と続いている。
まっすぐ西門へ行くと体育倉庫があり、体育館がある。
地図によるとおそらくは花壇から池までの間を指しているが、丸が大きすぎて特定出来ない。

「この地図だけで他はノーヒントか・・・あの頃の俺たちってアホだな。」
「まっしょうがないな。焦って見つけなくてもさ、のんびり探そうぜ。」

太郎は小学校時代のアイドルの歌を口ずさみながら池の魚をみている。

「この魚ってさぁ・・・。俺たちがいる時からいるのかな?」
「コイだっけ?・・・さぁ・・・。どうだっけ?見た目じゃ分かんないよな・・・。」
「うん。コイの寿命って知ってるか?・・・20年から70年なんだってよ。時には100年生きるコイもいるんだって。」
「へー・・・お前そんなコイについて詳しかったんだっけ?」
「ん?・・・まあね。」

ケケケ・・・と笑う太郎はどこか寂しげだった。少年時代の思い出に浸っているのかもしれない。
まてよ・・・と俺は池を見て思う。なんだかわからないが今の会話の中にヒントが会った気がする。忘れてる何かをおもいだせそうな・・・。

「なんか色々バカな事したよなぁ~。」

太郎は急にまっすぐ俺を見てきた。言ってる事は軽いのだが表情は少し硬い。
なんだか背中をせっつかれてるようだ。

「ん?あ、あぁ・・・そうだな・・・。ここでもバカやったり・・・。」

その時ハッとなって太郎を見る。
やれやれ、やっと思い出したかと笑っている。
死んでいたコイを飼育小屋の裏に二人で埋めてやったこと。
飼育小屋の裏はフェンス(北側は崖なのでフェンスで囲まれている)から木が出ていて、出てきている木に『WT』のイニシャルを掘った事。
そのすぐ下に・・・二人でタイムカプセルを埋めたこと。

「ここに来れば思い出す・・・って確信があったからこんな丸にしたのかな・・・」
「そうかもな。」

ケケケと笑いながら懐かしそうに木を眺めていた。
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