病院待合室での出来事

時間は13時過ぎ

診察時間は終了して待合室には数人の患者が会計に呼ばれるのを待っていた

最前列には初老婦人が一人

その後ろに俺が座っていた

検査を受けた俺は仮眠したこともありﾎﾞｰっとしていた

老婦人は何やらｶﾊﾞﾝをｺﾞｿｺﾞｿとやっていた

次の瞬間､老婦人の座席の下に

何かがﾊﾟﾁｯと音を立て落ちて俺の方に転がってきた

..ゆで卵だ

残念ながら割れて白身部分がむき出しになり床の砂埃がついていた

老婦人はまだｺﾞｿｺﾞｿやっている

気付いていない

可哀想に..食べれないだろうが一応拾って老婦人へ｢落ちてましたよ｣と手渡した

老婦人は言った

｢探してたのよ!ありがとう♪｣

俺は思った

..昼時とはいえゆで卵を病院の待合室で食べるか？それより割れて汚なくなったのを気付いてるかな？

..まさか気付かず食べる？拾ってあげたの失敗かなぁ～

..

汚れてますよと伝えるのも変なので流すことにした

死にやしない(^_^;)

老婦人は探し物のゆで卵が見つかったにも関わらずまだｺﾞｿｺﾞｿ探している

｢あったあった｣

そう聞こえた次の瞬間

老婦人はくるりと俺の方に身体を向け

｢さっきは有難う！はいどうぞ！｣

何やら差し出した

俺へのお礼の品を探していたのである

たかがゆで卵を拾ったお礼なんて！

田舎の婆ちゃんってこんなもんかも知れないなぁ♪その気持ちは嬉しいね

渡されたのは何かが包んである小さな紙(ﾁﾗｼ)だった

「それとこれもね！美味しいわよ！」

..次に渡されたのはゆで卵だった

「こっち(小さな紙)はお塩ね」

..ゆで卵を何個か作ったのだろう..

帰りの車で食べればいいか(^-^)

..

..ん？ちょっと待てよ..これ割れてる..てか..さっきの卵だ(--;)

白身がむき出しになり砂ぼこりがしっかり付いている卵

嬉しそうな笑顔を前に断れなかった

塩までくれたのだから

..

俺は手ぶらで来ていた

「アルデンテさーん」

会計に呼ばれた

ゆで卵と財布と携帯二個で両手一杯であった

割れて汚れたゆで卵をカウンターに置いて会計の女の子に薬の説明を聞かねばならないなんて..

..

有難うお婆ちゃん

ゆで卵って床に落ちたら割れるんだよ

割れたら白身にゴミが付くんだよ

決してお礼の品には使ったらいけないよ

おしまい