嫁さんのおめでたになって

それからが大変

会う人会う人
おめでとうおめでとう

俺もうれしいんだけど
素直になれなくてね
うれしさより
これから店を
どう守って行けばいいのか
毎日恐怖で恐怖で

やっぱり
同じ立場に居る人は
店どうするの？って
言葉が先に来る
俺たちはサラリーマンじゃないから
そこが辛いとこ
ここを乗り切るとうれしさは
倍増すると思うんだ

最近
ケーキ屋の社長が
31歳アルバイトの男の子を
紹介してくれて
面接してみた

昼間、６時間程度のパートしか
やってなくて
生活が厳しいって話しで
面接の日からすぐ
アルバイトに使ってみた

たぶん長続きはしないと思ってけどさ

まさか
こんなに早く辞めるとは思わなかった
２週間くらいきたかな
仕事も慣れてきてたのに
いきなり電話来て
体調悪いから
アルバイト辞めたいんですけどって

わかった

なんで
人の紹介で来てて
簡単に辞めれるのか？

俺は不思議でしょうがなかった

そして俺は
若い頃のおふくろ言葉を
思いだしたんだ

あれは
高校卒業して
就職も決まらなかった頃
学校の先生の紹介で
札幌のあるホテルの
宴会場の調理場に
就職したんだ

その頃は調理師の職場なんか
厳しいものだった
先輩がいじめられてるの見ては
こんな世界があるんだって思った
俺はどちらかと言うと
みんなに好かれてたから
仕事もどんどん教えてもらってた
ある日
その姿を見て
いじめられてる先輩は
倉庫で
お前はいいな
俺なんかはいつもあんな感じだって
言いながら
素手で一升瓶の醤油をなぐり
手から血をながしながら
一言

悔しい

その言葉が
ジーンと胸にたき刺さった

そんな光景を見てるうちに
若かった俺は
だんだん仕事に対しても
いりょくがでず
辞めたいって気持ちが強くなった
でも先生の紹介で入った俺は
紹介なんだから頑張らないと
頑張らないと思いながら
たった１年で料理の世界から
離れた

そして地元にもどり
おふくろに会ったとき

その仕事の話になったんだ

でも俺は
先生の紹介だから
今まで頑張ったんだって
おふくろにつかかっていった

ところが
おふくろの言葉が凄かった

お前は
何言ってるんだ

先生の紹介だから
頑張ってきたじゃないだろう

先生の紹介だから
今まで
頑張って来れたんだろう

この言葉の意味が
すぐわかった

あの時は
自分が小っちゃ過ぎて
情けなかったな～
今でもあのときの記憶は
ハッキリ覚えているよ
やっぱり
おふくろは凄い人だなって
思った

あれから33年
商売人の息子として生まれて
絶対商売人なんかにはならないって
言ってた俺が

やきとり屋という商売をやり
株式会社の社長にまでなってる

やっぱり
蛙の子はカエルかな。