チーズケーキとクマ。
今日はあなたの少し早い
58歳の誕生日お祝い
幾度となる接待で
美味しいお店も詳しい
あなただけれど
食べ物のこだわりが全くないあなた
今日の私チョイスのお店は
当たりだったね
ワインも沢山飲ませてもらって
楽しいひとときを過ごさせてもらったよ
誕生日のデザートプレート
花火と一緒に店内のBGMが掛かる
とっても驚きながら
あなたは
" やられた "って顔をして
可愛いなぁって
毎度の事ながら そう思ったよ
ラストオーダーで
最後は早食い競争になっちゃって
味を楽しめなかったけど
それも良い思い出
助手席に座ると懐かしい
芳香剤の香りがしたわ
あなたはズルい
私には大切な人がいる
なのに二人きりになれる所に連れていく
私は言ったわ
あなたが私と身体の関係を持ちたいと
言うのなら
二度とあなたと 逢わないわ
もう嘘をついて恋愛する女に
なりたくないんだ
" 君だけは特別なんだ "
とあなたは言うけれど
特別だからって
身体をあずけていいのかい?
私は もうあなたの女ではないの
今日は誕生日だから
あなたの好きな
ベイクドチーズケーキを手作りし
ロウソクを立てて
バースデーソングを
ちょっと照れながら唄った
あなたにこの歌を歌うのは
もう何回目だろう
照れ臭そうに でも嬉しそうに
ロウソクを吹き消していたあなた
あなたは私の幸せを いつも祈っている
きっと生涯その想いは
持ち続けてくれる事だろう
あなたとは
同士のような でも恋人でもない
励まし合い お互いを鼓舞し合える
そんな仲でいたいんだ
あなたとは10年お付き合いをして
お別れしてから
数年ぶりに今年再会した
あなたは言った
" もう こうゆう所に来たり
触れ合えるのは これで最後なんだね
君のぬくもりを忘れない為に
もう少しだけ もう少しだけ
こうしててくれ "
そう言って 私を抱き寄せ
強く 深く
私を抱き締めた
最後に あなたは
なんとも言えぬ表情を浮かべながら
私に そっと キスをした
帰宅して 私の手紙を読んだあなた
もう僕は君に会っちゃいけないね
でも最後に君の誕生日だけ
祝わせて欲しい
それを最後にするから
僕は君の幸せだけを
ただただ 祈ってる
帰宅してね
ベッドにいつも通り
あなたがプレゼントしてくれた
抱き枕のクマが二匹 寝そべっていた
" 俺と会えない間に 寂しくない様に "
ってクリスマスプレゼントで
くれたあの子達
そっと抱き寄せて
私は 潤んだ目で
" ただいま "
と囁き
温かく 息を飲み 微笑んだ