小説 【出世街道まっしぐら】6 逆玉
立夫は苛立ってきた・・
徒に日は過ぎていくだけで 身辺は何の変化もない。
競合店との熾烈な店舗拡大競争は続いており 立夫は南海堺の大規模小売店の出店を巡って地元との調整などに狩りだされていたが次第に意欲が失われてきた
スケールが大きく立夫一人で何かの成果を得ることは難しく 一匹狼を自認している立夫も大きな組織の中では単なる一つの歯車に過ぎなかった
仕事はそつなくはこなしていたが こんなものに男のロマンを賭ける値打ちが果たしてあるのか・・
俺がここに入ったのは権力と地位をゲットするためだ 金は後からついてくるという信念だったが
今の俺はなんだ? 先の見込みは立たず、金も安月給。一年経って 少しは増えただけでは焼け石に水だ
奈津子からいろんな情報が入っては来たが立夫の出世につながるものは何もなかった
奈津子からのネタで部長を仮に蹴落とすことができたとしても立夫が後釜に座れるという可能性も低い
当初の志とは違うことに幻滅を感じていた立夫に
更に頭の痛いことが起きた
週一に来ている 真奈美が妊娠したのだ
ゴムなどつけたことない立夫だったし 真奈美もビルなどの服用は興味ないってことで
当然の妊娠だった立夫がアホなことしたと後悔しても後の祭り・・
堕胎なんて絶対にしないと真奈美がいうから
その流れとなったワケだ・・
妊娠すれば当然結婚を迫られることだし それにこれから出産となると何かとモノ入りになると
頭悩ませていたら 真奈美の母親が斃れたとの一報がはいった
交通事故で重傷を負ったと言う内容で 真奈美は通い婚もできなくなった
これは俺にしたら朗報だった
当分姫路で母親の世話するだろうから大阪には来れまい
それを機に奈津子をマンションに呼び住まわせた。
同棲である。
それはいいが 立夫は相変わらず金欠だ
美人でスタイルもぴか一の 河合と一発ヤってから立夫にメロメロになり 盲目の性奴隷となり果ててはいるがしかし肉便器の役には立っても金に結び付かなかった
河合の実家は酒の卸などの商売をしていて 結婚願望の河合に哀願され親に会ったが
奈津子は二女だし結婚したところで微々たる支度金位は出すとは言ってくれたが
そんなものは一時的なものだし 持続的な金づるとしては程遠いものだった
その点滝川は3人も女を持ちそのヒモになってご機嫌だ
美人を持っていても 金にひもじいようでは 話にならない
(金だ・・金が欲しい )
当面の立夫にとって 出世もしたいが それよりも差し当たっての 金欠は何より困ったことなのだ
給料なんて貰っても右から左だ・・この寂しい懐を豊かにするための方策はどう考えても一つしかない
得意の女たらししか浮かばなかった
そんな折、中途採用仲間で入社時から気の合う男が一人いた
田村 勇、人事課にいる、40歳だが 風貌だけではなく 女と金については気脈が合った
「前島よ、逆玉に乗るのならいい女がいるんだ・・モノにしたら金づるになるぜ なにしろ社長令嬢だ・・」
田村は続けた
西武の傘下企業はたくさんあるが デパートの中に入る専門店の仲介や内装を一手に引き受けている大きな会社がある
その会社社長の一人娘が28歳になるが 跡取りがいなく 親は 養子を欲しがってるというのだ・・
娘の名前は海堂 玲子といい 美貌で婿候補者に不自由はしないはずだが 未婚を続けているというので 俺も手を挙げようと思ったが とても無理だ・・
図太い神経のお前ならできるかもな あの高嶺の花の奈津子をモノにしたんだからな 驚いた男と思ってたんだ」(笑)
田村は笑った
「もっと詳しく聞かせろよ」と立夫は 関心を持ちバーに誘った
田村はどこの職場でもいる 寄生虫みたいな存在だが 情報通だった