小説『前島記念中央公園』 3
◆ 第四章 部下たちの反発
部署に戻ると、部下たちが取り囲んだ。
「部長、公園なんて赤字ですよ!」
「会社に逆らったらクビになりますよ!」
「なんでそこまで必死なんですか!?」
怒号と罵声が飛んだ。
立夫は、ただ静かに頭を下げた。
「……すまん。
迷惑はかけたくない。
やるなら、俺ひとりでやる」
その“ひとり”という言葉が、
どこか死を覚悟した人間のように響いた。
◆ 第五章 3億の赤字と私財投入
夜のオフィス。
立夫は一人、試算表を見つめていた。
赤字:3億2,400万円
(……家を売れば1億6千。
土地を処分すれば1億……
保険を切り崩せば、なんとかなる)
それでも胸に重く刺さったのは、
娘・聡子の顔だった。
(聡子……すまん。
父さんは……この公園に人生を懸けたいんや)
翌週。
立夫は再び役員会に立った。
「赤字3億──
すべて、私の私財で補填します」
会議室が凍りついた。
「正気か前島!?」
「老後はどうするんだ!」
「狂ったのか!?」
立夫は静かに答えた。
「老後は……必要ありません」
その言葉の重さに、誰も言葉を返せなかった。
◆ 第六章 余命の発覚
ある休日、住民説明会の最中。
立夫が咳き込み、
胸ポケットから落ちた診断書を
住民の女性が拾い上げた。
余命:半年
転移あり
その場にいた全員が凍りついた。
「前島さん……
あんた、こんな身体で……」
涙ぐむ住民たちの前で、
立夫は初めて弱い声で言った。
「……生きた証を……残したかっただけなんです」
——翌日。
住民たちは会社に押しかけた。
「お願いです!
前島さんを助けてあげてください!」
「この街の宝なんです!」
「赤字なんて関係あらへん!」
署名2,800名分が専務の机に置かれた。
この日、
会社は初めて立夫の“本当の覚悟”を知った。
◆ 第七章 会社が前島に頭を下げた日
緊急役員会。
社長は立ち上がり、深く頭を下げた。
「前島くん。
すまなかった」
専務、常務も次々に頭を下げた。
「君に苦労を背負わせた」
「街の声を無視していた」
「君の私財は不要だ。会社が負担する」
そして社長は宣言した。
「本日より“中央公園計画”を
正式プロジェクトとして承認する」
その瞬間、立夫の目から涙が落ちた。
(俺は……まだ、生きている。
この街に……この会社に……
必要とされているんや)
◆ 第八章 最期の春、公園は完成した
季節は春の入口。
公園には柔らかな日差しが降り注ぎ、
子ども達の笑い声が響いていた。
式典の日。
立夫は車椅子で参加した。
プレートには刻まれていた。
「前島記念中央公園」
Project MAEJIMA
あなたがこの街に残した愛と証に感謝をこめて
町内会代表の老人が泣きながら言った。
「前島さん……
あんたのおかげで、この街は救われたんや……!」
会社の社長も言った。
「前島くん、誇りだ。
君は、この会社が忘れていた“使命”を取り戻してくれた」
最後のテープカット。
立夫は震える手でハサミを握り、
赤いリボンを切った。
ぱちん。
子ども達が走り寄り、
折り紙のメダルを差し出した。
「まえじまさん ありがとう」
その小さな紙を胸に、
立夫は静かに目を閉じた。
(……聡子。
父さんは……やっと、やり遂げたで)
風が吹き、桜のつぼみが揺れた。
街の未来へと受け継がれる笑い声が、
立夫の心をそっと包んだ。
――そして彼は、
自分の人生にも確かな意味があった
と静かに確信した。
おわり
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暇に任せて ざっと書いてみた(^^)
コメント
2025/12/02 14:54
1. 良い話でしたね(^O^)
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