【半ぐれ銀行マンの天下取り】 8 海棠常務との対決
早朝の姫路駅。まだ薄暗い空気の中、東京行き「のぞみ」の発車案内が静かに灯っていた。
立夫と千賀子がホームへ向かうと、階段を駆け上がってくる影があった。ダチの村木だった。
「おお、間に合った! 二人とも~~」
「なんだ、来なくてもいいのに」
立夫が照れ隠しに言うと、村木は肩で息をしながら笑った。
「おいおい、ご挨拶だな。大事な日だぜ、見送りぐらいさせてくれよ」
千賀子が深く頭を下げた。
「村木さん…ありがとうございます。父には、私が必ず話します。
その言葉に村木は目を細めた。
「こんな素敵な女性を連れていけるなんて、前島、お前は幸せ者やな。ほんまに…うまくいくとええな」
村木の胸の奥では、苦く重い感情が疼いていた。
自分が前島と親しくしているという理由だけで降格処分が決まっていた
だがコイツに賭けるしかないという悲壮な思いがあったのだ
「立夫…頼むぞ。今日の面会、絶対に勝ち取ってこい。お前の復活にすべてがかかってるんだ」
立夫は一瞬、目を伏せた。
「村木…本当に悪いな。お前まで巻き込んでしまって」
「気にすんな。お前が立ち直る姿が見られたら、それでええ」
静かにのぞみが入線し、風が三人の頬を撫でた。
立夫は、千賀子の手をそっと握りしめた。——さあ海棠常務との決戦だ
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住〇銀行東京本部 最上階の役員室。
重厚な木目の扉。
立夫と千賀子は、秘書に案内され 深呼吸ひとつしてからノックした。
「——入れ」
低い声が返り、二人は役員室に足を踏み入れた。
室内は瀟洒で、まるで迎賓館の一室のようだった。
磨かれたマホガニーの机、深い紺の絨毯、壁には歴代頭取の肖像画。
その中央に、海棠英介常務が腕を組んで座っていた。
目が鋭い。
そして開口一番——
「前島か。きさま、娘をたぶらかし、出世の道具に使ったんだろ」
千賀子が小さく息を呑む。
のっけからの一喝に立夫は唇を結んだ。
海棠は立夫を頭の先から足元まで品定めした。
その視線が、立夫の丸刈り頭で止まった。
「……なんだその頭は! そのへんのチンピラ気取りか? 銀行員の品位も捨てたらしいな」
侮蔑の笑いが走る。
千賀子は、父の横顔を見つめながら震えていた。
しかし立夫は動じなかった。
一歩前へ出て、静かに頭を下げた。
「私は懲戒免職となった身です。
しかし、もう一度だけ——銀行人としてやり直したい。姫路支店長として、必ず結果を出します。
千賀子さんを利用したわけではありません。むしろ……彼女に救われたのです」
「なにぃ? 支店長だとぉ! 冗談も休み休みに言え! 女たらしの烙印押されて 免職になった男が何を言ってるんだよ!」
つづく
コメント
2025/12/04 19:41
1. こんばんは。
画像、千賀子さんがぞっこんな雰囲気出てます。
(^o^)
返コメ