昭和ロマン小説 1 【特高警察官拝命】 
30代前半  大阪府
2025/12/09 9:03
昭和ロマン小説 1 【特高警察官拝命】 
昭和6年の初秋

前島 立夫26歳は 天王寺警察の取調室にいた

さきほどまで 留置場で芋虫のょうに転がっていた

よれよれのズボンに半袖 髪はボサボサ 無精ヒゲとくれば その風体は浮浪者か乞食だ

「だんな おれは何もしてないよ ちゃんと調べてくれよ」

「何もしてないだと? 相手は顎が外れて重傷だ」

居酒屋で飲んでたら 隣に女が座り 手を伸ばして尻を触ったら その女の男が因縁つけてきて いきなり殴りかかってきたので一発かましただけだ! 正当防衛だ!

と言っても取調官は耳を貸さなかった  「身元引受人は?どうなんだ? 身寄りは?」

「・・・・」

立夫が黙ってたら

「怪しい奴だ 調べが済むまで 拘留だ」と 椅子にふんぞり返って煙草をふかしているのだ

「頼む、正当防衛なんだよ 釈放してくれよ」

立夫は 女のヒモ稼業で 定職と言うものをもっていない 暇があれば 賭け将棋などでその日を明け暮れているようなもので

社会の落ちこぼれだ。

「・・・・」

悠然と煙草をふかし窓の外を見ている取調官

立夫はそいつの横顔を見てるうちに腹が立ってきた、

「だんな、実は・・俺の兄貴は大阪特高警察の捜査課長なんだぜ・・電話してくれよ!」

「な、なんだって!それはほんとうか!? 特高の?」

そいつが、目をむいて飛び上がった 

「前島 憲治というんだ、俺の兄貴だよ」

「わ、わかった!待っていてくれ」 と 血相変えて部屋を飛び出した。

間もなく戻ってきて 何と言ったか

「前島さん あなたを釈放します 失礼しました!」

「はは そうかい・・」

さすが 泣く子も黙る特高だ・・手のひら返しには 思わず頬が緩む

兄貴に頼み 借りを作るのは立夫の意に染まなかったが ここはひとまずそれをするしかなかった

控室に案内されると 兄貴から電話がかかった

「あまり世話焼かせるなよ おふくろが心配してるぜ・・話があるから 迎えの車を用意するから府警本部に来てくれ」

威厳のある太い声だった 一年以上会ってないが こんな半グレの弟だが 妙に優しかった 

しばらくすると 

お迎えに参りました!と最敬礼の警官が二人。

署の前には黒塗りの警察車両が待機・・ まるでVIPなみの取り扱いに立夫は苦笑いだ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大阪府警本部はレンガ造りの見上げるようなでかいもので 階を分けて大阪憲兵隊本部も同居している。

階段を上がると特高警察がフロアーを占めている

「兄貴、話ってなんだ?」

「お前はちっとも変わらんな なんだ、その恰好は!陸軍士官学校を中退したとはいえ 誇りというものがないのか? まるで乞食じゃねーか 」 立夫を一瞥しそれだ

「チェッ ご挨拶だな・・人を呼びつけておいてさ・・」

立夫 まあ聞け・・と相好を崩し優しい目になった

「満州事変が起きてから特攻のアカ狩りが本格的になったんで 俺は今多忙の身なんだ 

お前に来てもらったのは 実は特高警察に入ってもらいたいんだ。」

「えっ?俺が特高にかい?」

世間のことなど どこ吹く風と自由気ままに やってきた立夫だ・・

「俺はな 確かに軍隊にあこがれて士官学校に入った。だがな 人殺しなどまっぴらだ
女好きと将棋を指す以外に能のない男で十分なんだ、兄貴よ 気は確かか?」

この逆襲には憲治も苦笑いだ・・

「お前 このままでは 召集されるぞ・・そして支那大陸に送られだろう・・

現地の戦争拡大は必至の情勢と聞いている 兵隊はいくらでも必要なんだ

特高に入れば兵役免除になるんだ・・」

「なにい! それは本当か!」 

つづく
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コメント

60代後半  鹿児島県

2025/12/09 21:38

5.  >>3 yuriさん
ありがとうございます(^O^)

30代前半  大阪府

2025/12/09 21:03

4.  >>2 しがない平社員(再雇用)さん
ありがとうございます。硬軟両刀でいきます! よろしくね

30代前半  大阪府

2025/12/09 21:02

3.  >>1 風来坊さん
1922年(大正11)「特別高等警察」正式発足

全国の警察に「特高課」が置かれ、

社会主義

共産主義

労働運動

無政府主義(アナーキズム)

学生運動
などを“思想”そのものを監視・摘発する機関として拡大した。 

と、ありました 「泣く子も黙る特高」と、当時は言われたそうですね (^^)
なので どんなものかと よけいに書きたくなりました。

60代前半  愛知県

2025/12/09 20:57

2. こんばんは。
新小説、おめでとうございます。
硬いのかな。
それもいいですね。
(^o^)

60代後半  鹿児島県

2025/12/09 12:11

1. 特高って何年位からあったのかな?
私の曾祖母は大東亜戦争が始まった時、日本は負けると言って、家族から特高に連れていかれると心配されました〓

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