【半ぐれ銀行マンの天下取り】 22 野望のグランドデザイン
住〇不動産姫路支店応接室・・
立夫は、形式的な名刺交換が終わるや否や、間を置かなかった。
「本題に入るよ」
そう言って、鞄から一枚の大型マップを取り出し、机に広げた。
姫路城を中心に、半径数キロ。 赤い円と、太い矢印が幾重にも引かれている。
「この園内に一兆円規模のプロジェクトを考えている」
柴田支店長の眉が、ぴくりと動いた。 冗談だと切り捨てるには、この男の声は低すぎた
立夫の指が、城の南側――
鉄道・幹線道路・未利用地が交差する一点を、正確に突いた。
「……」
誰も、すぐには言葉を出せなかった。
立夫は続けて、数枚の書類を差し出した。ホチキス止めもない、抜粋資料だ。
「これは、海棠の親父に出した事業計画書の一部だ。 全部は見られんが概要はこれだ」 「そちらでグランドデザインを設計してほしい」
一瞬の沈黙のあと、
開発企画課長が、思わず声を漏らした。 「……これは……すごいですね」
純粋な、驚嘆だった。
数字、動線、用途区分、収益モデル。
どれもが、“夢”ではなく“実務”の線で組まれている。
立夫は、椅子に深く腰を掛けた。
「カジノ計画も含むものだ。だから、これはもう国家プロジェクトの俎上に載せる話になる」
「簡単じゃない。反対も、横槍も、必ず来るだろう」 視線が、四人を順に貫いた。
「だが――必ずやる」 声に、迷いはなかった。「仮にだ。最悪、カジノが外れたとしてもだ」
立夫は、マップを指で叩いた。
「ここを、世界有数の観光拠点として完成させる」
誰かが、息を呑む音がした。 立夫は、少しだけ身を乗り出した。
「いいか。 これはな、一種の戦争なんだ」
「通らなければ、敗北だ。準備にかけた金も、時間も、信用も、全部吹っ飛ぶ」
「だから、この計画に関わる人間には――」
言葉を切り、低く告げた。 「戦闘員としての自覚を持ってもらう」
柴田は、無意識に唾を飲み込んだ。
「本来なら、 最初から そちらの本社に乗り込むべき案件だったが・・」
立夫は、初めて表情を和らげた。
「だが、あんたの顔を立てた。まずは、姫路支店からだ」
それは、配慮であると同時に、 戦闘開始宣言でもあった。
沈黙の中で、誰もが同じことを理解していた。
――これは相談ではない。――参加するか、降りるか。
柴田支店長は、背筋を正し、ゆっくりと口を開いた。
「……前島さん」と 俺の旧姓を出し
その声には、先ほどまでの事務的な響きはなかった。
「この戦争、 ぜひとも 参加させてください むろん本社には伺いを立てますが 海棠さんの息子さんになった方だ 断るなんてできませんよ」
「それを承知の上で来られたのでは?」(笑)
「まあ そんなとこだ」・・と 立夫はニヤリとした
つづく