【半ぐれ銀行マンの天下取り】 31 2億の荒稼ぎ 後編
国有地の入札結果が出たのは、月曜の午後だった。
「3億5000万円で――落札です」
電話口の声を聞いた瞬間、播州興産の社長は、思わず椅子から立ち上がった。
「よっしゃ……!」
拳を握る。周囲の役員たちも、顔を見合わせて笑った。
駅から至近。三千坪。 坪単価にすれば、十一万余り。
「時価は二十五万や」
社長は、ホワイトボードに数字を書き殴った。
造成費を見積もっても、一坪あたり数万。、 七十戸。単純計算でも――
「……これは、でかい」
銀行融資で回すにしても問題ない。分譲計画はすでに組んである。入口の土地も、仮契約は済んでいる。
「久々の大当たりや」
社長は、その夜、久しぶりに高い酒を開け 社員にも 大盤振舞いだ
異変が起きたのは、それから一週間後だった。秘書が、神妙な顔で入ってくる。
「……銀行からです」
「なんや、早いな。 実行日でも決めるんか」 受話器を取った社長は、まだ笑っていた。
だが、次の一言で、顔色が変わった。
『あの土地の件ですが――申し訳ありませんが融資はできません』
「……は?」 思わず聞き返す。
落札されたようですが、その資金を当行から出すことは無理です』
社長は、しばらく言葉を失った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ あれは事前に……」
『事前相談は、“条件付き”でした』
電話口の声は、冷静だった。
『開発行為が確実であること。 接道条件が満たされていること。 それが前提です』
社長の背中に、冷たい汗が走る。 「……入口は、押さえとる」
『その“入口”ですが 現在、貴社名義ではありません』
「……なに?」
社長は、思わず立ち上がった。
「仮契約は終わっとる! 手付も払っとる!」
『確認しました』
淡々と、しかし決定的な声。
『その契約は、 すでに解消されています』
「……解消?」
『違約金を含め、 すべて清算済みです』
社長の頭が、真っ白になった。
電話を切ったあと、 社長はしばらく動けなかった。
「……誰が?」
入口の土地。たった一筆。 だが、そこがなければ――袋地だ 三千坪は、ただの孤島だ。
立っていた社長は 目の前が暗くなり ソファに崩れ落ちた
つづく