【半ぐれ銀行マンの天下取り】 36 桃源郷構想
立夫は、村木を飯に誘った。
店は駅裏の、表からは目立たぬ小料理屋だった。
暖簾をくぐると、煮物の匂いと、人の話し声が少しだけ重なった。
二人は、奥の席に座った。酒が出る前に、 立夫は切り出した。
「村木、相場をやるぞ」
村木は箸を止めた。「……相場?」
「お前の名義を借りたい」 立夫は、淡々と言った。
「資金は、とりあえず二億。 一億は借り。もう一億は、俺の現金や」
村木は、黙って立夫を見た。冗談の目ではない。
「やるからには、勝たなあかん」
立夫は、酒も飲まずに続ける。
「ターゲットは、今、物色中や 東証の二部や。 時価総額も、株価も、手ごろなやつだ」
村木は、ようやく口を開いた。 「……値動きの荒いやつ、と いうことか?」
立夫は、そうや とわずかに笑った。
「ちょっとしたネタで、 上にも下にも跳ねるやつや」
村木は、鼻で笑った。
「あはは……なるほどな」
村木は 杯を置いた
「わかった 立夫 名義借りは引き受けた みなまで言うな それで目標の稼ぎは?」
「10億や」
村木は、一瞬、黙り込んだ。
「聞きたいが 稼いでいったい何に使うんだ?」
立夫は、顔色一つ変えずに言う。
「いい質問だよ それはな 桃源郷だ」
「えっ?・・ほんまか?」
村木はゴクリと息を呑んだ
「先では数千億の館というか国際観光ホテルというものをやり そこで 酒池肉林の場をと本気で考えているが それははっきり言うと
仮にできたとしても 最低でも10年はかかる そんなものを待ってられるか?」(笑)
「確かに・・おれも正直言うと その話聞いても 実現は怪しいと思った 」(笑)
「よし、話はそれまでだ 極秘にやるんだ 銀行員が相場に手を出すことは いろいろと差しさわりがあるからな」
つづく