【半ぐれ銀行マンの天下取り】 47 有頂天から奈落へ
支店長室のドアが、音もなく開いた。
秘書が一礼して下がると、その女は、ひとりで部屋に入ってきた。
背が高い。少なくとも175センチはあるだろうか・・。
ヒールを履いていないのに、立夫とほとんど目線が変わらない。
毅然とした顔立ちをした女だった まっすぐ立夫を見た
濃い化粧はしていない。だが、隙がない。視線も、歩き方も、声を出す前の呼吸の取り方も。
この女、Mじゃない。立夫は、直感でそう思った。従属する女ではない。命令を待つ女でもない。命令する側の女だ。
女は、机の前で足を止め、 「海棠常務の指示で参りました」
直立不動で 名乗った。 「宗方聡子と申します」
低く、よく通る声だった。 媚も、遠慮も、ない。 が、レースクイーンを連想させる容姿だった
「常務から?昨日連絡をもらったが 君のことか?」
「そうです 」
と、聡子は軽く会釈しただけで、椅子に座る許可も求めない。
「本日付で、 私はあなたの業務全般を監視・監督する立場に就きました」
「……は?」
耳を疑った。
「支店長、今後、あなたは、私の指揮下に入っていただきます」
一瞬、空気が凍る。 「な、なんだって!?」
立夫は、言葉を失った。そんな馬鹿な話があるか。支店長が、女の部下になる?しかも、突然に。
聡子は、表情を変えない。 「驚かれるのは無理もありません。 ですが、決定事項です」
その言い方が、すべてを物語っていた。 交渉の余地は、ない。
立夫の脳裏に、海棠の声が蘇る。
(――金と女に、気を付けてやるんだ。)
その意味が、今になって、骨身に染みた。
「あなたは―― 」聡子が、静かに言葉を続ける。 「学会を愚弄しました」
ぴたり、と言い切る。
「法華経の教えを、自分の都合で解釈し、利用し、無視した」
立夫は、反論しかけた。だが、聡子はそれを許さない。
「野田明美、中野純子のふたりから すべてを聞きました」
名前が出た瞬間、 立夫の喉が鳴った。
「あなたのやり方、言葉、振る舞い、そして 傲慢ともいえる、慢心」
聡子は、机の上に書類を置いた。
「私は、二人の上司です そして今後は、二人を、私の支配下に戻します」
「同時に、あなたも、です」
「!!」
立夫は今起きていることが 嘘だと思った こんなバカな!
つづく
コメント
2025/12/23 15:42
1. 急展開ですね!
返コメ