戦国の猛将 【真田幸村】2 死中に活
軍議は、夜を越えて続いた。
灯明の油は減り、畳の上には、同じ言葉だけが繰り返される 包囲した30万の大軍に どうあがいても勝てぬ・・
結論は「籠城」の2字・・
幸村、つと立ち上がる。
畳が鳴り、灯明の火が揺れた。
「―ここに一座する諸将には、悪いが申しておく」
場が、しんと静まる。
「腰抜け、それ以外の言葉が見当たらぬ」
「何を言うか!」髭武者のひとりが怒りを露わに叫んだ 豪傑と言われた後藤又兵衛だった
幸村は一瞥しただけで続けた
「籠城だと?」
幸村は、鼻で笑った。
「たわけの極みよ」
「相手の消耗を待つ? 徳川が、消耗してくれるとでも思うたか」
「待てば、人は臆す 臆すれば、兵は腐る 腐った兵で、 何を守る?」
ざわ、と声が走る。
「幸村殿、ここは合議の場だ 何が言いたいのか知らんが 言葉を慎まれよ! 腰抜けとはなんだ!すぎるではないか!」
幸村は、言葉を断ち切った。
「合議? 合議とは、覚悟ある者が、覚悟を重ねる場だ」
「今のは、恐れの品評会に過ぎぬ」
誰かが、声を荒らげる。
「では、どうせよと申される! 勝ち目があるのか! 皆、死ねと!」
幸村は、一歩、前へ出た。
「そのとおりだ 皆に死を覚悟してもらいたい」
場が、どよめいた。
「死中に、活を求める それ以外に、道はない」
「ここで生き延びようとするから、すべてが狂う」
「生きる気を捨てよ。そうすれば、道は開く」
「……無茶だ! 正気ではない!」
「幸村殿は 総大将だ 総大将が、先に死んでどうする!」
声が重なり、軍議は、もはや議ではなくなった。
幸村は、静かに言った。 「おまえらの助けは、要らぬ」
その一言に、息を呑む音が重なる。
「これより、闇を待つ」
「闇が来れば、家康の首を捕ってやる 腰抜けは見ているがよい!」
呆気にとられた一座を後ろに 幸村は甲冑を手に持ち 砦に向かった
つづく