戦国の猛将 【真田幸村】 4 家康の首、討ち取ったり!
闇が、すべてを呑み込んでいた。
砦の裏手。風に揺れる松明の火が、ひとつ、またひとつと消されていく。
幸村は、砦の高みからそれを見送っていた。 百有余。選び抜かれた者たちだった。
彼らは言葉を発しない。 ただ、胸に火薬を巻き、刀を握りしめ、闇へと溶けていく。
還る道はない。 幸村はそれを知っていた。 そして、彼らもまた知っていた。
谷を越えた先に、無数のかがり火が揺れている。 徳川本陣——家康本隊と目された陣である。
合図はなかった。だが、誰も迷わなかった。
闇が、突如として裂けた。
最前列が疾風のごとく駆け出す。 火縄銃の閃光。叫び声。夜を震わせる轟音。 爆発音
陣中が乱れ、隊列が崩れる。だが、それで終わりではない。
後続が次々と突入する。自爆は10メートル四方内の敵兵をなぎ倒した・・
家康軍は見たたこともない 自爆攻撃に恐怖し囲みを解き 後方に走るようにあとずさりだ・・
「敵襲——っ!」
徳川陣は、完全に虚を突かれていた。
次々と炸裂し突撃してくる 人間爆弾。 兵が吹き飛ばされるのを目の当たりにして 色を失い狼狽した
やがて陣の奥から、異様な静けさをまとった集団が前へ出た。揃いの具足。乱れぬ足並み。家康の近習衆である。
主君の身辺を守るためだけに選ばれた者たち。 その前列には、馬廻を務めた精鋭が並んでいた。
彼らは逃げない。 崩れない。
真田の決死隊は、そこへ吸い寄せられるように突っ込み 炸裂させた
爆弾の炸裂と 刃が火花を散らす。
「進めぇ!」 声を張り上げる者も、やがて肉片となり 血潮が飛び散る、凄惨な戦いだった
それでも、足は止まらない。
近習衆は強かった。日頃から主君の馬の周囲を固め、戦場で鍛えられた者ばかり。
真田の兵は、爆死し次々に倒れていく。だが、誰一人として引かなかった。
そのとき、陣の奥で人垣が割れた。
白頭。落ち着いた佇まい。
徳川家康。
「——家康じゃ!」
その声に、旗本衆が一斉に前へ出る。 最後の壁だった。
真田の兵が三人、四人と斬り伏せられる。
それでも、一人が懐へ飛び込み、爆発! 旗本の数人が 上に吹っ飛び 横になぎ倒された
馬廻の刀がその爆死の後に続く爆弾兵を見逃してしまった
家康は、それに気が付き わずかに退こうとした。
その瞬間—— 「覚悟ッ!」
真田の兵が、渾身の一太刀を振るう。
旗本の刃がそれを受ける。 だが、もう一振りが、家康の側へ滑り込んだ。
短い、鋭い音。 家康は、膝を折った。
一瞬の静寂。 「——家康の首、打ち取ったり!」
その叫びが、光瞬く 闇夜に響き渡った。
砦から、それが聞こえた。 光と火の交錯の中で、幸村は立ち尽くした。
よもやの奇跡が起きたのだ!
つづく