【半ぐれ銀行マンの天下取り】 71 立夫との対決 前編
由梨はいつも思っている
これまでの私は、運が良かったのか?
いや そうではない 努力もしたし、計算もした。最後に物を言うのは、いつだって「実力」だ。
八年前、銀座でホステスをしていた頃、海棠と出会った。あの人は私を過剰に甘やかしたりはしなかった。
ただ、よく見ていた。女を見る目というより、人を見る目だったと思う。
相手がメガバンクの役員だと知ったとき、私は迷わなかった。
愛人になるかどうか、ではない。どう生き延びるか、その一点だった。
ホステスは若さを切り売りする仕事だ。そこで生きてきた。でも、若さは必ず終わる。席は空き、名前は忘れられ、
次の女が座る。それがこの世界の仕組みだ。
それなら――と私は思った。大樹に寄り添おう、と。
大きな木のそばにいれば、日陰もあるし、落ちてくる実も大きい。寄りかかり方さえ間違えなければ、
風にも飛ばされない。私は、自分からその位置を選んだ。誰かに強いられたわけじゃない。
海棠は、その覚悟を見抜いたのだと思う。私が何を差し出し、何を求めているか。最初からそれを理解していた。
東京銀座にほど近いマンションは億ションが私の住まい。名義は海棠。けれど仮登記が入っているから事実上私のものだ。
銀行の株も、数千万円分持っている。配当も議決権もある。みんな海棠からせしめたものだ (笑)
ただ、一度でも私から請求したわけではない 向こうから受け取ってくれと言われたから受け取ったまでだ。
これで、経済的な不安はなくなつた。美貌であるうちに そこまで持っていけた。それだけの話だ。
男の虚栄心や下心を読むこと。自分が「選ばれている」と錯覚させること。拒絶ではなく、期待を持たせて距離を保つこと。
ホステスの前身がSMクラブだったから、自然とこの嗅覚が身についた あそこでは支配と服従は。演出であり、合意であり、役割だ。
相手に主導権があると思わせたまま、実際にはこちらが流れを作る。それを体で覚えただけ。
そのテクニックを、私は海棠のもとで使った。感情を混ぜず、役割を演じる。求められたものを、過不足なく差し出す。
だから、私は壊れなかった。 同じ立場に立って、壊れていく女を何人も見てきた。感情を持ちすぎた女、
夢を見た女、曖昧なまま関係を続けた女。私は、そうなりたくなかっただけ。
海棠という大樹は、いつか倒れるかもしれない。 そのために財を存分に溜め込み 備えようという気構えは常に持っている(^o^)
女は、子宮でものを考える人間だが 私はそんな感情だけで生きるほど、愚かじゃない。
――それが、斉藤由利という女の、生き方だ。
支店長室の窓から 姫路城を見た・・
由梨は18歳まで この姫路城を見て育ったのだ 奇しくも立夫と同じ土地の人間だったのだ
(立夫、あんたの能力と器は私の足元にも及ばないよ。私の実力をもってすれば 破滅させるのに 半年もかからないだろう・・)
由梨はそれを確信した。
つづく