【半ぐれ銀行マンの天下取り】 74 立夫との対決 後編2 15億踏み倒し計画
立夫は、村木の言葉を聞きながら、ゆっくりと笑った。乾いた笑いだったが、そこには迷いがなかった。
「敵に回す? 」
グラスの水を一口含み、舌の上で転がす。 「俺を切った時点で、向こうは覚悟してる。だったら、こっちも“元銀行マンの流儀”で行くだけだ」
村木は腕を組み、天井を見上げる。
「……競売を潰すには理由が要る。物件そのものに“触りたくない臭い”を付ける。 瑕疵、紛争、用途不明、稼働不能。
どれか一つでも付けば、入札は腰が引ける」
立夫は頷いた。「全部、乗せる」
「は?」
「全部だ。 研修所は“研修名目の保養施設”から“地域開放型の多目的施設”に切り替える。使用規約は曖昧にする。稼働率は意図的に乱す。
設備は最新だが、仕様は特殊。用途転用が利かない」
村木はニヤリとした。
「なるほど……“高いのに使い道がない”物件か」「それだけじゃない」 立夫はテーブルに指を置き、一本ずつ折るように話す。
「賃貸契約は続行。銀行は借り手だ。償還を止めても、賃料は取る。
支払いが滞れば“貸主としての権利行使”だ。 差し押さえに来たら、即、契約不履行で訴訟を被せる」
「……裁判か」 「時間はこっちの味方だ。五年あれば、景色は変わるぜ」(笑)
村木は少し黙り、低い声で言った。
「だがな、立夫。その間、行内じゃお前の名前は“要注意人物”どころか“事故物件”になる。 融資は一本も出ない。付き合う銀行も消える」
立夫は即答した。
「最初から当てにしてない」 村木が眉を上げる。
「現金商売に切り替える。明美と純子の料亭は“顔”だ。裏で、法人の箱を二つ動かす。
一つは管理、もう一つは受け皿。金は細く、早く回す」
「……なるほど」
村木は、そこでようやく深く息を吐いた。
「開き直りじゃないな。これは――戦争だ」
立夫は立ち上がり、窓の外を見た。
夜の姫路の街に、銀行の看板が白く浮かんでいる。「銀行が俺を排除するなら、俺は“銀行の論理”を壊す」
背中越しに、低く言い切った。
「貸した金を回収できないのは、経営判断のミスだ。それを、元支店長の俺が証明してやる」
村木は小さく笑った。
「……やせても、銀行マン、か」
「違う」立夫は振り返り、目だけで笑った。
「今からは、“銀行を知り尽くした敵”だ、だがな なんだかんだと 食いついて 俺は必ず銀行に復帰して、
姫路を支配し 100憶の金と 日本一のハーレムを作ってやるぜ」
(笑) 「馬鹿な男だが お前はほんまにオモロイ男だ、よし! 地獄の果てまで とことん付き合うぜ!」
店の奥で、明美と純子が気配を殺して聞いていた。
二人は目を合わせ、何も言わず、静かに頷いた。
立夫の戦いは、ここから本当に始まったのだ